空間工房 一級建築事務所

HOME > MESSAGE
10.08.23 Monday

井戸端会議と全自動洗濯機

■少し前、当工房に浴槽メーカーの方が飛び込みで営業に来られ

 ました。主にホテルやマンションのユニットバスをオーダーで

 造られているメーカー。既製品ではなく、オーダーという所が
 
 興味深い気がしました。

 そのメーカーでは「五右衛門風呂」も造られているとのこと。

 今でも月に平均5~60台出荷されているそうです。その数

 が多いか少ないかは分かりませんが、私は単純に多いと感じ

 ました。薪をくべて焚く、あの五右衛門風呂です。釜の親玉

 みたいなアレです。納入先は農家や山村が多いとのこと。

 時代が変わっても変わらないものもあることを知った出来事

 でした。

 今回はその逆。時代が変わって、変わったもののお話し。

 それではどうぞおたのしみください。
_____________________________

■井戸端会議と全自動洗濯機

 住宅にしろ、ワンルームマンションにしろ、洗濯機置場が必要
 である。

 最近は全自動洗濯機が主流というか、ごく当たり前のものにな
 っている。なので、一昔前の二層式洗濯機に比べれば、置くス
 ペースも省力化している。

 話しは20年前に飛ぶ。

 私が大学で下宿生活を送っていた頃、私が親から持たされた洗
 濯機は二層式であった。お風呂もなく、共同便所(汲み取り式)
 という下宿先だから、洗濯機置場なんて洒落たものは、部屋の
 中には勿論ない。まあ、あったらあったで、洗濯するたびに建
 物ごと揺れていただろうが。置場は部屋内にはなかったが、外
 にあった。下宿人は全てで6人。各自が自前の洗濯機をその置
 場に置く格好だった。雨の日は一部傘をさしながらの洗濯とな
 る。ありえない。

 洗濯機は一応庇で守られている。家電製品なので水は禁物。で
 も洗う人は守りきれない程度の庇だった。

 こう書くと、いつの時代の人間だ?と思われそうだが、誤解が
 ないように書いておく。全自動洗濯機も勿論あった時代である。
 少なくとも、友人の殆ど全員は「部屋の中」で「全自動洗濯機」
 で洗濯をするのが「当たり前」だった。私を含め、この下宿の
 住人が「想定外」なだけである。

 そんな時代背景。

 二層式洗濯機は面倒である。「洗い」が終わると「すすぎ」。
 そして「脱水」。非常に簡単なようだが、「洗い」が終わると、
 一旦水を抜いて、次の「すすぎ」に入るまでまた水を溜める作
 業が入っている。更に、「洗い」の前段階にも水を溜める作業
 があったりする。自動で水は止まってくれないので、ある程度
 水が溜まると自分の手で止めに走る。ようやく「すすぎ」が終
 わったら、水を抜くと同時に「洗い」の層から「脱水」の層へ
 洗濯物を移し変える必要もある。大概の洗濯物なら「洗い」や
 「すすぎ」の途中で、その場所を離れることができるのだが、
 私は何を思ったのか、大学時代には空手部に所属していたので、
 胴着を洗う必要があった。この胴着、ごわっとしていて、ごつ
 い。なので軟弱な洗濯機の底に付いている回転扇に頼ると、数
 分おきに廻らなくなる。なので、私自らの手で攪拌を手伝って
 やる必要があった。・・・。洗濯機だよね?と思いつつ。

 だから、洗濯機が稼動中は殆どその場を離れることができない。
 なんだかしらないけれど、非常に不便な洗濯機に付き合わされ
 ることとなる。

 どれだけ自動洗濯機が「高性能」に見えたことか。単純に羨ま
 しくて涙が出そうだった。いや、実際は一滴も出ていないが。

 そんな洗濯機のおかげで、洗濯機置場にやってくる住人と良く
 顔を会わせることとなる。ジッと洗濯機が廻るのを眺めていて
 も仕方ないので、話しをする。他愛のない話しである。時に洗
 濯機の攪拌を手伝いながら。(今思えば、それを見ていた住人
 はきっと不思議に思っていたことだろう。洗濯中の洗濯機に手
 を突っ込むヤツなんて、そう居ない。)

 そう思うと、もっと昔はどうしていたんだろう。という疑問が
 今浮かぶ。多分、井戸端会議なるものが近所の各場所で執り行
 われていたんだろう。えらく昔の話しだろうが。

 みんなが共同の井戸に洗濯物を持ち寄って、ゴシゴシとこすり
 ながら、噂話や世間話に花を咲かせていたのだろう。

 コミュニティの一つのカタチとして、大事な情報交換の場所だ
 ったに違いない。

 楽しそうではあるが、実際は「洗濯」という主目的があるのだ
 から、そうそう楽しくもなかったかもしれない。夏はともかく、
 冬は井戸水でも冷たかったに違いない。

 洗濯機の登場は、それこそ「待ってました!」の心境だっただ
 ろう。洗濯機端会議をするのは、多分大学時代の私くらいなも
 のだと思う。

 かくして、洗濯は公共の場から個の場へと居場所を移していっ
 たように思う。というか、そうだろう。

 さらに全自動洗濯機により、ボタン一つで始まりから終わりま
 で立ち会う必要がなくなった代わりに、部屋の中に居場所を設
 けてやる必要が出てきたわけである。

 井戸端会議というコミュニティも一つ減り。

 便利なものが増えたことで、失われたものも確実にある。

 現在、ワンルームマンションの計画を立てている途中。洗濯機
 置場を思案しながら、そんなことをフト思った次第である。
_____________________________

■編集後記

 全自動洗濯機も一時はコンパクト化していましたが、最近では

 ドラム式などもあり、結構大きいものが出ていたりします。

 通常の洗濯機パン(640mm角)で大概は納まりますが

 中には、はみ出すサイズのものもあり、要注意です。

 製品の大きさも、空間/スペース確保の大きさに影響します

 ので、家電製品では特に冷蔵庫と洗濯機のサイズに注意しなけ

 ればいけません。

コラム | by muranishi | comments(0)

コメントをどうぞ

空間工房 用舎行蔵 一級建築士事務所
住所:〒602-0914京都市上京区室町通り中立売下がる花立町486
TEL:075-432-3883
FAX:075-334-8051
ALL CONTENT COPYRIGHT 2012(C) KUKANKOBO YOSYAKOZO ARCHITECYS OFFICE ALL RIGHTS RESERVED