■今日のお昼ご飯は、何を食べられますか?
「まだ決めてない」と仰る方が殆どだと思います。
何を隠そう私もその中の一人です。
まあ、この質問は心理テストでも何でもありませんので
どうぞ気にせず、スルーして下さい。
だいたい前置きというものは、本文に関係していることが
多いので、何故昼食のメニューを聞いたのかは本文をお読み
いただければ分かるようになっています。
それではどうぞおたのしみください。
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■一日9千回
一日9千回。
何の数字か?
とある説によると、人間は起きてから寝るまでに、9千回の判
断を毎日しているそうである。
「起きよう」と判断してから「寝よう」と判断するまでの判断
総数。実に多い。
「心臓を動かそう」とか「呼吸をしよう」とかは含まれていな
い。そんな9千回の判断。「歯を磨こう」といった些細な判断
から「家を建てよう」という重大な判断/決断まで、色々ある
が、回数にすれば、判断の重要性に限らずいずれも「1回」と
みなされる。
毎日生活している中で、自分の些細な判断を意識して生活して
いる人は殆どいないと思う。
しかし「決断」と呼べる領域の判断は、後々まで記憶に残る。
私達が設計している中でも判断/決断は絶えず行なっている。
例えばドアを例にとる。位置をどうするか。開き勝手はどうす
るか。色は?レバーハンドルの高さは?種類は?扉のデザイン
は?仕上げは?幅は?高さは?明り採りをつけるべき?つけな
いべき?・・・ドア一つでも実に10項目程度の判断が必要と
なる。
それが、プランや外観となってくると、判断の回数は飛躍的に
多くなる。
現場の監理に入っても然り。確認する作業と同様に判断する作
業が非常に重要になってくる。
独立当初。今から思えば、現場監理もまだまだ未熟な状態であ
った。勿論全力で監理にあたってはいたが。当時はデジカメな
ども出始めで、まだカメラが主流だった。だからと言ってはい
けないかもしれないが、現場の進捗状況をカメラにおさめて、
現像に出して・・としている時間のゆとりはなかった。お金も
かかる。なので、「目視確認」が主たる手段であった。現場に
行って、現場監督や大工さんに聞かれれば、その場で判断して
回答する。重要なことはお施主様に確認して指示を出す。
議事録や議題も、大体は現場監督任せであり、出された質疑に
回答するという感じ。言わば受身的な感じである。
それでは、ダメだといつの頃だったか思った。設計図を描いて
いるから、あとは現場が図面通りに進んでいるかを監理する。
質問に応える。目視確認をする。議事録は監督の書いたものを
確認する。・・・それではダメだと今は思っている。
今の現場監理の方法。これが正解と言うことは出来ないが、色
々と経験してきた中で、今のところ最低限これだけはやること
にしようと決めていることがある。
現場監理は原則として週1回は行なっている。これは独立当初
から変わらず行なっている。その上で、現在行なっているのは
以下の通りである。
<予習>
まず議題を挙げる/書く。その日に確認すべき事項・検討すべ
き事項・次週の工程確認などを、施工者が作成した工程表を基
に書き出す。書き出すことで明確になる。次回までに決めたい
事項も明確になる。お施主様に決定頂かなければならない事項
も明確になる。
<本番>
次に現場で、議題に沿って確認・検討を行う。単純に「見落と
し」がなくなる。工程通り進んでいるかどうかも把握しやすい。
可能な場合はお施主様にも現場定例会議に参加していただき、
決められる事項を潰していく。そして次週の工程に無理がない
か、はたまた全体工程に無理がないかも確認する。
加えて、必ず現場の進捗具合が分かる写真をデジカメで撮る。
前回の指摘事項が直っているかも記録に残す。
<復習>
最後に議事録を書く。施工者任せにしない。自分で書く。その
日確認した事項・決定した品番や色・変更が生じた事項・次回
までに決定すべき事項・チェックすべき施工図面などを改めて
書き起こす。さらに、現場写真や決定した事項などは月次の監
理報告書に記載する。
以上に加えて、定例会議日以外の日にも現場からは質問や図面
が送られてくるので、逐一監理報告書に記載していく。
「予習・本番・復習」の流れ。小学生の勉強の基本と全く同じ
である。
全て自分の手で書いたりまとめたりすること。これが繰り返し
行なわれる。1回の判断ではなく、3回以上の判断・確認を一
つの事象に対して行い続ける。1日9千回から比べれば、非常
に少ない。とは思う。しかし、ぶっつけ本番の1回の判断で下
される内容よりは、その判断内容の誤差が少なくなると考えて
いる。全ての判断を1回で100%にすることは、多分危険。
3回でも少ないかもしれない。しかし、1回よりは確度が断然
上がるものと今は考えている。
先日、柔道の野村選手の特集をニュースでやっていた。オリン
ピック3連覇を成し遂げた、あの野村選手である。惜しくも北
京オリンピックには出場権を得られず、4連覇は達成出来なか
ったが、次回のロンドンオリンピックの出場はもとより、金メ
ダルを目指して現在も現役で練習に励んでいる。野村選手とい
えば、一本背負いが十八番である。
曰く「考えてから技(一本背負い)を出すようだと練習不足。
体が勝手に反応して技を出せるようになるまで練習しないとい
けません。」
ひょっとすると、「判断」の領域から「呼吸をする」などとい
う無意識のレベルに持っていこうとされているのかもしれない。
そうでないと、世界一にはきっとなれないのだろうと思う。
まさか、現場監理で「無意識」の領域で判断するわけにはいか
ないが、物事を何回も繰り返して判断を重ねていくことで得ら
れる正確さを得とくできるかもしれない。勿論、お施主様に聞
くべきことは守ったうえで、詳細の納まりなどプロじゃないと
判断がつかない部分に対しての発言であるが。
「予習・本番・復習」には時間も手間も掛かる。だからより良
いものが出来ると信じている。
これが今現在、最低限やるべき内容だと思って実行している。
正解ではないかもしれない。もっと回数を増やさなければなら
ないのかもしれない。それは、今後もっと経験を積んでいった
ときに分かる事柄なのかもしれない。
常に進歩することが必要である。一つのやり方を見直す時も必
要である。今後も改良を重ねて、現場監理を進めていきたいと
思っている。
以上で今回のコラムを終わりとする。と書こうと今9千分の一
の判断をした。
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■編集後記
お昼ごはん。決まりました?
9千分の一の判断が、それです。
なので、迷わないでください。9千分の一ですから。
私?私はほぼ毎日、事務所の斜め前にある大力食堂で食べて
ます。なので、お店を決める判断は無意識下にあります。
でも毎日そのお店なので、メニューを決めるときは滅茶苦茶
迷います。たかが9千分の一の判断なのですが・・・。
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