空間工房 一級建築事務所

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11.07.06 Wednesday

文化財マネジャー受講記録(13)

■節電という2文字がこれほど威力を持ったことは過去になかっ

 た気がします。私が小学生の頃は祇園祭りの山鉾巡行が終わる

 まで(毎年7月16日)は、エアコンをつけちゃダメ。という

 我が家の独自ルールがありました。純粋な京町家での、このル

 ール。熱中症にならなかったことを思いますと、今の暑さは

 確かに昔の暑さとは違う危険性をはらんでいるのかもしれませ

 ん。

 節電も大切ですが、体も大切です。

 というわけで、今回は節電のお話し。となれば、スムーズなの

 ですが、残念ながら全く関係ないお話し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■文化財マネジャー受講記録(13)

 座学としては最終となる第13回目の記録をお送りする。

 因みに、次回が最終回。最終回は「わたしが見つけた文化財」
 と題して、各班ごとに自分達がこれぞと思う街なかの建造物を
 取り上げて、実測調査や周辺の歴史、その建物の歴史、文化財
 的価値、特徴などをレポートにまとめつつ、どのような活用方
 法が考えられるかを提案する。という内容になる。

 勿論、その日一日で出来る代物ではない。なので、各班は5月
 頃より動き出している。まず、調査対象をピックアップすると
 ころから始まる。講座の主催者がお膳立てしてくれる実地調査
 の授業とは違い、文字通り一から自分達で調査対象を絞り込む。
 勿論絞り込まれる相手は、文化財などに興味がない場合もあり、
 協力が得られる可能性は、どちらかと言うと低い。

 そんなわけなので、飛び込みで。というのは難しく、ある程度
 の知り合いのツテだとか、コネだとかを頼りに進められる。

 第13回目の授業の後、各班の進捗状況などを発表する中間発
 表があった。それを見る限り、8物件全てが趣の異なる内容に
 なっていた。築300年を越える萱葺き民家から、近代洋風建
 築に至るまで、さまざま。しかし、京町家は講座内でイヤとい
 うほど扱ってきたせいか、調査対象とした班は皆無だった。皆、
 少し変り種を選択した感はある。

 私達の班は、結果的に全8班の中でも最も築年数の浅い建造物
 をピックアップした。築73年。昭和初期(昭和13年)竣工
 の住宅。日本近代洋風建築の幕開け時期に建てられた住宅であ
 る。

 文化財登録は、築50年を越えれば、その対象に入り出す。だ
 から築73年であれば充分文化財登録の対象となり得るのであ
 る。

 勿論、築年数は大前提に過ぎないので、あとはその建物自身が
 有する固有の価値や特徴が大事となってくる。

 固有の価値や特徴を見極めるためには、その建物が有する歴史
 的背景や由緒・沿革・構造的特徴などから一つづつ地道に調べ
 ていくしかない。文化財に登録するか否かは別として、万一登
 録するのであれば、文化庁の審査員を納得させるだけの明確な
 根拠が必要である。推論や推測を混ぜてはいけないというのが、
 原則である。

 要は、根拠となる資料集めから始まり、それらの資料を一連の
 流れとしてまとめていき、誰が見ても価値が分かるものとしな
 ければならない。一連の流れにまとめる際には、どうしても主
 観や推論が入ってしまいがちなのだが、そこを堪える。なぜな
 ら、評価する人が変わると、価値が変わるといった状況を生み
 出してしまうからである。

 価値は見る人によって変わるのが当たり前。な気もするが、根
 拠のある推量と、根拠のない推量とでは自ずと違ってくる。根
 拠のある推量を行なうには、根拠となる資料の正確性が欠かせ
 ない。

 知らないうちに、13回目の記録がおろそかになっていたので、
 本来の目的に戻る。

 13回目の最終講義内容は「歴史的環境の整備/山崎正史氏(
 立命館大学)」「保存・活用とまちづくり(修徳学区)/西田
 氏」「保存・活用とまちづくり(丹波篠山)/才本謙二氏」

 と。ここで事務所に足長蜂が乱入!しばし格闘の末、無事退出
 いただいた。我が事務所には、このような侵入者が過去にも数
 多くいる。一番怖いのは、スズメ蜂。一番ビックリしたのは、
 スズメ。・・・余談だが。

 で、講義。最も記憶に残った話しは、駐車場の話し。フィレン
 ツェやパリの街並み。壁面が街路に対して、揃っている。石造
 で。

 日本なら、道路からセットバック(後退)すれば、その分建物
 を高く出来たりするルール(建築基準法)がある。高くするた
 めにセットバックしなくとも、最近では駐車場は欠かせないの
 で、駐車場を確保するために必然的にセットバックすることが、
 街なかではよく見られるし、そのような設計も実際に行なって
 いる。

 でも、ヨーロッパ諸国では。というか、イタリアやフランスで
 は、セットバックすることが許されていない。そして、石造な
 ので駐車場のような大きな開口も設けられない。そういえば、
 車はどこに停めてるんだ?

 答えは2つ。一つは、街区建物内に駐車場ビルを街並みに溶け
 込むデザインで創っている。要は立体駐車場。そして、もう一
 つは路駐。日本では15分も停めておけば捕まってしまう路駐。

 国が変わればルールも変わるのである。

 ちなみにフィレンツェの街並みがどうしてあれほど統一感を持
 っているのか?が分かった。

 日本の都市計画では、エリアを区切ってザックリと規制を掛け
 ている。その規制の中であれば、自由に建物をつくることがで
 きる。しかし、フィレンツェでは、1軒毎に規制が掛けられて
 いる。ウソ?!と思うようなホントの話し。「完全保存」「外
 観保存」「リノベーション(改装)可」「コンバージョン(用
 途変更)可」「建替え可」「除去指導」といった具合に1軒1
 軒、決められているのである。自由は全くきかないが、街並み
 はイヤでも保存されるし、実際に保存されている。

 でも不思議なことに、世界的な体系分類文言でいくと、日本や
 アメリカは「規制型」。ヨーロッパは「創造型」。とされるら
 しい。自由度があるのは、明らかに日本なのに。である。

 言葉の真意は定かではないが、ガチガチに規制を掛けて一つの
 定まった風景を創造していくという意味での創造型なのかなと
 理解している。

 日本・ヨーロッパ、出来上がった都市風景のいずれが優れてい
 るか。という問いかけに対しては、人それぞれの見解・価値観
 があると思うので、一概に良し悪しは決められない。ただ、い
 ずれの国・地域も田園風景の中に存在する建物から受ける印象
 にはそれほど明確な差異があるとは思わない。木と石といった
 素材の違いはあるにせよ。。

 集合の仕方が大切なのかもしれない。
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■編集後記

 今年の1月から始まりました、この講座。まさかこんなに多く

 の演習課題が課されるとは予想もしておりませんでしたので、

 まさに想定外だったわけですが、残り3週間で最終修了レポー

 トをまとめあげなければなりません。

 さて、どうなりますことやら。と半ば他人事のような発言を
 
 しておりますが、気持ちは相当焦っております。

 本業に支障があってはいけませんので、使える時間を作って

 と言う感じで、なんとか良いレポート/発表に持って行きた

 いと思います。中間発表を見る限り、他の班も思いのほか、

 気合いの入ったプレゼンをする感じです。まけられません。
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 感動を呼ぶプレゼンにしたいと思います。
 感動は人の心を揺さぶります。

コラム | by muranishi | comments(0)

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