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10.08.11 Wednesday

京都市景観条例改正

■情報が氾濫する世の中です。新聞・市民新聞・タウン誌・本

 TVCM・広告・インターネット・ブログ・ツイッター・ラ

 ジオなどなど。自分が必要とする情報でさえも、多くの情報

 に埋もれて、見えない状況に陥るときがあります。

 アンテナを張ること。それが今の世の中では、一昔前よりも

 重要になっている気がします。

 アンテナを張っても尚、素通りしてしまう情報も多々あると

 感じています。

 きっとそれは、アンテナの張り方に問題があると反省してい

 ます。

 さて、今回はそんなアンテナに引っ掛かった情報から少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■京都市景観条例改正
 
 来年4月に京都市の景観条例が改正される。

 それに先立ち、「景観政策の進化の素案」がパブリックコメン
 トとして公示されている。

 先日、その内容に関する説明会に行ってきた。

 「進化」という言葉をさかんに使われていたが、運用に際して
 続出している問題点や、改善すべき点を汲み取り、条例として
 凝り固まるのではなく、柔軟に見直していくという意味で、「
 進化」という言い回しをしているのだと思う。

 要は、見直しである。

 大きな見直しの柱は4つ。

 1.市民と共に創造する景観づくりに関する仕組みの整備
 2.現在のデザイン基準の更なる充実
 3.優れた建築計画を誘導するための制度の充実
 4.許認可、届出の手続きに関する見直し。基準の明文化など

 4は手続き上の話しなので、直接的に条例内容に関わる話しで
 はない。3は条例で定める基準を越える素晴らしい建築を何と
 かして造って行って貰いたいという内容なので、景観条例あり
 きの話しである。2はマイナーチェンジ的な内容。

 個人的に最も必要と思っていたのは1番。そう、市民が参加出
 来る仕組み創りが必要不可欠と思っていたので、これが加わっ
 たことは喜ばしい。

 トップダウン的に、有識者を交えてこう決めましたから守りま
 しょう。というだけでなく、ボトムアップ的に、地域住民がデ
 ザインコードを定めて、それが市長(役所)に認められれば、
 景観条例よりも優先して運用しても良い。という考え。いわゆ
 る地区計画的な考えを条例よりも優先させましょうという内容
 である。

 問題は、地域住民の範囲だったり、地域住民以外の人々の意見
 の吸い上げをどうするか?だったりするわけだが、一つの大き
 な指針としては、まず必要な内容なので、細かな点はこれから
 詰めて行けば良いように思っている。

 そして一点、その説明会で気になったので、質問してみた。

 質問内容/概要は以下の通りである。

 現在の景観条例を含め、今回の改正にあたっても主眼とされて
 いるのは、主に新築物件をどのように規制していくか?だと思
 いますが、歴史的建造物保存地域などを除いて、各場所に点在
 している既存の京町家を、どう保存・保全・再生していくかが
 見えて来ない気がします。恐らくデザイン基準は京町家をもと
 に作成されていると思いますが、それらがなくなっては元も子
 もない気もします。その辺り、今回の改正では、どうリンクさ
 せていくお考えでしょうか?

 つまり、新築にばかり目を向けていたら、残したいはずの風景
 が消えていた。ということを防ぐ手立てはないのか?というこ
 とを聞きたかった。

 回答はこうである。

 1.点在する京町家を結ぶ線上の景観を条例により「調和型」
   の規制をめぐらすことで、街並みを形成していくことを想
   定している
 2.重要な京町家は、登録文化財に指定するなどして、保存を
   図る。
 3.京町家ファンドにより、助成をすることで、保存・再生を
   促す。

 更なる質問は避けた。というか、議論に発展するので、他の聴
 衆者の迷惑にもなるため、納得したフリをした。

 多分、それでは残らない。条例では残らない。新しい建物のデ
 ザイン規制を図ったところで、残る確証もなければ、既存の町
 家に対する配慮もないと感じた次第である。

 文化財指定にするほどでもない町家はどうするのか?助成対象
 とならない町家はどうするのか?

 どっちかと言えば、そのような町家の方が実際は多いはずであ
 る。現存する町家5万件を全部文化財に登録するなど有り得な
 い。

 結局、新規の建物にどのような規制をかけるか?に重心を置い
 ているので、条例に「既存のまちなみ」を保存する力はない。
 と思う。

 まあ、それは良いのだが。

 とにかく、来年4月には、また条例が改正される。新築のデザ
 インも含め、今後どのような動き(まちづくり)を見せるのか、
 単純に楽しみである。私達も少なからず、景観条例を提出する
 当事者になるのだが、そこで無用の議論は避けたい。そのため
 にも、素案に対する意見を提出しておきたいと思っている。

 今後も何度となく見直されるのだと思うが、果たして昔のよう
 に市民主導になる日が来るのだろうか?因みに、昔は「町式目」
 という地区協定的なもので、住民自らが町内毎にデザイン基準
 を設けていた時代があった。だから軒並みが揃ったり、ファサ
 ードデザインが調和したりしていた。好き勝手に建てないとい
 うルールを越えたモラルが存在していたのだと思う。

 ルールよりもモラル。やはり、それが重要なのかもしれない。

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■編集後記

 実はこの説明会の随分前に、素案を創る上での議論の場が設け

 られていました。それはつい最近知ったことです。

 アンテナの張り方が小さいことを自覚した次第です。

 目の前を素通りしていく情報に、本当に目を凝らしているか?

 と問われれば、必ずしもそうではありません。

 自分のメリットを基準にアンテナを張りがちですが、もう少し

 大きな視野/視点で情報を汲み取るようにしていきたいと思っ

 ております。

コラム | by muranishi | comments(0)

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