空間工房 一級建築事務所

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10.10.29 Friday

思考の終焉

■先日、新聞で「元気」をテーマにした広告賞の受賞作品が掲載

 されていました。

 「なるほどな~」と感心するものや、「うまい!」と唸ってし

 まうもの、じっくりと読ませるもの等など、流石にいずれも秀

 逸な作品ばかりでした。

 その「一枚」に行き着くまでにどれほどの思考が繰り返された

 のか、聞いてみたい気もします。

 そんな感じで、今回のコラム。

 それではどうぞおたのしみください。
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■思考の終焉

 今まで、住宅の思考「過程」という題目でコラムを何本か書い
 ている。

 これは主に、ある住宅のプランニングの過程にスポットを当て
 て書いたものである。

 そこで一つ、素朴な疑問が浮かんできた。

 何をもって、思考が終焉若しくは収斂或いは帰結するのか。

 時間/締切りという凄く分かり安い尺度もあるにはあるのだが、
 もしそういった外的制約が全くない場合、何をもってその思考
 を終えることが出来るのか。

 自分が納得いくものが出来た時に終わりは告げられる。

 この納得の仕方が大事である。

 まずクリアしなければならないは、お施主様のご要望。これは
 大前提である。そして、その要望の紐解き方というか、その要
 望の裏に潜んでいるであろう要望を炙り出すことも同時に行な
 わなければならない。

 そんなこんなで例えばプランAが出来上がったとする。

 要望が空間に整理/反映されたものとする。

 そこで自分が納得出来なければ、引き続き思考は続けられる。

 では、納得できる基準というか軸は何なのか。

 私の場合、というか私の場合しか知らないので他の人の場合は
 書きようがないのだが・・、ということで私の場合。

 上手く納まった感じ/状態「だけ」ではNG。明確に訴えかけ
 る何かが分かる状態になってはじめてOK。といった感じであ
 る。

 まあそれが気に入って頂けなければ、結局はNGなのだが。

 一旦出来たものを眺めてNGだった場合、構成要素をバラバラ
 にしてみたり、ひっくり返してみたり、空間のシーンを描いて
 みたり、色々する。というかモガク。あがく。

 それでも簡単に納得のいくものなど生まれない。生まれる場合
 もあるが、生まれないときはとにかくモガクしアガク。

 そのモガキとアガキの先に思考の終焉がある。

 納得のいく状態が生まれたとき、「なんとしても建てたい」「
 なんとしても実物を見たい」という強い思いが生まれる。その
 思いこそが、建築を最後/完成まで引っ張り続ける力の源とな
 る。この原動力があるからこそ、様々な困難や壁を乗越えられ
 る。のだと思う。

 図面が出来た先に、未だ見ぬ建築は幻想の中にある。

 その未だ見ぬ建築の姿を見るまでは、手を抜けないし気も抜け
 ない。

 結局は、一つの建築が出来上がりを迎えるということは、最初
 のモガキとアガキの末に生まれた「強い思い」に支えられてい
 るのかもしれない。

 思考の終焉とは脱力ではない。活力なのである。

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■編集後記

 今ではその機能はなくなりましたが、昔のCADには、その

 図面に掛けた/掛けている時間を表示するというコマンドが

 ありました。要は時間の蓄積/累積を示すというもの。

 それがあった時代は、結構勝手にプレッシャーを感じていた

 記憶があります。

 こんなに時間を掛けているのに、描けているのはコレだけ?

 みたな感じです。

 なぜそのコマンドがなくなったのかは不明ですが、当時なぜ

 そのコマンドを作成/プログラムしたのかも不明です。

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 時間を掛ければいいってもんでもない。
 時間を短縮すればいいってもんでもない。

コラム | by muranishi | comments(0)

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