空間工房 一級建築事務所

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10.09.10 Friday

山林と田畑

■日本には平地が少ない。国土の75%を山地が占めていると
 
 されます。今、その山地を舞台に外資が動いているそうです。

 さて、国土のわずか25%の平地に1億2千万人が犇いてい

 て、都市を形成していると考えますと、今さらながらゾッと

 します。さらに平地には田畑などもあることを考えますと、

 実際に人が生活している土地は何%になるのでしょう?

 しかも「過密都市」と「過疎地域」における人口密度の不均

 一さ加減を加味しますと、なんだか非合理的な土地の使い方

 をしている気になってきます。

 今回は平地のお話しではなく、山林のお話しを少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■山林と田畑

 今回は、なんとも牧歌的なタイトルである。

 最近のニュースから少し気になる情報があったので、それらに
 ついて書いてみたい。

 気になる情報の概要は以下の通りである。

 一つ目。最近、山林が中国やオーストラリアの外資によって、
 買い取られているという事実。

 二つ目。過去数年と比べて、農家が廃業した割合が25%程度
 にのぼるという事実。

 いずれも第一次産業の話しである。そう、決して牧歌的なコラ
 ムではない。

 山林の売買は、欧米に比べて日本の規制が緩い点が原因である
 とされている。欧米では、山林ごとに森林伐採などに制限が設
 けられいるため、例え買収したとしても、ほぼ現状を維持して
 いく必要がある。対して日本の現状は、特段の制限が設けられ
 ておらず、売買に関しても、事後報告で許される。そこに外資
 が注目したのかどうかは知らないが、相場の5倍などという値
 段で買い取っている事実。それだけ投資してもリターンが見込
 めるという裏返しであるように感じる。

 そして、農業人口の減少。これは主に高齢化により、物理的に
 続けることが出来なくなったとか、後継者が居ないといった理
 由が主として挙げられる。ただ、田畑の場合、売買時に厳格な
 審査があるため、簡単に外資は手に入れることが出来ないシス
 テムとなっている。また、農業の廃業率は、所有する農地面積
 が小さいほど顕著であることも農林水産省の白書により明らか
 にされている。食料自給率を現状の30%から50%に上げる
 政策をとっている国家にとっては、この現実は結構痛手だった
 りする。就職先として農業を推進している理由も分かる。

 こうなると残るは漁業だが、特段の情報は見ていない。温暖化
 で秋の味覚・秋刀魚の水揚げが例年の半分だとか何とかはある
 が。

 さて、山林と田畑にまつわる話しから見えてくるものは何か。

 山林を外資に売っているということは、事実上、林業を廃業し
 ていることに他ならない。なぜ廃業に踏み出すのか。理由は簡
 単である。儲からない。海外からの木材の方が安い。なので国
 内に出回る余地がない。このままでは維持できないので、手放
 した方が特である。という理論かと思う。非常にザックリだが。

 怖いのは、外資の目的が不明確な点である。というか、目的が
 不明確なので怖い。といった方が正確かもしれない。

 5年~10年して、資産価値があがったときに売りに出すとい
 う程度の目的であれば、そんなに気にしない。Co2排出のト
 レードオフの持ち駒として保有するというのも、理由として腑
 に落ちる。一体を開発して、リゾート化するだの、宅地化する
 だの、別荘地化するだのという理由は、あまり考え難い。結局
 は目的が分からない。何か凄く大きなことを考えていそうで、
 単純に怖い。まあ、私は単なる傍観者なので、恐がる必要など
 何もないのだが。

 山林と田畑から見えてくるのは、林業・農業従事者の減少であ
 る。グローバル化という名のもとに、国内生産がどんどん減少
 していっている。製造業も然り。工場は軒並み海外移転を目指
 している昨今。日本の技術自体が海外に流出していることとほ
 ぼ同義であると思う。失業率が高いのも、内需が少ないことが
 根本にあると思う。グローバル化の波に乗って、国内が空洞化
 する事態とは果たして如何なものか。と勝手に思うわけである。

 外資が目を付けるということは、国内はともかくとして、海外
 に需要が眠っているということではないのか。であれば、木材
 という資産を海外に向けて発信していけば、それなりに成り立
 つのではないか。と単純に思うのである。生産拠点を国内に置
 いて、海外に輸出できれば、求人率はあがるはずなのだが、そ
 れでは海外価格に挑めない地点にまで、日本の経済は発展して
 しまったという皮肉。なのか。

 まあ経済ド素人の私が何を書いても始まらないので、この辺に
 しておく。

 建築と全く関係ない話しで終わってしまうのも嫌なので、無理
 やり結びつける。

 全て国産材を使った住宅には助成金が出されるという自治体も
 存在する。地産池消を推進する政策であり、林業を助ける政策
 であり、国産材というブランドを志向する政策である。昔は国
 産材しかなかったはずである。しかし流通の発達などによって、
 海外木材が安く手に入るようになった。地元で育った木を使う
 のが、建物には良いとされている。しかし、それを実現するに
 は国産材が高くなりすぎた。なので助成金制度を作るまでにな
 ったのかもしれない。

 国産材を手頃に入手するためには、皆が使う必要がある。需要
 と供給のバランスである。コンクリートが出回ることでも、需
 要を抑える一因になったかもしれない。

 地震と火事という災害に対する「木」は、確かにビハインドを
 有しているかもしれない。しかし今、「木」や「伝統工法」が
 見直され始めている。公共建築的な大規模建築にも「木」を使
 う試みがされ始めている。それは、技術の進歩により耐震性や
 防火性能を有した木造が確立され始めているということである。

 コンクリートジャングル(死語だが)から木の復権によるウッ
 ドジャングル(造語だが)を果たすことが出来たなら、日本の
 風景/街並みは日本独自の風景に回帰していくように思う。

 そのためにも、外資による山林買収は早い段階で食い止めなけ
 ればならない。(いや、私には何もできないが・・)

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■編集後記

 都市の過密化というのは、合理的なのでしょうか?

 経済活動のしやすさを最優先で考えますと、確かに合理的なの
 
 だと思います。一所に集まって暮らせば、そこになんでもかん

 でも放り込むことで、効率良く消費されていくわけですから。

 この合理性が生み出す非合理性も確かに存在するはずなのです

 が、あまり深く考えたことはありません。

 そんなことを考え出しますと、日本の住宅規模が海外と比べて

 どうなのか?という疑問/興味も湧いてきます。

 いつかそんな観点からも書いてみたいと思います。

コラム | by muranishi | comments(0)

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