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14.10.01 Wednesday

吊りレールとVレール

■いきなりですが、トイレの出入口がドアの場合は、外に向かっ

て開くようにしておく方が無難です。

内開きの場合、スリッパがドアに引っ掛かるから?

風水的にその方が良いとされているから?

いえいえ、答えは簡単です。万一トイレの中で人が倒れた時

内開きだと、倒れた人が邪魔になって扉が開かない恐れがあ

るからです。トイレは通常狭いので。

扉の開き勝手一つにも重要な意味が隠されていたりします。

今回はそんな扉のお話し。

それではどうぞおたのしみください。

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■吊りレールとVレール

今回はググッと身近な話題から。

身近というか、細かい話題。細かすぎる話題。である。

吊りレールとVレール。建具(引戸)の開閉装置的なものであ
る。

その話しをする前に少し前置きをば。

建具の開閉方式には一般的に、ドアのような「片開き」のもの
と襖のような「引戸」のものがある。

引戸は出入りする分だけ開けば良いという利点もある。ドアの
場合、開く範囲に物が置けないという問題もあるが、物置でな
い限り、出入口の前に物を置くことはまずしないので、大きな
問題ではない。言うまでもなく、ドアは西洋の文化。引戸は東
洋の文化である。個人的には引戸が好きである。余程プラン的
な制約がない限り、設計には引戸を取り入れる。少し開けると
いう使い方で、風通しも確保されたりするし、人の動きを邪魔
しない。ドアだと自由兆番でもない限り、出る時か入る時のい
ずれかの時に、自分の体を退かなければいけなかったりもする。

まあ、そんな引戸。大抵は、上下に鴨居と敷居的存在が必要と
なる。襖や障子を思い描いていただければよいかと思う。

しかし、通常の木製引戸の場合、「吊りレール」か「Vレール」
を使うことが多い。まあ、あくまで私達の場合だが。

「吊りレール」とは、鴨居にあたる部分にレールを仕込んで、
引戸の上部に戸車を付ける方法である。イメージ的にはロープ
ーウェイのような形式。下(敷居部分)は扉がブラブラしない
ように、振止めのピンを出しておくだけ。このピンは常に扉の
下に隠れて見えない。なので、床に敷居のような見切りは必要
なく、引戸を開けた時には床が一繋がりになる。余計なものが
なくなる感じで、バリアフリーともなる。

一方「Vレール」とは、扉の下に戸車が納まり、敷居の代わり
にVの字状の金物レールが取り付けられる方式。上部は通常の
鴨居的な溝でも良いし、扉に平たい金属板(フラットバー)を
垂直に仕込んでおいて、鴨居溝を極端に細くするという方法も
ある。この場合、Vレールが床見切りにもなるので、部屋と部
屋・部屋と廊下などの床仕上げが変わる場合は、一石二鳥の役
割を担ってくれる。

どちらが良いか?というのは、あまりなく、一長一短がある。
上述の通り、吊りレールは床が一続きに出来て段差も全くない
状態が実現できる。そういった意味では、Vレールにはない魅
力がある。扉が重い場合も、吊りレールの方が若干軽く開閉で
きるというメリットもある。敢えてVレールのデメリットを上
げるならば、開閉時にゴロゴロと戸車が転がる音がすること。
吊りレールでも音はするが。コレに対する対策としては、比較
的音が少なくなるサイレントレールという商品も存在する。

じゃあ総括すると、吊りレールの方が良いじゃないか。という
感想を持たれるかもしれない。確かに通常の巾の建具で、片引
き(一枚)であれば、吊りレールの方が良いかもしれない。し
かし、2枚引きや3枚引きとなると、振止めの観点から、特殊
な触止め機構を持ったものでない限り、物理的に不可能となる。

ここが考えどころ。特殊機構の触止めを使えばよいと考えるか、
素直にVレール方式にするか。

これもどちらが良いという評価基準はない。特殊機構とはマグ
ネット。扉が近付くと、マグネットによって、床に埋められた
ピンがニョキっと出てくるものである。ただ、扉を開け放した
時に、そのピンの存在は完全には消えない。床内に納まっては
いるが、存在はアリアリと分かる。色にも巾がないので、床色
によっては目立つ。そして最大の弱点は、ピンがマグネットで
くっつくことで、その度に音がする。気にならないといえば、
気にならない。気になるといえば、気になる。そんな感じの音。
カチャっと。

とは言っても、Vレールだと3枚引きなら3本並列する。2枚
引きなら二本。目立つと言えば目立つ。

なので悩みどころなのである。

結論的には、空間の雰囲気を邪魔しなければどちらでもOKと
なる。そして扉の重さによっても左右される。重ければ吊りレ
ールを選択したほうが無難かもしれない。

あと、引戸で注意すべき点は、閉める際に戸当りと引戸が衝突
して生じる音や跳ね返りの問題。戸先側にクッション材をつけ
るとか、ソフトクローズ機構を持ったレールを使うとかすると、
それらの問題は解消される。ただ、機構付きのものは単純に高
いので、乱用するとコストにはね返るので要注意。もう一つ注
意点を挙げるとすれば、閉じた際の壁との隙間。通常は床と壁
の取合い部分に巾木というものが存在する。なので、引戸が完
全に壁から持ち出されたパターンの場合(アウトセット)は、
巾木の厚み分、外へ出す必要がある。将来的な扉の反りを考慮
して、通常は壁から10mm程度離す。巾木の厚みが7mm程
度。すると、巾木と扉のクリアが3mm。これだと心もとない
ので、5mm程度はクリアを確保する。すると、壁と扉の隙間
が12mm程度となる。気にならないといえば気にならない隙
間かもしれないが、ある程度はケアしておく必要がる。なので、
隙間埋め用に縦枠を仕込むなどをする必要がある。

既製品を使えば、恐らく全て考慮されているので、細かい配慮
はほぼ不要である。が、形状・デザイン・色・質感など全てに
おいて「既製品」の感じは払拭できない。どこに重きを置くか
によるのだが、空間は一品生産なので、空間の統一感を重視す
るなら、建具も造作とした方が、しっくりくる。と思う。

考えるべき点や施すべき内容・注意すべき点は多いかもしれな
いが、それらがクリアできる手法はあるのである。

出来上がってしまえばなんてことはないのかもしれない。なん
てことはない裏には、様々な検討が潜んでいるのかもしれない。
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■編集後記

既製品は本当によく考えられています。ただ、主に機能面で。

という感想ではあるのですが。要は、使っている金物やパーツ

を良く研究していけば、造作にも応用が効く範囲のものもあり

ますので、折角家を建てるなら一から造ったほうが良いと思っ

ています。

しかし金物やパーツ類の数は非常に多く、選定するのも容易で

はありません。

建築に携わる業種は様々ありますが、建具を造るのは建具屋さ

ん。私達も時に建具屋さんと相談しながら、実際の金物を決め

たりしています。

それもまた一品生産ならではの大変さであり、楽しさでもあり

ます。

コラム | by muranishi | comments(2)

コメント / トラックバック2件

  1. こね より:

    大変参考になりました 更にお知恵を賜りたく お願いします 我が家リビングと寝室(畳をフローリングに変更済)の間に三枚引き戸(襖)があるのですが、吊り扉に換えたいと考えています 今の雰囲気を変えたくないので この扉を使って吊り扉にできるのでしょうか?また敷居部分を段差無くするために 床材を敷けばいいのでしょうか?ぜひお助け願います

  2. muranishi より:

    コメントありがとうございます。
    現状の襖を使って吊戸にされたいとのご相談ですね。
    結論から申しますと、現状襖を使っての変更はかなりの加工を伴うため
    コストが掛かるように思われます。
    吊戸にするには建具上部に吊戸車設置+枠(鴨居)側に専用のレール金物を
    設置する必要がございますのと、建具自体がぶつかっても揺れにくくするために
    振れ止め金物を敷居部分に設置する必要がございます。
    簡単な回答で恐縮ですが、実際には依頼される方に現地を確認していただく
    必要がございますこと、ご理解くださいませ。

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