■今まで設計してきた建築物には、格子を使ったものが多数あり
ます。それは、防犯面・視線などのプライバシー・風通し・採
光など機能面とデザイン面が同居しているからであって、京都
らしいものを表現しようとしているわけではありません。結果
として京都を感じることはあるかもしれませんが。
そんな格子は別に京都だけのものでもありません。しかし、そ
こに「和」的な魂が宿っているのは確かです。歴史を遡れば、
実際は京都発祥のものだったかもしれません。
さてそんな「京都」を感じるものについてのお話を少し。
それではどうぞおたのしみください。
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■京都らしさとは何か
9月から数回にわたって参加してきた、上京区役所建替え計画
に伴うワークショップが、先日最終回を迎えた。設計者として
ではなく、区民の立場としての参加である。
最終回のテーマは主に、外観について。であった。
今までのワークショップの内容を反映したおおまかなプラン構
成・修正が成され、そのプランにあった外観のパターンが数パ
ターン提示され、それらに対してどう思うか?という議論が成
された。
今回の庁舎の設計にあたる組織設計事務所からは、京都らしさ
を演出・表現する要素として、格子・庇・木といったものが提
示された。また、京都御所の壁面をモチーフにするという提案
もあった。
一方、区民側の意見として、木はメンテナンスが大変。格子は
掃除が大変。といった、すごく実用的側面からの意見が出され
た。京都に長年住んでいる方々の素直な意見である。
それでは、京都らしさとは何か。
単純に思いつくのは、寺社仏閣などの名勝/歴史的建築物。そ
して京町家などの庶民建築物。
しかし、京都府庁や京都市役所などの役所建築物は実は、石造
りのゴシック的外観を呈している。それは、当時の先端技術で
あり先端デザインとされていた手法を用いているからであり、
今でいうところの大正ロマン的な空間を呈している。いずれも
著名な建築家の設計である。
また、京都コンサートホールや京都会館、国立近代美術館など
の公共建築も、磯崎氏・前川氏・槙氏による設計で、人々がイ
メージするような直喩的な京都が表現されているかというと、
全く違うベクトルを向いているような気がする。歴史景観にお
もねるというよりは、新しい景観を創出しようという試みが成
されている感じ。
そして何より有名な、京都駅。原氏の設計だが、ほぼ京都らし
さは皆無である。とある外国観光客から、京都駅に降り立った
瞬間、何の歴史性も感じられない建物でガッカリした。という
コメントも挙がっている。しかしこれはあくまで、ほんの一人
のコメント。その他の外国人観光客がどのようなコメントをし
ているか分からないので、この一点にスポットを当てるメディ
アもどうかと思うが。
このように見ていくと、実は公共建築物において「京都らしさ」
を表現した例は少ない。
格子や木はメンテナンスが云々という上述の意見もある一方で、
やはり京都らしいテイストを持った庁舎にしたいというのが、
大半を占める意見/意識として挙がっていた。
これらが意味するところは何か。
やはり深層心理として、若しくは潜在意識として、「京都らし
さ」を残していきたいという民意は強くある。ということであ
る。
例として挙げた、数々の公共的な建築物に見られるデザイン要
素は、京都らしさからは掛け離れているかもしれないが、新鮮
である。宝ヶ池にある京都国際会議場なんて、今なお斬新な形
態だと感じる。ただ、そういった新鮮/斬新なものの存在は認
めるが、氾濫は避けたい、といった感じだろうか。
景観は、その時代時代で民衆が求めるものが変わるとも言える。
実は氾濫していた京都らしかったものが失われていくことで、
ようやく気付きはじめる京都らしさ、というものもある。
そして時代は今、間違いなく「京都らしさ」を求めている。と
感じた。京都を残す。残したい。残さなきゃ。という意識が働
いていると。
単純でよい。一人一人が思い描く「京都」を、建物として残す
若しくは建てることが出来れば、そこに京都は生まれる。と思
う。
そもそも京都に「京都らしさ」を求めること自体、変だと思う。
だって、まぎれもなく「京都」なんだから。
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■編集後記
京都らしさというよりも、京都とは何か?を考えた方が良い
ような気がしてきました。なぜなら、京都らしさとは、単なる
結果論に過ぎないと思えてきましたので。
京都とは何かという本質が押えられれば、自ずと京都独自の
風景が建ちあがるものだと思います。
「らしさ」を造ろうと思えば、どこにだって「京都らしい」風
景はできるかもしれません。
でもそれは、志摩スペイン村がスペインではないように、京都
ではありません。
京都とは何か。そこ(本質)を考えることが大切です。
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■発 行:空間工房 用舎行蔵 一級建築士事務所
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E-mail:info@yosyakozo.jp
何々風は、何々ではありません。
四川風ラーメンが、四川ラーメンでないように。
いや、四川にラーメンがあるかどうかも怪しいですが。
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