空間工房 一級建築事務所

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11.01.24 Monday

文化財マネジャー受講記録(1)

■日々の生活に刺激を加えるべく、何か趣味を持たれたり、何か

 習い事をされたりといった方は、結構多いのではないでしょう

 か。その反面、色々な制約から、やりたくてもできない方も居

 られるかと思いますが・・。

 私事ですが、趣味・習い事というものとは少し違うかもしれま

 せんが、とある講座を受けることとなりました。

 今回は、そんな講座のお話しから少し。
  
 それではどうぞおたのしみください。
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■文化財マネジャー受講記録(1)

 京都市などが主催する「京都市文化財マネジャー育成講座(建
 造物)」という講座が、開催されることを昨年末に知った。

 内容的には、歴史的建造物の保存・活用とそれを活かした街づ
 くりについて、講義と演習・実地見学などで学ぶというもの。

 京町家の保存や街づくりといったものは、ダイレクトに日頃の
 仕事とリンクしてくるし、自分が知らないこともきっと教わる
 ことが出来るだろうと思い、受講に申込んだ。

 募集人員40名に対して、応募総数は約2倍の78名。選考の
 結果、無事受講することが決まり、先日その1回目の講義に参
 加してきた。

 講義はこれから半年にわたって開催される。概ね月2回開催。

 受講に来られている面々は、老若男女。建築専門の方も居れば、
 古い町家に興味があるという一般の方も居られる。驚いたこと
 に、静岡・東京・兵庫・奈良など京都以外の遠方から参加され
 ている方も居られ、それだけでも刺激になった。なぜなら、京
 都に来るだけでも大変だろうから。

 さて、この受講記録は備忘録として受講の度に書いていく予定
 である。それぞれの回で、最も印象に残ったことや、教わった
 ことを書き留めておきたいと思う。

 第一回目。元大学教授や文化庁の方がガイダンス的に「文化財」
 や「保存」の意味/意義について講義された。

 何が最も印象に残ったか。

 それは、「批判・批評の大切さ」である。

 噛み砕いて説明する。

 かつてイタリアのフィレンツェでルネッサンス文化/芸術が開
 花した。ダ・ヴィンチ然り、ミケランジェロ然り、ラファエロ
 然り。僅か1世紀足らずの間に、世界に名を馳せる芸術家達が、
 このフィレンツェ若しくはその近郊から輩出された。

 当時のフィレンツェは、毛織物産業により世界でも最大の産業
 都市であり、人とお金が集まる都市だった。故に、金融業界も
 発達し、世界最大の金融都市でもあった。

 そんな社会背景。人が集まり、それはそれは賑やかな都市だっ
 たことが想像出来る。私も一度訪れたことがあるが、町の真ん
 中を川が流れ、徒歩でも行ける高台からは、赤い瓦屋根の美し
 い街並みが一望でき、家々の特徴はまるっきり違うのだが、そ
 こに繰り広げられる「雰囲気」は、まるで京都を見ているよう
 だったのを覚えている。

 そして、当時の貴族のサロンや、商人・手工業者の街角での話
 題は専ら、新しく製作された「絵画」や「建築」や「彫刻」だ
 ったという記録が、残されているそうである。

 目の肥えた貴族や商人。そんなコミュニティが、絵画などを話
 題に登らせて、批評・批判を加える。それが、作家の耳に届く。
 それを次の作品に反映させる。さらなる批評を受ける。その繰
 り返し。それにより、芸術家のレベルは底上げされ、最終的に
 ミケランジェロなどの天才を続々と輩出した。というお話し。

 今日を省みる。

 往々にして、市民レベルでの批評/批判の声は聞こえて来ない。
 無関心なのか、単に声を取り上げる機関/機会がないのかは、
 分からない。が、少なくとも建築に限って言えば、私達設計者
 が、その声を聴く姿勢/体勢が整っていない気がする。

 例えば、TV番組などでビフォーアフターや建物探訪など建築
 関係を取り上げている。しかしそこには「褒める」「褒め殺し」
 という行為はあっても、「批評」「批判」という行為は皆無で
 ある。それほどに素晴らしいものばかりであれば、それも仕方
 ないのだけれど。

 私個人的にも、設計した建物に対して、周辺住民の方の声すら
 聞いていない気がする。お施主様の声は聞けるとしても。

 私も含め、各設計者がもっと、市民レベルでの声を聴くように
 していけば、建築全体のレベルもあがり、一般の方も建築に興
 味を持ってもらえるような気がする。

 そこから、市民レベルでの「文化」というものが育ち、地域の
 人に愛され、保存・活用されるという循環が生まれるのではな
 いかと思った次第である。

 これからの半年、何を得られるか分からないが、何かを得たい。

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■編集後記

 聴くところによりますと、課題・演習などは結構ハードとの

 こと。本講座は今年で3期目ですが、講座をサポートするチー

 ムとして、既に受講された方も居られ、その方がおっしゃって

 おりました。

 どんなハードな演習が待っているのかは、具体的にはまだ知り

 ませんが、そんなこんなも無事乗越えていければと思っており

 ます。
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 批判を受けるのは辛いです。
 でもそれが必要なようです。

コラム | by muranishi | comments(2)

コメント / トラックバック2件

  1. 櫻井 勉 より:

    私は選考からもれました。只、抽選と言う。一種の公平性はありますが、前向きの人でくじ運が悪ければ、極端なことを言えば、永遠に受講ができないので
    事務局に選考方法の改善を申し入れました。未だ、決定的な返事はありませんが
    前向きに取らえていただいていると勝手に思っています。
    貴殿のコメントにある。何事にもすべてOKはないと感じます。
    批判とケチをつけるのとは違います。
    物事、批判がなければ進歩も発展もないと感じます。
    私は批判を言うと同時に私は提案、提言を同時に出します。
    今回の育成講座も趣味の人は良いですが、これを今後、専門的に取り組んでいかれる方等に対して、育成講座半年間で奥深い文化財(建物)をマネージメントなんかできない。今後についての具体的な方法等はあるのでしょうか

  2. muranishi より:

    コメントありがとうございます。
    受講の選考方法に関しましては、コメントする立場にございませんので
    控えさせていただきます。

    さて、育成講座半年間で奥深い文化財をマネージメントなんかできない。
    とのご批判、ごもっともだと思います。

    これまた、私はただの受講人ですのでコメントする立場になどないのですが、あえて一言書かせていただきます。

    全ての人が前向きに応募されています。少なくとも私はそう実感しています。趣味程度の人も、残念ながら「趣味」の領域ではないことに確実に気付かれていると思います。だから尚更、真剣です。

    たった半年程度では文化財どころか、実は何もマネージメントなんて出来ないのかもしれません。

    しかし、専門家を10年かけて10人育てるより、市民の意識レベルを10年で400人分上げるほうが、「文化財候補を発見し、保存する」という意味におきましては、重要なのかもしれません。

    文化財マネージャーと謳ってはいますが、あくまで文化財専門家のサポート的役割しか「最初は」できないと思います。サポートを続けていくことで、少しは一人前に近付くのだと思います。

    市民レベルの意識が上がること。意識の底上げ。そこにこそ、本講座の目的があるのかもしれません。

    ちなみに専門家(建築士)は40人中8人程度です。

    回答になっていないかもしれませんが、本講座は毎年開催されます。本気であればこそ、抽選で通るまで応募し続けてください。きっと貴方のような方が増えることが、文化財にとってもハッピーなことだと思いますので。

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