空間工房 一級建築事務所

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10.08.18 Wednesday

美術館とダム

■皆さん夏休みはどのように過ごされましたか?

 京都のお盆も16日の五山の送り火で幕を閉じ、今年の夏も

 過ぎ行く季節となりました。

 残暑は「真夏」の暑さをひきずっておりますが・・・。

 地球温暖化は地球のサイクルであって、人間のCo2排出行為

 とは実は無関係という説もあるようですが、原因はともかく

 暑さには閉口します。冬は冬で早く暑くなれ~と思ってしまう

 のですが。

 今回は夏休みに訪れた場所について少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■美術館とダム

 昔、高校生の頃、「ニューヨークに行きたいか~!?」の合言
 葉で有名な「高校生クイズ選手権」に参加した記憶がある。1
 7歳の夏だった。

 嵐山の河川敷に京都の高校生参加者が一同に介して、予選が行
 なわれた。当時の司会者は福留功男さん。

 因みに3人が1チームとして登録・参加する。私のチームには
 学校でも秀才と目される人物を取り込んだ。全てはそいつにお
 んぶにだっこ作戦である。他力本願の骨頂。目標は予選突破。
 自慢じゃないが、体力には自信があった。なので、頭脳はそい
 つに任せて、体力が必要な時は、残る二人でカバーしようとい
 う至極単純な戦略であった。

 そして第一問。「送り火で有名な京都の大文字。さて、京都以
 外にも大文字は存在するでしょうか?」

 丸バツ問題である。当る確立は50パーセント。チョロイ。

 が、そんな知識は当時持っていない。秀才も知らないという。
 京都以外の大文字など見たことも聞いたこともない私達は「バ
 ツ」のエリアにイソイソと移動。目標は予選突破だったが、こ
 の時点で既に目標は「1問目クリア」に引き下げられていた。
 既に「目標」とすら呼べない。「運試し」の領域である。

 そして息つく暇もなく結果が発表される。

 「正解は!・・・まるぅ!!」

 その瞬間、私達の夏は終わった。はやっ!。

 そう、京都以外にも大文字の送り火は存在するのである。「存
 在するなよ~」の心境である。秀才の出番なし。運もなし。

 送り火とはお盆のフィナーレである。迎え火で迎えたご先祖さ
 んを送り火の煙に乗せて送る。そんなお盆。お盆休みに四国の
 香川へ、またまた行って来た。妻のおばあちゃん家への帰省で
 ある。

 うわっ。前フリ、いらんやん!

 今回は、猪熊弦一郎美術館と豊稔池ダムに足を運んだ。

 まずは美術館。四国に帰省するたびに機会があればと思い続け
 ていた念願が叶った。丸亀駅の本当に目の前に存在する美術館。
 あまりこんな立地の美術館は見たことがない。設計は谷口吉生
 氏。公共建築百選にも選ばれた秀作である。香川県内で言えば、
 他に香川県立東山魁夷せとうち美術館も手掛けられている。そ
 ちらは数年前に竣工した当初、足を運んだ。

 いずれも正統派というか、王道的な設計。上品であり、大胆で
 ある。一言で言えば、落着く。その空間構成には学ぶべき所が
 多くあると思っている。風景の切り取り方や、展示場とロビー
 のメリハリの付け方。光の入れ方。高さ関係の操作の仕方。な
 どなど、いずれを取ってみても、シンプル且つ大胆且つ緻密。
 そんな建築である。

 次にダム。現存する日本最古の石積式マルチプルアーチダム。
 国の重要文化財にも指定されている。マルチプルアーチとは、
 アーチ止水壁が複数連なるダム。多連式アーチダムとも呼ばれ
 る。(ウィキペディアより抜粋)。1926年(大正15年)
 着工で、1930年(昭和5年)に竣工。延べ約15万人によ
 って施工されたらしい。石積み造りの威容を放っている。放水
 はしていなかったが、もし放水されたなら、圧倒されることは
 間違いない。その巨大さにも目を見張るものがあるが、造形の
 美しさにも心を奪われるものがあった。

 そんな2つの建造物。

 建築と土木という大きな違いはあるものの、どちらも人工物に
 変わりはない。どちらが優れているとか、勝っているとかとい
 うのにも意味は全くない。そもそも評価基準なんてないのだか
 ら。

 どちらも凄い。というのが至って単純な感想である。

 ただ一つ思ったこと。それを書いておきたい。

 どちらもスケールの馬鹿でかい建造物なので、一概に住宅レベ
 ルに落とし込んで話しをするのには無理があるかもしれないが、
 敢えて無理をしてみる。

 「存在感」のあり方についてである。スケールが大きければ、
 それだけで存在感はいやでも有してしまう。しかし、それが「
 心地良く」なるか「不快」になるかは、見る人それぞれの主観
 にも大きく左右されるだろうが、「造形」に大きく左右される
 気がした。「どうだ、大きいだろう」という威圧的な存在感で
 はなく、「大きいけれども、キレイでしょ」という友好的な存
 在感。観る者を惹きつけるような存在感。

 住宅レベルでもそれは必要だと思う。小さいから存在感がない。 
 というのではなく、小さいけど魅了する。といった感じ。

 造形に住むわけではないのは確かである。しかし、造形がもた
 らす豊かな感じは大切にした方が良いと思うのである。ただ、
 造形に走るのが良いかと問われれば、そうは思わない。造形と
 は何も装飾を施したり、奇を衒ったりする意味ではない。シン
 プルな中にも造形はあれば、複雑な中にも造形はある。100
 人が100人「良い」と思える造形はないかもしれないが、そ
 こを目指す必要はあると思った次第である。

 上述のダムが出来て、かれこれ80年。上述の美術館が出来て、
 かれこれ20年。その歴史的蓄積時間に差異はあるが、いずれ
 も「時代の流行」に流されない、確固たる独自の造形を有して
 いる。

 そんな時代に流されない造形のあり方を改めて考えつつ、設計
 に取組んでいきたいと思う。
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■編集後記

 数年前に四国一周旅行を企てて、実行しました。
 
 その際、高知の足摺岬に向かう途中「大文字山」を発見し

 ました。もっと早く知っていれば、一回戦突破できたのに。

 などと不毛な感想を抱いた次第です。

 ちなみに今回の四国では、映画「きな子」のロケ地にも訪れ

 ました。偶然ではありますが。

 海が一望出来る絶景の場所にロケ地は存在します。

 管理人のおばちゃんに「素晴らしい景色ですね~」と言った

 ところ「毎日見てると、案外飽きるよ」と連れない返事が。

 私の非日常がおばちゃんにとっての日常。それが観光なの

 かもしれません。

 京都のことを少し考えさせられました。

コラム | by muranishi | comments(0)

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