■日々の生活に刺激を加えるべく、何か趣味を持たれたり、何か
習い事をされたりといった方は、結構多いのではないでしょう
か。その反面、色々な制約から、やりたくてもできない方も居
られるかと思いますが・・。
私事ですが、趣味・習い事というものとは少し違うかもしれま
せんが、とある講座を受けることとなりました。
今回は、そんな講座のお話しから少し。
それではどうぞおたのしみください。
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■文化財マネジャー受講記録(1)
京都市などが主催する「京都市文化財マネジャー育成講座(建
造物)」という講座が、開催されることを昨年末に知った。
内容的には、歴史的建造物の保存・活用とそれを活かした街づ
くりについて、講義と演習・実地見学などで学ぶというもの。
京町家の保存や街づくりといったものは、ダイレクトに日頃の
仕事とリンクしてくるし、自分が知らないこともきっと教わる
ことが出来るだろうと思い、受講に申込んだ。
募集人員40名に対して、応募総数は約2倍の78名。選考の
結果、無事受講することが決まり、先日その1回目の講義に参
加してきた。
講義はこれから半年にわたって開催される。概ね月2回開催。
受講に来られている面々は、老若男女。建築専門の方も居れば、
古い町家に興味があるという一般の方も居られる。驚いたこと
に、静岡・東京・兵庫・奈良など京都以外の遠方から参加され
ている方も居られ、それだけでも刺激になった。なぜなら、京
都に来るだけでも大変だろうから。
さて、この受講記録は備忘録として受講の度に書いていく予定
である。それぞれの回で、最も印象に残ったことや、教わった
ことを書き留めておきたいと思う。
第一回目。元大学教授や文化庁の方がガイダンス的に「文化財」
や「保存」の意味/意義について講義された。
何が最も印象に残ったか。
それは、「批判・批評の大切さ」である。
噛み砕いて説明する。
かつてイタリアのフィレンツェでルネッサンス文化/芸術が開
花した。ダ・ヴィンチ然り、ミケランジェロ然り、ラファエロ
然り。僅か1世紀足らずの間に、世界に名を馳せる芸術家達が、
このフィレンツェ若しくはその近郊から輩出された。
当時のフィレンツェは、毛織物産業により世界でも最大の産業
都市であり、人とお金が集まる都市だった。故に、金融業界も
発達し、世界最大の金融都市でもあった。
そんな社会背景。人が集まり、それはそれは賑やかな都市だっ
たことが想像出来る。私も一度訪れたことがあるが、町の真ん
中を川が流れ、徒歩でも行ける高台からは、赤い瓦屋根の美し
い街並みが一望でき、家々の特徴はまるっきり違うのだが、そ
こに繰り広げられる「雰囲気」は、まるで京都を見ているよう
だったのを覚えている。
そして、当時の貴族のサロンや、商人・手工業者の街角での話
題は専ら、新しく製作された「絵画」や「建築」や「彫刻」だ
ったという記録が、残されているそうである。
目の肥えた貴族や商人。そんなコミュニティが、絵画などを話
題に登らせて、批評・批判を加える。それが、作家の耳に届く。
それを次の作品に反映させる。さらなる批評を受ける。その繰
り返し。それにより、芸術家のレベルは底上げされ、最終的に
ミケランジェロなどの天才を続々と輩出した。というお話し。
今日を省みる。
往々にして、市民レベルでの批評/批判の声は聞こえて来ない。
無関心なのか、単に声を取り上げる機関/機会がないのかは、
分からない。が、少なくとも建築に限って言えば、私達設計者
が、その声を聴く姿勢/体勢が整っていない気がする。
例えば、TV番組などでビフォーアフターや建物探訪など建築
関係を取り上げている。しかしそこには「褒める」「褒め殺し」
という行為はあっても、「批評」「批判」という行為は皆無で
ある。それほどに素晴らしいものばかりであれば、それも仕方
ないのだけれど。
私個人的にも、設計した建物に対して、周辺住民の方の声すら
聞いていない気がする。お施主様の声は聞けるとしても。
私も含め、各設計者がもっと、市民レベルでの声を聴くように
していけば、建築全体のレベルもあがり、一般の方も建築に興
味を持ってもらえるような気がする。
そこから、市民レベルでの「文化」というものが育ち、地域の
人に愛され、保存・活用されるという循環が生まれるのではな
いかと思った次第である。
これからの半年、何を得られるか分からないが、何かを得たい。
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■編集後記
聴くところによりますと、課題・演習などは結構ハードとの
こと。本講座は今年で3期目ですが、講座をサポートするチー
ムとして、既に受講された方も居られ、その方がおっしゃって
おりました。
どんなハードな演習が待っているのかは、具体的にはまだ知り
ませんが、そんなこんなも無事乗越えていければと思っており
ます。
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■発 行:空間工房 用舎行蔵 一級建築士事務所
? (くうかんこうぼう ようしゃこうぞう)
住 所:〒602-0914
京都市上京区室町通り中立売下ル花立町486
連 絡 先:TEL/075-432-3883 FAX/075-334-8051
H P:http://yosyakozo.jp
E-mail:info@yosyakozo.jp
批判を受けるのは辛いです。
でもそれが必要なようです。
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私は選考からもれました。只、抽選と言う。一種の公平性はありますが、前向きの人でくじ運が悪ければ、極端なことを言えば、永遠に受講ができないので
事務局に選考方法の改善を申し入れました。未だ、決定的な返事はありませんが
前向きに取らえていただいていると勝手に思っています。
貴殿のコメントにある。何事にもすべてOKはないと感じます。
批判とケチをつけるのとは違います。
物事、批判がなければ進歩も発展もないと感じます。
私は批判を言うと同時に私は提案、提言を同時に出します。
今回の育成講座も趣味の人は良いですが、これを今後、専門的に取り組んでいかれる方等に対して、育成講座半年間で奥深い文化財(建物)をマネージメントなんかできない。今後についての具体的な方法等はあるのでしょうか