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10.10.06 Wednesday

ある建築家の言葉(15)

■玄関。建物の出入口のことを指しますが、実は仏教用語です。

 本来は建物の名前ではなく、玄妙な道に入る関門という意味で、

 奥深い教えに入る手始め、糸口を指していたようです。

 庶民の住宅に玄関が設けられるようになったのも明治期以降。

 それまでは、書院などを指して「玄関」と呼んでいたそうです。

 普段使いなれている言葉も語源を辿ると面白い事実が隠れて

 いたりします。

 今回はそんな玄関のお話しも交えながら少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■ある建築家の言葉(15)

 今回は建築家 伊東豊雄氏の言葉から少し。

 既にこのシリーズで登場していたように思っていたが、意外に
 もまだだった。

 仙台メディアテークを境/機に新天地というか別世界の扉を叩
 かれた印象のある方。という個人的な印象を持っている。恐ら
 く多くの方がそういう印象をお持ちかと思う。とは言っても一
 般の方の中には知らない方も居られると思うが、簡単なイメー
 ジで言えば、貴方の所属する業界の革命児を思い浮かべていた
 だければよいかもしれない。但し、御歳もうすぐ70歳。安藤
 忠雄氏と同い年である。

 さてそんな方の言葉。

 「建築は結局は『内』と『外』をつくってしまう」

 至極当然でありながら、意味は深い。哲学的ですらある。

 そう、例えガラス張りで透明感の高い建築物であろうと、所詮
 は完全に外部=内部とすることは出来ない。という意味である。
 いや、透明であればあるほど、内外の境界はますます目につく。

 何が言いたいか。

 建築家は時として、内外の境界を消し去ろうという努力をする。
 それは何のためかというと、外部を内部に取込むためだったり、
 自分が設計する人工物を自然界と融合させるためだったり、広
 く見せるためだったり、いろいろな理由で。

 しかし、どうしようもなく「内」は「内」であり、「外」は「
 外」という状況を作り出してしまうのが、建築であるという。
 つまり、その境界は「消せない」。

 伊東豊雄氏が近年取組んでいるのは、外にいると思ったら中だ
 った的な空間構成である。それは人間の内臓を例に語られる。
 食べ物は口から入って内臓を通り、お尻から排出される。では、
 内臓は内なのか外なのか。内のように見えて実は外なのではな
 いか。と。

 修行の足りない私からすれば「どっちでもいい」の一言なのだ
 が、そんな理屈から構成される空間を模型などで見ると、やは
 り「凄い」と思ってしまう。

 内と外の境界を作り出すのは、壁や窓や屋根などの構成部位で
 ある。例え洞穴のような横穴式住居であろうと、その出入口に
 一枚の扉なりガラスが入った瞬間、明確に「内」と「外」が存
 在し始める。この場合の境界は、扉なりガラスである。伊東氏
 の取組みは、その扉なりガラスさえもなくしてしまおうという
 意図である。たぶん。全然違うかもだが。

 一般的な住宅を考えた時、壁や窓はあるにせよ、明確に内と外
 を隔てる場所はどこだろう?

 多分、私は「玄関」だと思う。

 人が出入りする場所。

 日本は上履きの生活スタイルなので、玄関で靴を脱いだり履い
 たりする。

 この「靴を脱ぐ・履く」という行為は結構「領域/境界」をよ
 り明確にしている気がする。

 例えばホテルであれば、エントランスからロビーを通ってエレ
 ベーターに乗り、廊下を歩いて自分の部屋に入り、そこで漸く
 スリッパに履き替える。旅館であれば、玄関で靴を脱ぐ。

 住宅や旅館における玄関と、ホテルや美術館における玄関とで
 は何か持っている意味が違う気がする。旅館のロビー/玄関に
 スリッパで行くのは平気だが、ホテルのロビー/玄関にスリッ
 パで行くのは勇気がいるので。

 だから何というわけでもないのだが、ちょっとした行為/習慣
 の中にも目に見えない「境界」が潜んでいるように思った次第
 である。
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■編集後記

 いつから日本が室内で上履きで生活するようになったのか?

 とか、日本以外で上履きを主流とする国やその割合は如何ほど

 なのか?など素朴な疑問は尽きません。

 玄関が出来る以前の住宅の形態なども調べてみると面白い

 かもしれません。

 上履きと畳の文化は密接な関係があるように思いますが

 最近では「オール畳」の住宅はあまり見かけなくなりました。

 いずれは上履きの文化もなくなるのでしょうか?
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 最近のユニットバスの床は「畳の柔らかさ」を追究している
 ようです。床に座れるように。

コラム | by muranishi | comments(0)

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