空間工房 一級建築事務所

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10.03.22 Monday

アポロ13号

■あまりTVを観る方ではないと思います。

 なぜなら、子供がまだ小さくて落着いて観れないので。という

 のが、正直なところです。

 ただ、たまに面白いTVを観ると、子供の相手がそっちのけに

 なってしまうのも事実です。

 ごめんなさい。と、こんなところで謝っても仕方ないのですが。

 というわけで、今回はTVで観た話題から少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■アポロ13号

 今回は先日、TVで見た話題から少し。

 世紀の大パニック。とかなんとかという特集での一幕だった。

 年代的にご存知の方もおられるかもしれない。アポロ13号。
 世界的な注目を浴びた、世紀の一大事とも言える出来事。私が
 生まれた年の出来事なので、ライブでは体験していない。

 アメリカが誇る宇宙船。アポロ。今もあるかどうかは知らない
 が、私が幼い頃は「アポロチョコ」というものがあった。円錐
 形の形をしたストロベリー味とチョコ味の組み合わさったチョ
 コ。当時、アポロの意味も知らずに食べていた。まさにアポロ
 のカタチだったのだと後で知った。

 お菓子にもなるくらい有名なアポロ。因みにアポロ11号は人
 類初となる月面着陸に成功した宇宙船である。そして13号。
 当初は何のトラブルもなく、13時13分に地球を飛び立った。
 この発射時刻は様々な諸条件を元に割り出された時間であって、
 13号だからというわけではないらしい。

 そして地球を離れて2日後位に事件は起きた。

 ロケットのタンク内に貯蔵されている酸素が宇宙空間に噴出/
 流出するという事故が勃発。

 正直、ありえない。

 この酸素。乗組員の生命にダイレクトに関わるだけでなく、水
 との化学反応で、電気もつくっている。なのでロケットの運行
 や地球との交信にも多大な影響がある代物である。

 結局は、不要な電気を消して、宇宙の極寒(-100℃)と闘
 ったり、月の引力を利用して、慣性の法則で燃費を抑えたり、
 なんとかかんとか生還することができた。

 かなり割愛したが、結論は世界が注目の中、無事生還というハ
 ッピーエンドである。

 詳しく知りたい方は「アポロ13号」という映画をご覧頂きた
 い。

 今回のコラムの主題は、一部始終を地上から指令したフライト
 ディレクターの考え方にある。

 アメリカが威信を掛けた宇宙開発事業。その集大成がアポロ1
 3号であった。そのフライトを統括していたのは、なんと弱冠
 36歳の若き司令塔。(自分が年上だから、若いと思ってしま
 う。が、社会的にはそんなに若くないかもしれない)国の威信
 /期待を一身に背負うにしては、若い気がする。が、事実背負
 った。

 結果如何によっては、ヒーローにもヒールにもなる立場。

 酸素の噴出が発覚したとき、多くの地上スタッフは「時間がな
 さ過ぎる」「果たして救出出来るのか」といったネガティブと
 いうか何の生産性もない意見が続出した。らしい。

 しかし、フライトディレクターの彼は違った。スタッフに発し
 た言葉はこうだ。「救出できるかどうかを議論するんじゃなく、
 どうやったら救出できるかを議論しろ」

 おっしゃる通りである。

 起こった問題は黙っていても改善しないことは明白。しかも3
 人の人命が掛かっている。ついでに国の威信も掛かっている。

 「救出するための方法のみを考える」それ以外は考えない。時
 間の無駄だから。

 その発言後、もの凄い数の情報やデータが集められる。が、取
 れる道は一つである。時間がないので幾つも試すわけにはいか
 ない。時間との闘いでもある。そして迫られるのが「決断」

 私なら、そんなプレッシャーに耐えられるだろうか?と思いな
 がら観ていた。

 求められるのは「成功」のみ。失敗は許されない。

 結局は無事に生還を果たすのだが、それは結果論に過ぎない。
 実は、過程が成功していたから成功を導いたのだと思う。終わ
 りよければ全て良しという問題では決してない。

 いつもの通り、建築も然りである。

 設計時点で問題が起きることもあれば、施工時点で問題が起き
 ることもある。問題が皆無だったことは、ハッキリ言ってない。

 多かれ少なかれ問題は起きる。重要なのは「成功」への過程だ
 と思う。問題が起きた時に、黙って状況を見ていても何も改善
 しない。しかし闇雲に動き回っても改善するとは限らない。

 フライトディレクターのように、極度のプレッシャーを掛けら
 れることは少ないが、だからこそ判断を見誤ってはいけないと
 思っている。「問題が解決できるかどうかを考えるのではなく、
 どうすれば問題が解決できるかを探る」。彼の言葉の通りだと
 思う。

 話しは変わるが、とある現場所長が若い現場監督に諭していた
 言葉も印象に残っている。

 「小手先で修正することはするな。後々お客さんに迷惑が掛か
 る。根本から直せ。」

 当然と言えば、当然の内容である。が、長い経験に裏打ちされ
 た深い言葉だと思って、横で聴いていた。

 職業柄、色々な現場監督と付き合う。人によって性格も考え方
 も様々。しかし、この現場所長の言葉を耳にしたことは他にな
 い。大概、自社の利益確保が見え隠れする。勿論、会社である
 以上、利益確保は社会的にも重要な目的だと思う。しかし、そ
 れだけでは先が見えている。と思う。やはり大切にすべきは「
 お客様」の立場に立って物事を見れるかどうかだと思う。

 問題を起こさない。というのが、ベストである。が、完璧な人
 間は居ない。と思っている。誰しも不完全な部分を持って生き
 ている。と思っている。であれば、するべきことは明白である。

 「どうすれば解決できるか」に焦点を絞るのみである。

 アポロ13号で起こった出来事は、自分達の身の回りにも実は
 規模を変えて起こっているのである。

 ただ、私達はヒーローになる必要はない。
 ただ、お客様の笑顔を守るのみである。
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■編集後記

 建築は一朝一夕には出来上がりません。

 だからこそ面白くもあり、時には大変でもあります。

 でも基本は楽しいものだと思っています。

 なので、上の文章を読まれて「えっ?そんなに問題が日常的に

 起こるものなの?!」と思われた方もおられるかもしれません

 が、「問題」と呼べるレベルから、傍から見ればどうだって良

 いこと(設計者のこだわり)まで「問題」に含んでいますので、

 ご安心ください。

コラム | by muranishi | comments(0)

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