空間工房 一級建築事務所

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10.03.10 Wednesday

クラウド

■時に建築の世界だけでなく、異業種の方達と交流するのも刺激

 になります。京都商工会議所にも属していますので、先日は

 そんな交流会に参加する機会がありました。

 そこで出会った方に「お守り」を造っている会社の社長さん

 が居られました。単純に、「お守り」って外注なんだ~。と

 思った私。それこそ京都でも有名な神社の名前ばかり挙げられ

 ておりました。

 その方の言葉で印象的だったのが「建築は良いですね。何年も

 世の中に存在できて。お守りは一年に一回お火焚きで燃やして

 しまいますからね~。」

 かたや何十年も持たせるのが使命。かたや一年で燃やされるの

 が使命。色んな人が色んな使命を持って生きているのだと思い

 ました。

 今回はそんな交流会の話しから少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■クラウド

 先日、京都商工会議所の交流会に参加してきた。

 その交流会の冒頭で、株式会社トーセの斎藤社長より、情報に
 関するレクチャーがあった。

 株式会社トーセ。個人的には勉強不足のため、あまり聞き馴染
 みのない会社だったが、実は任天堂その他の大手ゲームメーカ
 ーのソフトやモバイルコンテンツを製作している「影武者」的
 な大企業と言ってよいと思う。自社ブランドではなく、あくま
 で下請けに徹するやりかたで、業績を伸ばしている会社である
 と今は理解している。

 その社長のレクチャーの中で、「クラウド」という言葉が出て
 きた。これまた勉強不足のため、その意味を聞くまでは「?」
 マークが頭の中を占拠した。知っている人は知っている。知ら
 ない人は知らない。当たり前である。

 知らない人のために、その意味するところを少し。

 社長曰く「今後5年程度の内に、皆さんはクラウドの社会に知
 らず知らず入っていきます。これは、自然とそうなるので、諦
 めてください。」

 滅茶苦茶、不安である。そもそも「クラウド」を知らない。そ
 の上、5年程度で「クラウドの社会」に知らず知らず入ってい
 くと明言されたのである。「グラウンド」でも「ブランド」で
 もない。「クラウド」である。自分の知らない内に、自分の知
 らないルールを強いられるのか?という不安。何かの怪しい宗
 教じゃないだろうな?とも思ったりした。後から思えば、赤面
 /噴飯ものだが・・。

 「クラウド」=「雲」。とのこと。ってこれでは益々分からな
 くなるので、説明を加える。但し、聞きかじった程度なので、
 その説明が的を射ているか否かは自信がありません。皆さんも
 眉唾でお願いします。

 今まで、個人の趣味/嗜好などのデータベースは個人に帰属し
 ているものだった。例えば本や音楽・映画など、自分が書店や
 CD屋さんで買ってきて、そのソフト媒体は自分の部屋に保管
 してきた。これが今までの常識。実体のあるものを、お金を出
 して買う。そして楽しんで、どこかに保管する。という流れ。

 これが、変わる。もう既に変わりつつある。例えば、音楽。パ
 ソコンや携帯から、自分の聞きたい音楽を「ダウンロード」す
 る。本であれば、キンドル(電子書籍端末)に「ダウンロード」
 する。そしてお金は後日まとめて払う。実体のないものと言う
 と語弊があるかもしれないが、「情報」のみを買う感じ。

 そのデータベースは個人ではなく、企業側に存在する。企業が
 倒産すればデータベースはなくなる。が、存続する限りは、主
 導権が企業側にあるようなイメージ。

 最近は景気の悪化もあって、「巣篭もり」が主流だったりする。
 なので、パソコン通販などの売上げは全国の百貨店の売上げに
 肉迫する勢いらしい。でもって、近い将来、完全に追い越すら
 しい。なるほど、だから京都の百貨店も撤退するところが最近
 目立つのか。と思ったりしている。

 パソコン通販や、その草分け的存在の楽天市場などを見れば、
 クラウドの走りは相当前から存在していたとも言える。ただ、
 それらは、服や食べ物といった「実体」を伴っていた。が、
 クラウドには「実体」がない。そこが大きな違いとも言える。

 クラウド(雲)が常に自分の頭上にあり、知りたいもの・欲し
 い情報をそこから取り出す。お金は後から。

 これが、「クラウド」の概念である。と理解している。

 「実体」の反対語は「属性」である。が、コンピューターの世
 界に於いては「仮想」とも置き換えられる。と思う。因みに、
 最近TVで良く見る「携帯無料ゲーム」のCM。無料では商売
 にならないが、実はゲーム内で「アイテム」を購入するシステ
 ムらしい。

 例えば、釣のゲームなら、良い釣竿を50円とか、餌を20円
 とかで購入して、ゲームを進めるという感じ。「実体」はそこ
 に存在しない。あくまで仮想空間の「釣竿」であり「餌」であ
 る。デザインはされているだろうが、実体はこの世に存在しな
 い。恐るべし、無料ゲーム。しかも通信代は別途掛かる。ここ
 までくると、何が無料なのか良く分からない。

 わずか数十円でも数万人が買えば莫大な売上げになるという仕
 組み。だからCMもバンバン流せる。というか、税金対策で流
 している感じ。

 横道に逸れたので、軌道修正・・。

 企業側にデータベース。そう、今やアマゾンなどで一回、本を
 購入しようものなら、そのジャンル(購入者が興味を持ってい
 そうな本)のお勧めメールがジャンジャン届く。便利ではある。
 が、何か押し売りのようにも感じる。でも、そういう社会に入
 りつつあることは理解しておきたい。

 最後に建築の話しを絡めておく。(何か自分の中で、絡めてお
 かないと落着かないので・・)

 私達設計者も、ひょっとしたら「実体」のないものを創ってい
 る/描いているだけなのかもしれない。設計図面とは「実体」
 があるようだが、実際には建たなければ「実体」に行き着かな
 い。

 しかし、「実体」に行き着くまでには絶対に必要なものである。
 実体とは切り離すことが出来ない「仮想」と言えるかもしれな
 い。

 図面だけではダメ。図面なしでもダメ。設計者とは、そんな仮
 想と実体の橋渡しをする重要な役割を担っているのだと思う。

 そんなことを「クラウド」のレクチャーを聴きながら思った次
 第である。

 どんなに「クラウド」の世界になろうとも、建築は情報だけで
 は成立しない。図面だけでは成立しない。現場の監理が伴わな
 いと成立しない。

 私達は仮想空間を創るのが役割ではないのだから。
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■編集後記

 設計した建物が全て「実体」になるわけではありません。

 設計計画が、建てようとする方の意図にそぐわない場合は

 勿論「仮想」のままとなる場合もあります。

 それでも、その「仮想」達は私達の糧となっています。

 なぜなら、真剣に向き合った時間はその後の別の建築で

 活かす場面もあるからです。

 数々の「仮想」の上に「実体」は成り立っているのかもしれ

 ません。

コラム | by muranishi | comments(0)

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