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10.12.08 Wednesday

日本の懸念事項

■iPhoneが発売されてから来月で早や丸4年。今年はiPadも発売

 されるに至りました。iPhoneの中身(部品)の多くは、実は日

 本製であることをご存知でしょうか?パッケージ(表面)はア

 メリカですが、中身は日本。それだけの技術力を有していると

 いうのは、凄いと思います。

 しかし、iPadの中身の多くは中国や韓国。日本は欠片も見あた

 らないそうです。

 たった3~4年で、製造業の世界の勢力地図は塗り替えられた

 ともいえます。

 どうする日本。

 というわけで、今回のコラム。建築は?どうなの?

 それではどうぞおたのしみください。
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■日本の懸念事項

 笑ってしまうくらい大きなタイトルで恐縮である。

 まあ、そんなこと言われなくても分かってるよ。とか。そんな
 こと言われたってどうしようもないじゃないか。とか。世の中
 にはそんな懸念事項が溢れている。

 どうしようもない。とは思うが、まずは書いてみる。

 勿論、建築に関連した事項である。

 まず一つ目。

 多くの建築学科の学生が目指す研究室は、何系の研究室だと思
 われますか?普通の方は何系があるのかすら知らないと思うの
 で、少し述べると、主に意匠(デザイン)系・設備系・構造系
 ・建築史系・都市計画系・材料系などがあります。

 少なくとも私達が学生だった頃、一番人気は意匠系だった。ま
 あ、今から20年近く前のお話なので何の参考にもならないの
 だが。

 何故人気だったか?

 それは、建築を統括する立場であり、デザインという極めてク
 リエイティブに感じられる立場であり、花形であるという概念
 が一般的に広く浸透していたからである。

 ところが時代が変わり、今では構造系や設備系など、極めて実
 務者的・技術者的な研究室に人気が集まっているらしい。

 長引く不況(不況なのか、これが本来の姿なのかは置いておく
 が)を目の当たりにしてきた世代にとって、建築業界で食べて
 いくには、設備・構造系が最も確実である。という理屈らしい。

 意匠は食べていくのが大変。安定しない。これからの需要が見
 込めない時代に入った。等などという理由と表裏一体であろう。

 これはマズイ。

 理由は最後に書く。

 では、次の懸念事項。

 この不況(どうもバブルが異常だっただけとも思うが、わから
 ないので置いておく)のあおりを受けて、建設会社・建設業界
 では「成長」というのは夢物語のようになってしまっている。

 少子高齢化社会の先を見越した建築業界の一部会社は、福祉関
 連事業へと事業を鞍替えしつつある。下着で有名なグンゼがタ
 ッチパネルの生産に乗り出したり、富士フィルムが化粧品業界
 に乗り出したりしているのと同様に、時代の流れを汲み取った
 動きが、そこかしこで出てきている。

 これもマズイ。

 理由は最後。

 さて、三つ目の懸念事項。

 先日のニュースで、日本の学力診断が少し上向きになったとあ
 った。海老蔵の会見ニュースのお陰で影が薄いが、3年程前の
 成績が底打ちとなり、回復したと報道されている。

 これ自体、単純に喜ぶべきことだと思う。ゆとり教育の見直し
 が功を奏したともいえる。が、結果を見ると上海や韓国・台湾
 などアジアの諸外国には未だに後塵を拝しているという事実が
 浮かび上がる。これはNHKの報道番組でも指摘されている事
 項である。

 結果の上位には他にフィンランドが名を連ねている。これは、
 丁度一年ほど前のコラムでも述べた通り、フィンランドの国策
 /景気対策として、学力向上に力を入れている結果である。失
 業率の高さを打破するため、学力向上により優秀な人材を育て、
 その人材が世界と渡り合うことで海外から仕事を受注し、国内
 総生産を上げるという、なんとも壮大でロングスパンな計画が
 成果を着実なものとしている結果だと思う。

 上海や韓国などアジアの諸外国・地域が、フィンランドと同様
 の思惑を抱いていないとも限らない。

 これもマズイ。

 さて、なぜこれらの点がマズイのか。

 口酸っぱいようだが、以下は建築的な視点から(のみ)の意見
 である。

 凄く個人的意見だが、建築しかも意匠は、日本という枠組みを
 超え、世界に通用する分野である。建築設計界のノーベル賞と
 も言われるプリッカー賞。過去32回の内、日本人の受賞はな
 んと4回である。確率にして8分の1。しかもアジアでは日本
 が唯一である。この凄さがあまり分からないかもしれないが、
 ノーベル賞で言えば、過去813人の受賞者に対し、日本人が
 17人。約48分の1であることと比べると、少しは分かって
 もらえるだろうか?

 その、世界に通用するとも言える意匠系を希望する人数が減っ
 ていくと、建築設計の未来は推して測るべしである。

 そして、建設業の鞍替えの件。総務省の統計局データを基に産
 業別就業者数を平成14年と平成21年で比べると、建設業は
 約100万人減。医療・福祉関係は約150万人増。そして製
 造業は約150万人減。製造業の減少数も多いようだが、割合
 からいけば、建設業の方が大きい。

 断っておくが、100万人単位で増減している業種は他にない。

 減少人数が全て福祉関係に移行したかどうかは調べようがない
 が、冷静に考えて、ほぼそうだと言える気がする。

 技術を持った人が腕をふるえる場所がなければ、その産業は衰
 退せざるを得ない。いくら織物の技術を持っていようとも、着
 物業界が衰退したように、続けたくても続けられない。そんな
 状況が、この日本建築業界に於いて起きはじめているのではな
 いか。

 そして最後に学力云々の件。

 中国や韓国など、日本を除いたアジア諸国が世界に台頭してく
 ることが予想できる。予想は外れるかもしれないが、そのよう
 に容易に予想できる。いや、別にそれでも構わないのかもしれ
 ないが、資源をそんなに多く持たない日本が、それでは何で世
 界に対抗していけるのか?基礎学力をもとに、色々な技術や研
 究が成り立っていたのではないか?

 結論を言う。

 このままではマズイ。日本の建築業界。

 少子高齢化に伴う建築不要割合は今後増加することは避けられ
 ない。即ち、今ある建築物、特に住宅やオフィス・店舗などは、
 減り続ける一方だと思う。なぜなら使う人が居ないから。

 その一方で、維持や再生・新築していく作業はどうしても必要
 であり続ける。その時、古来からの技術は誰に受け継がれるの
 か。考えるまでもなく、次の世代また次の世代へと繋げていく
 ことが必要である。

 何事も(どの分野・業界も)底上げすることが、発展へと繋が
 る。発展のさせかたにも色々あると思う。私達は設計者として
 発展に貢献できる事柄/種を探し、見出し、育てていかなけれ
 ばいけない。ということだけは言える。

 建築の素晴らしさ。面白さ。

 まずは、私達が携わった建築を利用する、若しくは住まう子供
 たちにそれが伝わってくれるような空間を設計しなければと思
 う。

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■編集後記

 知人や友人が家を建てる/建てたとなると、結構/かなり興味

 をそそられる方が多いのではないでしょうか。

 恐らくですが、それだけの魅力を建築は有しているのだと思い

 ます。もし、設計者/建築家の設計した空間と、ハウスメーカ

 ーや建売りの空間に違いがなければ、設計事務所という業界は

 衰退して然るべきだと思います。そうならないためにも、私達

 は日々勉強する必要があると思っています。

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