■歴史にロマンを感じる人も居られると思います。何から歴史を
感じ取るか?というのも人によってマチマチだと思います。
歴史小説から。という人も居れば、古い壁画から。という人も
いることと思います。歴史の授業からロマンを感じたという
奇特な人もひょっとすると居るかもしれません。私の場合、
歴史の授業=年号を覚える。というイメージが強く、正直苦手
でした。
というわけで、少し歴史的なものも関連する今回のコラムです。
それではどうぞおたのしみください。
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■文化財マネジャー受講記録(9)
全14回。約半年に及ぶ、この講座記録も折り返し地点を過ぎ、
第9回目を迎えた。
というわけで、今回は第9回目の受講記録備忘録である。
前回・前々回と連チャンで課外授業だったが、今回は久々に通
常講義に戻り、机の前に座っての内容である。
やや。というか。随分専門的な内容の講義。主に耐震補強や構
造設計に関するもの。とはいっても、電卓片手に計算をするな
どというハイレベルなことではなくて、構造概念的なもののレ
クチャー。
講義の題目と講師の方々は次の通り。「歴史的建造物と耐震補
強/西川英佑氏(文化庁)」「歴史的建造物の再生設計(構造
設計)/井出晃二氏(構造設計事務所)」「構造特性に応じた
改修の考え方/奥田辰雄氏(木四郎建築設計室)」
いずれも構造。これでもか、というほど構造。構造好きにはた
まらない。構造が嫌い/苦手な人にも、ある意味たまらない。
そんな構成である。
最も興味深かったのは、古地震学を交えた話し。古地震学とは、
文献や史料・言い伝えなどを紐解きながら、過去に起こった大
規模な地震の発生時期と発生地点を明らかにしていく。という
もの。では、それが構造の話しとどうリンクしてくるのか?
例えば奈良の薬師寺に建っている東塔(三重塔)。西暦730年に
建立。なので、築年数で言えば約1300年。この1000年を超える
期間ずっとそこに建ち続け、今尚建っているという事実。その
間、大規模な地震に見舞われていないのか?というと、当然な
がらそんなことは、ない。
よく、京都は古いお寺や町家が残っているから、地震が少ない
土地だと勘違いされる方がいる。が、それも誤り。
だいたい100年~150年周期で、大規模な震災に見舞われ
ている。という記録が残っているし、古地震学によっても明ら
かにされている。
では、なぜ薬師寺東塔が1300年もの間、残り得ているのか?
理由は単純である。被害は受けてきた。しかしその度に、修復
してきた。ということである。
実際、大地震の度に薬師寺境内にある廻廊は倒壊したり、八幡
宮が倒壊したり、という記録が残っている。ただ、東塔は倒壊
に至らずに残ったため、修復可能だったということである。因
みに、同時期に建立されたであろう、西塔は1528年に焼失して
しまったため、1981年に再建された。地震には耐えてきたが、
落雷・火事にはなす術がなかったとも言える。なので、1300年
もの間、ひとところに建ち続けるというのは、特に地震が多い
地域(日本)に於いては「偉業」なのだと思う。
地震の揺れには周期がある。そして建物も、建物ごとに異なる
固有の周期を持っている。短い周期で揺れる住宅。長い周期で
揺れる高層建築物。地震の周期が短ければ、住宅に被害が多く、
長ければ高層ビルに被害が多く出る。
では、薬師寺東塔はどんな周期に弱いのか?
いや、詳しくは知らない。ただ、東京スカイツリーの構造シス
テムにも応用されている通り、建物中央に「芯柱」というもの
が通っている。この芯柱と、塔身本体はほぼ切り離されている。
芯柱は細長いので長周期に同調し、塔身は短周期に同調する。
それらの揺れが、互いを打ち消しあって、甚大な被害を免れる。
なので、五重塔や三重塔は地震や風に強い。とされている。
ただ、全く被害を受けないわけではない。芯柱は大きく揺れる
ので、この度の震災でも東京タワーに被害が出たように、芯柱
の先端(「相輪」と呼ばれる部分)が曲がったりする。それに
縄を掛けて、人手で引っ張って直す。という記録も残っていた
りする。
さて、この1300年の間に何回の大震災に見舞われたのか。答え
は14回。というか記録が残っているだけで、14回。実際は
もっと多いかもしれない。
歴史的建造物は地震や災害との闘いであるとも言える。なので、
構造的な強さの必要性は高い。長い年月を耐えてきたという思
いを持って、歴史的建造物を見ると、少し見え方が変わってく
るかもしれない。
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■編集後記
現代のように、高度な構造解析技術があったとは思えない昔。
それも1300年もの昔から、芯柱を免震的に使うという発想は
一体何処のどなたがされたのでしょう?という素朴な疑問が
湧いてきます。現在分かっている史実として、今までに建立
された最も高い塔は、相国寺の七重塔で、なんと高さ110
mだそうです。相国寺といえば、当工房からスグのところ。
現存していたら、見えたかもしれません。そんなことを想像
した時、歴史のロマンを感じた瞬間でした。
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ピサの斜塔にも感服です。
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