空間工房 一級建築事務所

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10.12.24 Friday

誰のための建築か

■自然の風景を見るとき、これは誰のもの?と考えることはあま

 りありません。大概は国のものだったり、自治体のものだった

 りするのですが、それは「みんなのもの」とほぼイコールだと

 思います。まあ、人類のものというより、全ての生きとし生け

 るもののものという感じでしょうか。

 では、人工物である建築は誰のものでしょう。というお話しを

 少し考えたいと思います。

 それではどうぞおたのしみください。
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■誰のための建築か

 丁度一年ほど前に、似たようなタイトルでコラムを書いている。

 その時のタイトルは「誰がために」というものだった。内容は、
 設計は誰のためのものか?という視点から書いていた。

 今回は「建築は誰のためのものか?」という視点で書いてみた
 いと思う。

 なぜそのような視点で書こうと思ったのか?

 なんとなく。である。

 そもそも建築とは、それを利用する人のためのものである。住
 宅であれば、住む人。店舗であれば、利用する人と提供する人
 (オーナー・従業員)。公共建築であれば、国民・県民・市民
 ・区民などの住民と公務員。

 こう書いてみると、住宅は特殊かもしれない。大概の建築は、
 利用者/訪問者と使用者/提供者の2方向に対して向いている
 顔がある。しかし、住宅は住人に向いている。住宅を訪れるお
 客さんをメインに考えることはあまりない。

 まあ、それはおいておくとして。

 たまに、えらくお金が掛かっていそうな公共建築物を見掛ける。
 あれは一体誰のための建築なんだろう?と単純に思ってしまう。
 お金の出所は、勿論税金。そして当然ながら、住民に対してそ
 の施設は提供される。その地域の議員さんが頑張ったからでき
 たのか、その地域の住民が強く望んだからできたのか、よそ者
 には知る術もないのだが、その利用頻度/価値は如何ほどのも
 のか、すごく知りたくなる。
 
 どのような建築物にも必ず設計者や施工者は存在する。しかし、
 そのプログラムを発案なり発議するのは、設計者や施工者では
 ないことが、ほぼ100%であると言っても過言ではない。ま
 あ大人の事情で、施工者が裏から議員さんを動かして・・・な
 どという話しは大いにありそうだが、想像でモノを言うのは良
 くないので、やめておく。

 住宅の場合は、建売住宅なども存在するので、その意味では施
 工者が発案者と言える状況も確かにある。が、住宅以外ではな
 いのではないだろうか?大人の事情を除いては。

 そういった意味でも住宅は特殊である。

 まあ、それはまたおいておくとして。

 さて、世の中の建築は、一体誰のためのものか。

 京都の景観条例を例にとると、個別の建物は個人のものだが、
 それらが創り出す景観はみんな(公)のものである。とされて
 いる。建築単体は個人なり法人なり自治体のものだが、その集
 合体はみんなのもの。さて、それは正しいのか?

 あなたは、どう思われますか?といきなり投げ掛けてみる。

 多分、これには解答はない。ただ、個人的な意見はある。

 建築の集合体である景観が公のものという視点は正しいと思う。
 ただ、悲しいことに、巨大な建築になればなるほど、周囲の景
 観から「独立」してしまう運命を持つ。「調和」させるには、
 周囲も同じスケールに変えるか、その単体を周囲のスケールに
 あわせて分割するか、の選択が待っている。景観が公のものだ
 という視点に立つならば、その単体は分節化を試みるべきだと
 思う。が、ほとんどの場合において、完全な分節化は図られな
 い。巨大なものは巨大なまま建ってしまう。

 その理由は、建物が「個」のものであるから。「個」とは、個
 人・企業・自治体を指す。

 集合体は公のものだが、単体は個のもの。明らかに、「個」の
 ものという縛りというか条件の方が、「公」に勝っているので
 ある。ということをまず認めるべきである。

 そして、その事実を覆すのであれば、強い強制力を持った法を
 整備すべきである。

 さて、景観条例批判でも擁護でもなんでもない。

 建築は誰のためのものか。というテーマを考える時、「個」と
 「公」の視点は外せない。という話しである。概念的な話しで
 は。

 さて、それでは具体的な話しをするとどうなるか。まず、法的
 な話し。建築基準法には、単体規定と集団規定がある。前者は、
 その建物が有すべき性能や環境を設定するもの。後者は集団に
 対して、迷惑を掛けない・はみださない、といった縛りを設定
 するもの。ここでも「個」と「公」の視点は重要視されている。

 次に、経済的な話し。「個」に掛けられる費用は、「個」の裁
 量で決定される。「公」の手が入るのは、固定資産税や相続税
 など。「個」は自由裁量だが、「公」は強制である。

 他に見るべき基準はないか。

 もう少し考えたいので、今回はここら辺で一区切りとしたい。
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■編集後記

 思考が一向にまとまりを見せない予感がしましたので、今回は

 途中で終わらせていただきました。まあ、結論を考えてから書

 けば良いのでしょうが、考えながら書くのがこのコラムですの

 で、お許しください。

 まあ、建築は「個」のものだと言い切ればよいのでしょうが、

 モノが大きいだけに、そうとも言い切れない何かが心に引っ掛

 かっています。その何かを自分なりに見つけようと思っていま

 す。見つかるかどうかは分かりませんが。
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コラム | by muranishi | comments(0)

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