■先日実施しましたオープンハウスにお越しいただきました
皆様。どうもありがとうございました。
無事、滞りなく予定通り開催できまして、ホッとしております。
これからは、いよいよお施主様が住まわれることとなります。
「お引渡し」の瞬間は非常に感慨深いものがあります。
今回はそんな関係のお話しを少し。
それではどうぞおたのしみください。
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■我が子
我が子と言っても、今回の主題は娘でも息子でもない「我が子」
=設計を手掛けた建築のお話しである。
先日、オープンハウスを京都市内の住宅で行なった。お施主様
のご厚意に本当に感謝いたします。
結局、2日間で延べ約50人の来訪者があった。身内であった
り、友人や後輩はたまた同業者が主流であったが、オープンハ
ウスを通じて懐かしい顔に出会うこともでき、個人的には大変
有意義な場であったと思っている。
そんなオープンハウス。色々な意見や感想・質問などを第三者
から伺うことができ、今後の参考になったことも勿論多数ある。
そして、そんな中でも自分の中で一番良かったのは、丸々二日
間という時間を、自分が設計した住宅と共に居られたことであ
る。
ほぼ完成した現場に、丸二日滞在するという贅沢。今まで、週
に一回は現場定例で訪れてはいた。しかし、現場では打合せや
職人さんが作業されているため、じっくりと観察するとか、静
かに身を置くという余裕は勿論なかった。
オープンハウスでも、割合ひっきりなしに訪問頂いた方々の対
応に右往左往していたが、それでも一時誰も来ないひっそりと
した時間が訪れた。
今回の住宅には吹抜け越しに天窓を設けている。大きなFIX
ガラスからは大文字も眺められる。吹抜けには空中ブリッジ
(通称大文字ブリッジ)も通っている。
誰も来ないゆったりとした時間。お施主様には大変失礼である
が、リビングに仰向けになって、天窓から射し込む光と影の移
ろいや雲の流れを堪能したり、空中ブリッジに横たわり眼を閉
じて静寂と向かい合ったりした。
自分が設計した住宅で横になる機会はまず、ない。自分がお施
主様と共に思い描いてきた空間。それがイメージ通りに出来て
いるか。イメージ通りに光が移ろっているか。なにより、気持
ちよいか。・・・そんなことを実感/体感/自問自答できた瞬
間。
上の階から下の階を見下ろす。キッチンで料理がされている風
景をイメージする。気配が伝わることを実感する。色んな視点
/視線/見え方が一つの空間に色々交錯していることを実感す
る。外の気配/外との繋がりに開放感を感じる。
色々と体感した。勿論イメージの世界ではあるが、ご家族がそ
こで生活されている風景を体感した。
設計者は恐らく誰しも、設計した空間に愛着を持っている。私
もその中の一人である。そして、よく設計した空間/住宅/建
築は「我が子」に例えられる。手塩に掛けて育てた我が子。設
計段階からすれば、住宅の場合それはほんの1年程度の短い時
間かもしれない。本当の我が子に比べれば、すごく短いかもし
れない。しかし、その短い期間に、この先数十年の耐力をつけ
させるべく、その基礎から柱から断熱から仕上げから逐一目を
配り、今後の時間に耐えられる空間を創り上げてきた。短時間
ではあるが、精一杯の愛情を持って育ててきた。これは、どの
住宅に対しても想いは同じである。
もうすぐ、この住宅もお引渡しである。晴れて、お施主様のも
とへと嫁いでいくような感覚とでも言おうか。
実際に娘を嫁がせたことは、まだない。それはまだ先の話しで
ある。なので、嫁がせる感覚なのかどうかはわからない。が、
分かりやすいイメージとしては、そのような感覚なのだと思う。
嫁がせる前のほんのひと時。その空間にじっくりと身を置かせ
ていただいたことに感謝である。
お引渡し後は一年点検や二年点検でお邪魔する。「元気でやっ
ているか?」「調子はどうか?」
勿論、使われ始めると色々な不具合が生じる時もある。でも、
そんなときは、可能な限り治したい。それは設計者の努めであ
り、施工者の努めだと思っている。予測しなかったことが起き
ることも経験上、どうしてもある。が、放置は決してしない。
なぜなら「我が子」だから。
さて、今度会えるのはいつだろう。
そんなことを思いながら、もうすぐお引渡しの瞬間を迎える。
そして、出来上がった空間に愛着を持っていただければとセツ
に願います。
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■編集後記
最後の一文は、お越しいただいた方にのみ分かる掛け言葉。
まあ、それはさておきまして、今後もこのような気持ちで
設計に取組んで参りたいと思います。
そしてさらに、新しい「我が子」の姿をこの世の中に輩出
していけますよう、日々精進です。
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