空間工房 一級建築事務所

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10.03.17 Wednesday

我が子

■先日実施しましたオープンハウスにお越しいただきました

 皆様。どうもありがとうございました。

 無事、滞りなく予定通り開催できまして、ホッとしております。

 これからは、いよいよお施主様が住まわれることとなります。
 
 「お引渡し」の瞬間は非常に感慨深いものがあります。

 今回はそんな関係のお話しを少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■我が子

 我が子と言っても、今回の主題は娘でも息子でもない「我が子」
 =設計を手掛けた建築のお話しである。

 先日、オープンハウスを京都市内の住宅で行なった。お施主様
 のご厚意に本当に感謝いたします。

 結局、2日間で延べ約50人の来訪者があった。身内であった
 り、友人や後輩はたまた同業者が主流であったが、オープンハ
 ウスを通じて懐かしい顔に出会うこともでき、個人的には大変
 有意義な場であったと思っている。

 そんなオープンハウス。色々な意見や感想・質問などを第三者
 から伺うことができ、今後の参考になったことも勿論多数ある。

 そして、そんな中でも自分の中で一番良かったのは、丸々二日
 間という時間を、自分が設計した住宅と共に居られたことであ
 る。

 ほぼ完成した現場に、丸二日滞在するという贅沢。今まで、週
 に一回は現場定例で訪れてはいた。しかし、現場では打合せや
 職人さんが作業されているため、じっくりと観察するとか、静
 かに身を置くという余裕は勿論なかった。

 オープンハウスでも、割合ひっきりなしに訪問頂いた方々の対
 応に右往左往していたが、それでも一時誰も来ないひっそりと
 した時間が訪れた。

 今回の住宅には吹抜け越しに天窓を設けている。大きなFIX
 ガラスからは大文字も眺められる。吹抜けには空中ブリッジ
 (通称大文字ブリッジ)も通っている。

 誰も来ないゆったりとした時間。お施主様には大変失礼である
 が、リビングに仰向けになって、天窓から射し込む光と影の移
 ろいや雲の流れを堪能したり、空中ブリッジに横たわり眼を閉
 じて静寂と向かい合ったりした。

 自分が設計した住宅で横になる機会はまず、ない。自分がお施
 主様と共に思い描いてきた空間。それがイメージ通りに出来て
 いるか。イメージ通りに光が移ろっているか。なにより、気持
 ちよいか。・・・そんなことを実感/体感/自問自答できた瞬
 間。

 上の階から下の階を見下ろす。キッチンで料理がされている風
 景をイメージする。気配が伝わることを実感する。色んな視点
 /視線/見え方が一つの空間に色々交錯していることを実感す
 る。外の気配/外との繋がりに開放感を感じる。

 色々と体感した。勿論イメージの世界ではあるが、ご家族がそ
 こで生活されている風景を体感した。

 設計者は恐らく誰しも、設計した空間に愛着を持っている。私
 もその中の一人である。そして、よく設計した空間/住宅/建
 築は「我が子」に例えられる。手塩に掛けて育てた我が子。設
 計段階からすれば、住宅の場合それはほんの1年程度の短い時
 間かもしれない。本当の我が子に比べれば、すごく短いかもし
 れない。しかし、その短い期間に、この先数十年の耐力をつけ
 させるべく、その基礎から柱から断熱から仕上げから逐一目を
 配り、今後の時間に耐えられる空間を創り上げてきた。短時間
 ではあるが、精一杯の愛情を持って育ててきた。これは、どの
 住宅に対しても想いは同じである。

 もうすぐ、この住宅もお引渡しである。晴れて、お施主様のも
 とへと嫁いでいくような感覚とでも言おうか。

 実際に娘を嫁がせたことは、まだない。それはまだ先の話しで
 ある。なので、嫁がせる感覚なのかどうかはわからない。が、
 分かりやすいイメージとしては、そのような感覚なのだと思う。

 嫁がせる前のほんのひと時。その空間にじっくりと身を置かせ
 ていただいたことに感謝である。

 お引渡し後は一年点検や二年点検でお邪魔する。「元気でやっ
 ているか?」「調子はどうか?」

 勿論、使われ始めると色々な不具合が生じる時もある。でも、
 そんなときは、可能な限り治したい。それは設計者の努めであ
 り、施工者の努めだと思っている。予測しなかったことが起き
 ることも経験上、どうしてもある。が、放置は決してしない。
 なぜなら「我が子」だから。

 さて、今度会えるのはいつだろう。

 そんなことを思いながら、もうすぐお引渡しの瞬間を迎える。

 そして、出来上がった空間に愛着を持っていただければとセツ
 に願います。
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■編集後記

 最後の一文は、お越しいただいた方にのみ分かる掛け言葉。

 まあ、それはさておきまして、今後もこのような気持ちで

 設計に取組んで参りたいと思います。

 そしてさらに、新しい「我が子」の姿をこの世の中に輩出

 していけますよう、日々精進です。

コラム | by muranishi | comments(0)

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