空間工房 一級建築事務所

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10.03.01 Monday

ある住宅の思考過程(1)

■設計を進める上で、各住宅・各建築毎に思考過程は一通りでは
 
 ありません。

 ご要望や法的条件・周辺環境によっても、最終ゴールへのアプ
 
 ローチの仕方は数限りなくあると言っても過言ではないと思い
 
 ます。

 そんな背景から、「ある住宅の思考過程」と題して、その時々
 
 で考えている思考内容をシリーズ化して、不定期でお送りして
 
 いきたいと思います。

 今回はその第1回目。現在、HPからお問合せいただき、京都
 
 市内で設計をし始めた住宅の思考過程からお届けします。

 それではどうぞおたのしみください。
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■ある住宅の思考過程(1)
 
 新撰組の拠点ともなった、壬生寺から程近くに今回の敷地はあ
 る。三方を3階建ての住宅に囲まれた、西向きの敷地。

 それに対する最大のご要望は『生活感を感じさせない、言わば
 美術館のような外観を有すること』である。

 因みに、窓なども全く見せないようにして欲しい。という注釈
 付き。更には、2階建てを強く要望されている。

 唯一光を取込むことが出来るのは、単純に考えると西側の道路
 面のみである。その他の方角には、多少の隙間を設けたところ
 で、相手は3階建てである。光は期待出来ない。多少の隙間で
 はなく、ある程度の空間を設けないとダメであることが予想で
 きる。

 単純に西側からの採光を取込むにしても、外観上窓を設けるこ
 とは避けて欲しいと明言されている。

 八方塞り状態である。

 外観を生活感なくというのは大前提として、まず第一に考える
 のが、光の取り込み方。この八方塞り状態のどこに活路を見出
 すのか。そこが争点であり、且つこの住宅の魅力に繋がる。と
 思う。普通に考えるところのデメリットを最大の魅力に変えて
 いくのが、私達の腕の見せ所である。と勝手に思っている。デ
 メリットをデメリットのまま残しておかない。それが基本であ
 る。そして隙あらばメリットに変換していく。それが応用であ
 る。

 凡その考えは、まとまってきている。光を真上から取り込む+
 坪庭を設けるという二本立てで臨む。道路から見える西側には
 印象的な壁を立上げ、目隠しを兼ねつつその内側にテラスと窓
 を設ける。窓は見せない。でも窓はつける。光と風を取込むの
 は、住宅の基本だから、流石に窓をつけないわけにはいかない
 のである。

 玄関を入ると正面奥深くに坪庭。これは主寝室からも観賞でき
 る配置とする。この坪庭は屋外。光と風を誘導する役割を持た
 せる。長い通り土間の角を折れると、吹抜けとなったホールが
 現れる。上部には天窓。このホールは半屋外的要素を持たせる。
 尚且つこの住宅の中央に配置し、上から舞い降りる光を全ての
 部屋に拡散させる。これだけでも恐らく充分明るくなる。そし
 て、このホールが、この住宅の最大の魅力であり、且つ重要な
 役割を果たす装置となる。

 ホールに設けられた階段を登ると、リビング空間が広がる。西
 側には奥行き約2.7m幅約6.3mの10帖を超えるデッキ
 テラスが繋がる。西面は壁が立ち上り、外部からの視線はカッ
 トする。そして上からの光入り込む。どこからも視線は感じな
 いけれども、明るく開放的な居住空間が出現する。その空間の
 脇には、水廻り空間が直線的に配置され、一方はデッキに、一
 方は坪庭に向けて開け放たれる。

 ざっと、以上のようなイメージである。

 そして、最も困難を極めるのが、最大のご要望。『生活感を感
 じさせない、言わば美術館のような外観を有すること』。であ
 る。

 今も思考途中。多面体で構成された外観や、木の面とスリガラ
 ス面で構成された外観など数案の候補は出ているものの、結論
 は出ていない。特に京都市内は景観条例という規制の縛りがあ
 る。屋根はフラットに出来ない。白色も黒色も使えない。いわ
 ゆるシンプルモダン系のイメージには出来ない。

 ではどうするのか?美術館のような住宅。生活感のない住宅。

 あとはスケッチを重ねるのみである。その答えは、鉛筆が教え
 てくれる。そう信じて、仕事に戻る。
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■編集後記

 設計/思考を進めていくと「突き抜ける」時が必ずあります。

 逆に「突き抜けた」感がない場合は、思考が足りないと考えて

 います。

 思考とは、何もPC画面とニラメッコをすることではなく、

 「紙」に「鉛筆」で描いてみる。とか。模型をつくってみる。

 とかといったことを指します。

 時には「フトした線の乱れ」や「意図しない線・腕の動き」が

 「答え」を教えてくれたりします。

 そう、描きつづけることが実は大事だったりします。

 これが設計の一端でもあります。

コラム | by muranishi | comments(0)

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