■今、一つの京町家リノベーション計画を手掛けています。
同時に、京都市の文化財マネジャー養成講座というものを受講
しています。どちらも現実なのですが、前者は実務。後者は
知識。という感じです。この両者を結びつけるのが、私達設計
者の一つの役割のような気もしています。
実務という現実。知識という現実。どちらかが優先されるわけ
ではなく、両輪が噛み合って前進していくのが理想です。
でないと、同じ場所をグルグルと廻ることになりますので・・。
その辺りを考えつつ、今回のコラムです。
それではどうぞおたのしみください。
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■文化財マネジャー受講記録(3)
現在受講中の記録コラム、第3弾である。
先日の講義内容は以下の3つ。
「京都の文化財」「民家建築について」「庭園の様式」
毎回のことだが、いずれも興味深い内容で、非常に勉強になっ
た。中でも一番面白かったのは・・・。いや、甲乙付けがたい。
どれもが奥が深く、どれもが目からウロコだった。
なので、今回はどれを取り上げるわけでもないが、つらつらと
書いてみたい。
「文化財」と聞くと、多くの人が「国宝」や「重要文化財」な
どを思い浮かべると思う。私もつい最近までは、そうだった。
古~いお寺だったり。むか~しの仏像だったり。手に触れたら
殴られる(誰に?)ようなものばかり思い浮かべるのだが、実
は違う。
特に建築に限って言えば、登録文化財精度というものもあり、
使いながら文化財の認定を受けることも出来るものもある。基
本的には築後50年以上を経ている必要があるので、古いと言
えば古いが、滅茶苦茶古いわけでもない。
まあ、文化財に登録するまでは、全ては文化財ではないわけな
ので、何も構える必要はなく、身近なものと考えた方がよいか
もしれない。
さて、そんな文化財の一歩手前(登録/指定前)。を少し考え
てみる。
とある古民家があるとする。築100年の古民家。特に文化財
の指定は受けていないものとする。
ここには代々続く家族が住んでいると仮定する。その家族にと
ってみれば、文化財の指定を受けることなどより、日々の生活
の方が余程重要である。と仮定する。
そこへ文化庁的な第三者が、トコトコとやってきて、「これは
凄い。保存状態も建設当時のままだし、残しましょう」と言っ
たとする。
このまま手を加えなければ、若しくは現状を維持し続ければ、
文化財的な価値が間違いなく生まれる。
一方で、そこに住む家族構成は変化を遂げ、昔は大家族だった
けれども、今では老夫婦が暮らすのみ。どう考えても広くて使
いづらい。先祖代々受け継いできたものだから、残したい気持
ちは当然ある。でも、現状維持で残すことは考えておらず、生
活しやすいように再生(リノベーション)したい気持ちが強い。
とする。
その建物は、今や街並みのシンボル的存在であり、ランドマー
クである。第三者は、景観を考えても古きよきものは、そのま
ま残すことに価値があると考える。とする。
社会的に見ると、社会の財産。一方で、間違いなくそれは個人
の建物であり、個人の資産。
さて、どう残す?
いや、そんな講義内容ではなかったし、そんな質問も繰り広げ
られなかった。私個人の妄想である。
さて、どう残す?
手を加えた時点で、文化財としての価値を失うことは避けられ
ない。しかし、実は一方で、手の加え方が優れていれば尚一層
価値が出る(50年以上後)。文化(財)的価値とは、時間と
共に生成される。
手の加え方が優れているかどうか。などということは、判断基
準があるわけではないので、実際は非常に難しい。かもしれな
い。
しかし、博物館的/資料館的に残していくのか、実用性を備え
てカスタマイズしながら残していくのか、を考えた時、やはり
私は後者を選ぶ。
「残すこと」。それ自体が目的になるよりは、「残し方」を模
索した上で、結果として「残った」という方が、そこに生命が
宿っている気がする。
なんでもかんでも壊して新しく。というのには閉口する。なの
で、文化財的見地から、残す・保存するというのは、必要であ
る。
しかし、凍結保存ばかりでは、進歩がないというか、伝統は生
まれない気がする。
実は「残し方」が凄く大切なような気が、している。
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■編集後記
片や生活オンリー。片や文化・保存オンリー。では、妥協点も
何もあったものではありません。実はどちらも大切。という
認識からスタートしないと、平行線のまま交じり合うことは
ありません。
私個人的には、妥協案は望んでおりません。妥協案ではない
妥協点。それを提示していくことが私達の役目でもあるかと
思っています。
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WIN-WINの関係が理想です。
商売に限らず。
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