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10.09.03 Friday

模型のチカラ

■設計の意図や内容・出来上がりを伝える手段の一つに「模型」

 というものがあります。図面やスケッチやパースなどの2次元

 の世界では伝わりきらない部分を補ってくれる伝達手段として

 一般的に使われている手段でもあります。

 これを初めて見る方は、結構驚かれます。まずどうやって造っ

 たのか?という疑問が浮かばれる方が殆どです。

 勿論プラモデルのように部品が整っているわけではありません

 ので、図面から一つ一つパーツを造っていくわけですが・・。

 さて今回はそんな模型のお話しを少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■模型のチカラ

 今、後ろで二人のスタッフがせっせと模型を造っている。

 一人は正式なスタッフ。もう一人はオープンデスクで来てくれ
 ている大学院生である。

 あるプランがまとまると、大抵は模型にして見る。それはプレ
 ゼンのためであることが多いが、自分が設計したものを3次元
 で立体視するというのが主な目的である。

 建築家の中には「模型なんてつくらないよ」という人もたま~
 に居る。理由は「自分の頭の中で出来上がっているから」だそ
 うだ。まあ、そりゃそうなのだが、そんなことを言ってしまえ
 ば見も蓋もない。

 でも大抵の建築家は模型にしてみる。多分。

 そうすると、明らかに「実体」を持つので、頭の中やスケッチ
 で想像していた次元から一気に現実的なものとして捉えなおす
 ことが出来るようになる。それはたとえボリュームだけを表し
 たスタディ模型であっても、グッと身近で直喩的な理解を助け
 てくれるものとなる。

 イメージ通りの光が入ってくるか。視線の抜け方はどうか。ボ
 リュームやバランスに問題はないか。強度的に弱そうなところ
 はないか。上下の繋がり方に違和感はないか。外観はどうか。
 などなど、一目で確認が出来る。

 そんな多くのメリットが一つの模型だけで享受できる。模型の
 チカラは凄いのである。

 なんてことを考えながら、最近話題の3DTVのことが頭をよ
 ぎる。まあ昔から立体メガネを掛けて「飛び出す映像」という
 ものは存在していた。私個人の最も古い立体映像の記憶は19
 85年のつくば博にまでサカノボル。実に25年も前のことで
 ある。わざわざ京都から筑波まで行った。というか両親に連れ
 て行ってもらった。パビリオン自体にも度肝を抜かれた記憶が
 ある。おおよそ今まで見たことのない建物の形態が集まってい
 る会場の姿は、カルチャーショックを受けるのに充分だった。
 その上立体映像である。「うわっ!」と頭を避けながら見る映
 像の体験など勿論したことがなかったので、新鮮であり強烈な
 印象を受けた。たまに気持ち悪くなり、専用メガネを外すと、
 周りの観客が一斉に同じ方向に避けている姿も見れて、面白か
 った。

 そんな歴史ある3D映像も家庭のTVにまで普及し、この秋に
 は専用メガネなしで見られる3DTVが発売されることとなっ
 た。確か東芝からだったような気がするが、間違っているかも
 しれない。メガネなしで飛び出すのは画期的だと思う。

 しかし。である。私のイメージする3D映像と現在の映像は若
 干温度差がある。私のイメージする3D映像は、360度どの
 方向からでも浮かびあがって見える映像。TVが壁面にあると
 いうよりは、床面にあって、ホログラフのように空中に映像が
 浮かび上がる感じのものである。まあ、そう見せるには撮影が
 そもそも不可能っぽいのだが、それが出来ればかなり画期的だ
 と思う。

 そう、まるで模型を眺めるような感じ。全方向から、ある対象
 物を見ることが出来るようになると、これはもう凄い。多分。

 そんな映像が模型の持つチカラとほぼイコールである。実物を
 手にとって見れる点で、模型の方が遥かに優れてはいるのだが。

 模型の大きさは縮尺次第でいかようにも出来る。が、住宅規模
 であれば、1/50程度でつくることが多い。1/30だと尚良い。が、
 置き場所にも困る大きさになる恐れもあり、なかなか1/30でつ
 くることはない。

 CGパースも良いのだが、やはり建築は模型というアナログの
 媒体が適しているように思う。造るのに時間は掛かるが、掛け
 るだけの価値は充分ある。

 さて、そんなコラムを書いているうちに、二人掛かりの3日掛
 かりで造ってきた模型もそろそろ出来そうである。結構な迫力
 に顔も緩む。

 ここからは余談だが、模型の主な材料はスチレンボードと呼ば
 れるものである。薄い発泡スチロールを紙で挟んだ材料が市販
 されている。それを図面を見ながら、切ったり貼ったりして組
 み立てていく。その他にも木の棒を使ったり、プラ板を使った
 り、模型の素材は多岐に渡る。大御所が造る模型ともなれば、
 本当の木で造ったり、アクリルの塊で造ったりする。模型作成
 費用だけでも数百万円を掛ける場合もある。専用の模型部隊が
 居たりもする。勿論模型製作会社なんてものもある。それほど
 に建築模型とは結構奥が深かったりもする。しかし全ての始ま
 りは白紙からの創造である。改めて、建築は奥が深いと感じる
 次第である。

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■編集後記

 TVの地デジ化まで残り一年を切りました。これを機に3D

 TVを買おうという人も居られることと思います。

 はたまた、チューナーだけで済ます人も居られるかもしれま

 せん。因みにCATVの人は、そのままでももう少し現状の
 
 ままで見られる場合もあるようです。

 CATV。ケーブルTVのことです。読み方は大概

 シー・エー・ティー・ヴイ。

 キャット・ビーでも通じなくはないですが、ほぼ通じません。

 ・・・。うちの妻はキャット・ビー派です。最初何を言って

 いるのかが分かりませんでした・・・。

コラム | by muranishi | comments(0)

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