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11.05.26 Thursday

文化財マネジャー受講記録(10)

■建築とは、災害との戦いである。という言葉を残した人が居る

 かどうかは知りません。が、地震・台風・豪雨・豪雪・落雷

 などなど、対抗するべき相手(自然)は数多くあります。

 地震・雷・火事・オヤジ。の定番句でもおなじみのオヤジ。

 いや、火事。人災と言えば人災なのかもしれませんが、これも

 また対抗するべき相手のひとつです。

 ということで、今回は防災的な観点から少し。

 それではどうぞおたのしみください。少し怖いかもですが。
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■文化財マネジャー受講記録(10)

 今回の講義内容は「伝統建築と防災計画/益田兼房氏(立命館)
 」「歴史的建造物の再生設計/木下龍一氏(アトリエRYO)」「
 歴史あるまちを伝えていく/笠原啓史氏」

 前半は、防災。後半は、町家などの保存・再生・活用事例を学
 ぶ。といった感じである。

 その中でも印象に残ったのは、防災に関連する事項。

 前回も古地震学を通して、三重塔などの塔建築が残っている理
 由を紐解いていくという内容があったが、今回も地震の話しが
 あった。

 東海・東南海・南海地震。

 これらのうち、東南海(三重県~和歌山県辺り)と南海(和歌
 山県~高知県辺り)は、過去に連動して揺れているという事実
 がある。

 過去のデータによれば周期は概ね、100年~150年。そし
 て、地震発生の約50年前から周辺地域(近畿地方や山陰地方
 ・北陸地方など)での比較的大規模な地震が頻繁に起こり出す
 というデータもある。

 前回の東南海・南海地震が発生したのは1946年。第二次世
 界大戦終戦直後の大変な時期。

 そう、今から65年前。

 不安を煽るわけではないが、100年周期とすれば完全に地震
 頻発期に突入している。記憶に新しい阪神淡路大震災が発生し
 たのが、今から17年前。東南海・南海地震発生後48年の出
 来事である。

 京都の街並み。というか日本の街並み。(少し話しが変わります)

 ローマやパリなどヨーロッパの街並みと比べて、明らかに異な
 る点がある。木造と石造という根本が影響しているのだが、京
 都の町家がいくら古いとはいえ、150年程度。清水寺がある
 ではないか、とか。金閣寺があるではないか、とか。反論はい
 くらでも出てくるだろうが、残念ながらそれらも過去に何度も
 火災が発生し、その度に再建・復元されているに過ぎない。現
 在の清水寺も江戸時代に再建されたもの。

 一方、ヨーロッパはローマのコロッシアムを例にあげるまでも
 なく、建てられた当初の姿が崩れ落ちた感じで残っている。

 この差は何か?

 京都でいえば、応仁の乱による大火で市内の建物は焼失。東京
 で言えば、関東大震災や第二次大戦の空襲による焼失。

 そう。木造は火災に弱いのである。

 誤解があるといけないので補足するが、現在の木造は延焼を防
 ぐための仕様が決められているので、その法規(建築基準法)
 に則って建てられているため、法以前の建物ほど弱くない。と
 されている。

 さて、地震の話し。

 仮に京都にある花折断層が動いたとする。この場合、市内の殆
 どは震度6強若しくは6弱の揺れに見舞われるとされている。
 これは、行政が配布しているハザードマップにも記されている
 事実である。

 そして、一旦京都を大地震が襲ったならば、地震そのものによ
 る被害よりも、火災による被害の方が甚大になることも予想と
 いうか想定されている。

 大規模火災による火災旋風の発生が被害を拡大する。古くから
 の木造住宅(京町家)が失われつつあるというものの、他都市
 に比べれば、まだまだ数は多い方である。そうであるが故に、
 一旦大規模火災が発生すると、恐ろしい状況になると言われて
 いる。

 現在の想定では、地震による市内の火災発生のうち、70箇所
 程度は消火活動ができない状況に陥るとされている。消防の役
 割は、人命救助が最優先であり、多くの人員はそちらに割かれ
 る。

 こんな話しを聞かされても・・・。というのが、正直な感想で
 ある。

 一方で、現在の京町家は点在しており、耐火建築物の間に挟ま
 っているようなものだから、延焼・類焼はそれほど心配でもな
 い。という人もいる。

 今回の東北大震災の津波が想定外という一言で済まされるのな
 ら、大火災も想定外という一言で片付けられるのかもしれない。
 だが、想定外を想定するということが、言葉はおかしいにせよ、
 必要なことなのかもしれない。

 都市の喪失。その時、京町家こそが京都という風景の核なのだ。
 という言葉が力を持つのか。はたまた、現代の都市災害対策の
 大筋である「不燃化・高層化」こそが、次の安心して住める京
 都を創り出すのだ。という言葉が説得力を持つのか。

 その答えを操作できるのは実は、「今」しかない。

 震災前にその町の「価値」とか「アイデンティティ」を明確に
 しておくことこそが、大切なのである。全てを文化財にする必
 要はないし、物理的に不可能である。しかし、風景の「核」と
 なるものをハッキリと皆が認識さえしておけば、答えは自ずと
 決まってくる。のだと思う。

 その意味でも文化財マネジャーという人材育成は喫緊の問題で
 あると感じた次第である。
 
 守りたいのは、何ですか?
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■編集後記

 建物は人命を守るべきもの。というのが建築基準法の初っ端に

 記載されています。法規に言われるまでもなく、その通りだと

 思います。ただ、現行法規に則っていない建物の耐震化や不燃

 化などは、そう簡単なことではありません。現在も二条城にて
 
 耐震化工事が何年かを掛けて行なわれています。一日に数多く

 の修学旅行生や観光客が訪れる世界遺産が、地震で倒壊する等
 
 あってはならないことですので。文化や風景を守るというのは

 人命を守ることと直結しているような気がします。
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 地震は確実にやってくる。
 最近はそう思うようにしています。

コラム | by muranishi | comments(0)

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