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10.09.29 Wednesday

京町家考(2)

■今のプレファブ住宅が、昔の町家みたいな理念でパッケージ

 化されていれば、どんなに良かったことかとフト思いました。

 でも、それでは一度建てれば、次の仕事がなくなってしまう

 ことにもなりかねません。プレファブ業界にとってみれば、

 それは死活問題です。だから2~30年で家は壊されるよう

 になっているのか~。などと疑いたくもなります。

 まあ、そこに掛ける費用が膨大でなければ、それもヨシかも

 しれないのですが、実際は膨大ですから手に負えません。

 そんなことを思いながら今回のコラムです。

 それではどうぞおたのしみください。
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■京町家考(2)

 前回の京町家考では、町家に住んでいる方の「保存や再生」に
 対する関心/意識が低いこと。その関心/意識を高める手法は
 ないものか?という点。さらに「保存や再生」が、そもそも何
 故必要か?そこに説得力が必要だ。という点を考えていきたい
 という終わり方をした。

 というわけで、考えていきたい。

 まず、京町家の保存や再生が何故必要か?という点から。

 京町家の理念として「壊さない限り壊れない」という主軸があ
 る。主に「地震」「火事」「腐朽」の3点さえ逃れることが出
 来たなら、100年は勿論200年だって建ち続けることが可
 能だという理念がある。

 勿論、何もメンテナンスをせずに放っておいても持つという意
 味ではない。然るべきメンテナンスをすることで、存続が可能
 という意味である。

 また、京町家は、建てる時から「再生」のことを考えている。
 再生とは、材料の使いまわし(転用)も意味する。また、敷居
 など将来的に磨り減るであろう箇所が容易に取替え可能なよう
 に工夫されている。一部がダメになっても、入替えることで甦
 るシステムが構築されているだけでなく、壊す時も次の町家に
 材料が転用出来ることを考えて造っている。建具や畳などは勿
 論のこと、基礎として使われている玉石にまで、転用の心は備
 わっている。

 どういうことか?

 恐らく、「勿体無いことをしない」という精神に尽きる。足利
 義政がつくった東山殿でさえ、古材を使っているという。これ
 らの理念は、CO2排出削減にも大きく貢献していると言える。
 江戸時代の大工の仕事は殆どが修繕だったという。それぐらい、
 家を建てることは珍しい時代だったのかもしれない。

 そもそも「保存・再生」が当たり前であった時代に建てられた
 京町家。それを考えると、「保存や再生」が何故必要か?とい
 うことを考えること自体が、どこかおかしいのかもしれない。

 歴史あるまちなみ。とか、観光資源として。などという観点は
 外す必要がある。何故なら、それはあくまで第三者的視点であ
 り、住んでいる人には何ら関係のない話しに過ぎない。と思う。

 京都人にとっての京都は、あくまで日常生活の場であり、非日
 常/観光の場ではない。ただ、こう言ってしまうのも傲慢な気
 がしないでもない。少なくとも、観光から得られる財力の影響
 は直接・間接に関わらず大きいことは間違いないと思うので。

 なので、観光無関係とはいかないが、日常の場であることも間
 違いない。

 その日常を考える時、最も説得力を持つのは、「勿体無い」の
 精神かもしれない。

 数回前のコラムでも触れたが、現在の軸組工法と、京町家で採
 用されている伝統的軸組工法とは、地震力に対する考えが全く
 違う。なので、現行基準に照らし合わせて「危険」と判断され
 ることが殆どだが、実は伝統工法の構造解析は殆ど進んでいな
 い。というか、進められないでいた。

 なぜなら、木は材種や材齢、乾燥度合いや接合方法などによっ
 て、強度が一律に数値化出来ないという実体もあったからであ
 る。

 全てを数値化して、客観的に評価出来るようにするのが、構造
 解析上の前提条件であると思うが、その前提条件が作れない。
 なので伝統工法を解析できない。

 現行法規で評価出来ないから、建てられない。

 言ってしまえば、そういうことである。

 誰も責任を取れないから、建てられないとも言える。

 現に100年以上建っているにも関わらず。

 なので、というのは強引かもしれないが、絶対残さねばならな
 いのである。先人の知恵と経験の結晶とも言える町家には、現
 代科学をもってしても解析しきれない工夫や技術が閉じ込めら
 れていると思うので。

 壊すのは一週間もあれば、いつでもできる。でも、そこには1
 00年近い歴史だけでなく、そこに至る数百年の工夫も保有し
 ている。その時間の積み重ねを「一瞬」で壊すのは、やはりど
 う考えても、勿体無いのではないだろうか。

 京都市的には、町家は個人資産だが、まちなみは公的資産だ。
 だから勝手に壊しちゃいけない。という理屈らしい。それも一
 理あるかもしれない。でもそれ以前に、「建ち続ける」ことを
 前提に建てられたものを、「壊す」理由がないではないか。

 相続・維持費・不便さなど「壊す」理由はいくらでもあるのだ
 よ。と言われればそれまでなのだが。

 そしてもう一点。町家保存や再生に対して、町家所有者の意識
 や関心を如何に高めるか。という問題。

 これはもう、実例の数をどんどん多くしていくのが最も効果的
 だろう。まちのアチコチに再生事例が増えれば、いやでも目に
 つくので。と言いたいところだが、意識が低いのに、どんどん
 など増やせない/増えない。

 公的機関からの地道なPR活動などでは限界もある。なので、
 最も効果的なのは、再生事例を持って町家所有者に直接訴えて
 まわる。という、もっとも地道な活動くらいしか思いつかない。

 まあ何事も一気に解決を図ろうとするから無理が生じたり、無
 理だと諦めるのであって、一日1軒でもまわれれば、少しは変
 わってくるかもしれない。

 現存する町家が4万7千軒。一日1軒なら単純に128年掛か
 る・・・。無理か?
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■編集後記

 現存する京町家は少なくとも65年以上は建っていることに

 なります。昭和25年の建築基準法施行前の建物ですから。

 ・・・・・。なんだか矛盾を感じます。

 なぜ基準法以降の建物が建替え時期を2度も迎えているのに

 町家はまだ残っていられるのでしょう?

 在来工法の寿命が短命なのか、伝統工法の寿命が長命すぎる

 のか?まあ、単純に比較は出来ませんが、基準法はそろそろ
 
 見直した方が良い気がします。
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 E-mail:info@yosyakozo.jp

 残すだけでなく、造れるようにすれば良いだけなのに。

コラム | by muranishi | comments(0)

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