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10.09.01 Wednesday

ある住宅の思考過程(5)

■設計・監理の期間は結構長いものです。そんな長い期間の中

 でも、自分の中で「盛り上がり」があったりします。

 じゃあそれ以外は「盛り下がって」いるのか?という意見も

 出てきそうですが、決してそんなことはありませんから~。

 そんな局面を日本語で「佳境」とも言います。

 今回は主に監理における「佳境」段階でのお話を少ししたい

 と思います。

 盛り上がっているのは、実は自分だけ・・かもしれませんが

 どうぞおたのしみください。
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■ある住宅の思考過程(5)

 今回はシリーズ化の第5弾。ある住宅の思考過程シリーズをば。

 コラムを通して、ある住宅のイメージを固めていきたい。

 今回対象とする建物は大きい。なのでイメージが頭の中を錯綜
 する。よってまとめる/固める必要がある。今回ここで言うイ
 メージとは、主に内部の仕上げに関するイメージである。

 設計当初からある程度のイメージは勿論持っている。が、実際
 に出来上がっていく建物によって、持っていたイメージと実体
 が合っているかを常に検証する必要もある。当初のイメージを
 崩さず、より最適解を求めるため、思考は彷徨う。

 今回の住宅は、全体的にドッシリとした印象を有しつつ、軽快
 な印象も持ち合わせたカタチをしている。カタチは直線で構成
 されているものの、全体の印象はランダムであり、あちこちか
 ら自分の建物が見え隠れする。故に、内部から本体外部が垣間
 見えるシーンが多い。これは、あまり普通の住宅では体験出来
 ない構成である。

 自分の建物内部から本体外部が見えるということは、外観の色
 が内観の色越しに見えるということである。因みに外観は白。
 しかも真っ白。そこには恐らく強烈な陰影が刻まれることとな
 る。

 その陰影は季節と共に移ろい、時間と共に表情を変える。天候
 によっても、その濃淡は変化をすることだろう。中庭には芝生
 が敷き詰められ、夏場には芝生の緑と外壁の白のコントラスト
 が鮮やかに浮かび上がるように思われる。

 それを室内から眺める時、内観は少し落着いたトーンであって
 欲しい。内部も白・外部も白という感じでは、今回の場合、内
 部からの眺めが少し単調になるような気がしている。落着いた
 空間・色調の中から窓越しに浮かび上がる白なり緑なり陰なり
 を見通す。光の照り返しを落着いたトーンの色が吸収する感じ。

 内部空間はどこまでも繋がっていくイメージ。なので、一定の
 ルールに従って、色彩や質感も統一していく必要がある。そう
 しなければ、建具を開け放したとき、折角の繋がり感に水を差
 してしまうからである。ということは、建物のメインとなる居
 住空間であるリビングの色調・仕上げ感が全体を統合する。こ
 こが、全体イメージの終着点であり、発生点となる。

 やや赤味を帯びた上品な桜のフローリング。これが基点となる。
 垂直面に現れる家具も桜。収納扉も桜。キッチンも桜。

 こう書くと桜だらけで、「木!」という感じであるが、割合か
 らすると、4割程度。残る6割は左官仕上げとなる。そして、
 この左官の色が最も重要な気がしている。桜の色と調和しつつ、
 落着きを持った色。いや、調和しつつというよりも、桜をより
 上品に見せる色。決して白ではない。白にすると桜がチープに
 見える恐れがある。もっと言えば、桜が浮きすぎて、全体の調
 和は図れない。と考える。

 自然の木に対する左官の色も自然の風合いであって欲しい。し
 かし、あくまでもクールなイメージで、あって欲しい。

 外に見える白とも調和しつつ、桜を上品に見せつつ、白ではな
 いクールな感じ。まとめると、こんなイメージである。

 考え得るのは、茶系・グレーグリーン系。いずれにせよ、アー
 スカラーが良い。あとは、その濃淡をどの程度に仕上げていく
 か。それによりクールさも表現出来なくなる恐れがあるので、
 非常に重要。小さなサンプルでは、全体に仕上がった時の印象
 と異なるので、少し大きめのサンプルで検討する必要がある。
 一般論として、小さなサンプルよりも、面積が大きくなるほど
 明るく見えるという通説/事実がある。なので、イメージ通り
 とするためには、少し濃いかな?位でちょうど良い。

 概ね方向性は決まった。あとは、リビングの領域と完全に分断
 される部分をどうするかである。こちらはほぼイメージできて
 いる。メインカラーは「黒」。そして対比カラーとしての「白」
 。様々な材料の違いによる黒を演出していく。恐らく出来上が
 りに「ぎょ!」っとされることと思う。なので、こちらのご提
 案が却下されればそれまでではあるが・・。

 自分の中では随分スッキリしてきた。あとは、実物サンプルに
 よるご提案へとステージを移動したい。

 冒険ではなく、確信を持って。10年先・20年先に飽きの来
 ない色合いにまとめることが、佳境段階の重要な役割である。
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■編集後記

 実は誰も見たことがない空間の色や質感を決めていくわけです

 から、提案する側のイメージが固まっていないと、空間が右往

 左往してしまいます。

 私の場合、「映像」でイメージを膨らませるより「文章」で

 イメージを膨らませるクセがあります。

 設計者なら普通は「映像」だと思うのですが、どうしてかは

 自分でも分かりません。

 きっと、空間にストーリー性を持たせたいのかもしれません。

 さてどんな結末を迎えるのか。自分でも楽しみです。

コラム | by muranishi | comments(0)

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