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10.08.04 Wednesday

登録有形文化財制度

■文化庁の定める文化財的な種類には12種類あります。

 国宝から埋蔵文化財、世界遺産に至るまで、その種類は様々

 です。普段あまり馴染みはないですが、国宝に指定されている

 建造物は今年の7月現在、全国で215箇所(263棟)ある

 とされています。

 京都でいえば、銀閣寺や平等院など。

 まあ庶民にとっては、「見る」対象でしかないのですが。

 では「使える」対象としての文化財は存在しないのか?

 実はあります。

 今回はそんな内容も少し絡んだおはなしをすこし。

 それではどうぞおたのしみください。

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■登録有形文化財制度

 少し個人的にまとめておきたいので、書いておく。

 「登録有形文化財制度」「文化的景観制度」「民族技術・民族
 文化財制度」の3点について。

 え?何のこと?と思われた貴方。なんだか興味がないなぁ。と
 思われた貴方。私も貴方サイドのモチベーションしか持ち合わ
 せておりませんので、特に細かい解説をするつもりはありませ
 ん。(いや、貴方のモチベーションは知りませんが・・・)

 なんだか制度内容も難しい上に、普段生活している分には全く
 関係のない話しにも思えますので、敢えて「ココ」で書く必要
 性はないとも思うのですが、内容を知ると、実は身近だった。
 という経緯もありますので、「ココ」に書いておきます。専ら
 建築に関わる事柄についてではありますが。

 まずは「登録有形文化財制度」

 文化財なんて国(文化庁)が決めることじゃないの?古いお寺
 や仏像のことでしょ?と思っていた。が、2005年に文化財
 保護法の一部が改正され、「緩やかな」文化財のあり方が「あ
 り」となった。

 文化財に指定されると「釘一本打てない」的な迷信が巷にはあ
 るかと思う。が、この制度の考えは「建築を使いながら活かす」
 ものである。「使う」ことが出来る画期的な制度。登録後の改
 造も禁止はされていない。ただ、外観の4分の1以上に手を加
 えるときは、届出が必要という縛りは設けられている。言い換
 えれば、4分の1以下なら届出は不要ということである。

 選定の基準は、大前提として「築50年以上」として
 一、国土の歴史的景観に寄与しているもの
 一、造形の規範となっているもの
 一、再現することが容易でないもの

 この3つのうち、一つでもクリアしていれば良いとされている。

 なんだかどれもとっつき難い表現になっているので、容易には
 クリア出来ない気がしないでもない。が、実はそうでもない。
 例を挙げる。

 一番目。国土の歴史的景観云々。そんなの誰が決めるの?答え
 は、その建物の所有者である。例えば「あのレンガの家を曲が
 って」など、人に道を説明する時に、目印になる建物。まちの
 人の共通認識が出来る建物であれば良いとされている。

 二番目。造形の規範云々。有名な建築家の設計だったり、有名
 な施工会社の施工だったり、その地域の手本となる建築だった
 りすれば良いとされている。

 三番目。再現することが云々。もう一度建てるのが困難な技術
 が用いられていたり、優れた技能で建てられたもの。実は、第
 二次世界大戦前の建物であれば、ほとんど当てはまるとされて
 いる。なぜなら、大工さんの技術はその頃がピークとされてい
 るので。

 恐らくだが、戦前の町屋であれば、3番目の基準をもってクリ
 アできる。と思う。

 じゃあ、仮に登録されたとして、所有者にメリットはあるのか?

 どうだろう?改造できるとしても、建替えは無理。使えるとし
 ても、簡単に壊せない。メリットなどなさそうである。(まあ
 実際には解体可能のようだが。)

 そう。所有者のメリットは特にない。今年5月現在での全国登
 録数は約8000件であることを鑑みても、推測できる。なぜ
 なら、例えば京町屋の既存件数は約5万件と推定されているが、
 京都市内で平成20年現在登録されている件数は243件に過
 ぎない。個人住宅に限って言えば、もっと少ない。

 基準は緩やかだし、登録後に使うことも許されている。なのに、
 登録数は少ない。

 これは、この制度自体が広く知られていないことも一つの要因
 だろうが、例え知ったとしても活用する人の割合が少ないこと
 も大きな要因だと思える。

 メリットがないから登録しない。

 この一言に尽きるのではないだろうか。

 それでは何のための制度なのか。という気がしないでもない。
 文化財はお上が決めるもの。という意識が根本的に間違ってい
 る。とも思う。

 ここはひとつ、意識の転換が必要だと思う。

 経済活動的に言えば、古い建物が残るより、新しい建物を建て
 て雇用を創出し、新しい技術を産み出し、新しい景観を創出し
 た方が、経済も活性化するではないか。という考え方。

 文化的に言えば、どんどん壊していくより、古い建物を残し、
 そこに蓄積された技術を守り、継承すると共に、歴史(時間)
 が形成してきたまちなみを後世に伝え、保護したほうがよいの
 ではないか。という考え方。

 どっちが正解・不正解というのは、言うまでもなく、ない。双
 方正論だし、間違ったことを言っているわけではない。

 では、なぜ相容れないのかが、問題なのだと思う。

 そもそも相容れる余地などないのだろうか?

 「ここは、残す地区。ここは、新しくする地区。」とすれば、
 双方の意見が両立できるかもしれない。が、出来上がるであろ
 う街並みは、奇妙なものになる。そして、「地区」を勝手に振
 分けられるのも、住民にとってはたまったもんじゃない。

 両者に折り合いをつけつつ、住民にも理解が得られる仕組みが
 あれば良いのだろうが、そんなものはない。

 かくして、様々な論理に従い、壊され、残され、という状態で
 現状の更新が続けられる。

 人口の増加/減少のように、建物も増加/減少をするのだと思
 う。高齢化社会は問題が多そうである。では、高齢化建物はど
 うか?人間と同じく、手入れや修復が必要なことは間違いない。

 話しがまとまらない。

 「文化的景観制度」「民族技術・民族文化財制度」についても
 述べるつもりだったが、それは次の機会にする。

 話しをまとめる方向は、最初は以下の予定だった。

 文化財は住民が決めること。というやり方もある。なので、そ
 の制度を活用することで、まちなみが保存・活用されるのでは
 ないか?それが、今後の社会には必要だと思う。

 というような締めくくり方を想定して、書き始めた。

 が、事実はそううまく話しが運べそうにないという感じがして
 きた。書いている途中から。

 全ては経済的メリット・デメリットに大きな比重が掛かってい
 る点にある。まちなみを保存することは、長い目でみれば、ま
 ちなみが一つの観光資源に化ける可能性を秘めていることも考
 えられなくもない。しかし、前回のコラムでも書いた通り、人
 は観光に寄与するために生活しているわけではない。遺跡に住
 むわけにはいかないし、住みたいとも思わないのが実情である。
 見に行く/訪れるという非日常の対象としては、そんな場所が
 あって欲しいとしても、そこが日常の領域になるのは、好まし
 くない。これが、誰しもが持つ本音かもしれない。

 良好なまちなみ。文化的資産を有する建物。などという概念は、
 おおよそ想像がつく。それを経済活動という実体とどう結びつ
 けるか?が大きな課題であると思っている。
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■編集後記

 まったくもってまとまりのない文章になりました。お許しを。

 文化財はそんなに身近じゃないほうが、なんとなく価値があり

 そうな気もしますが、実は「まち」によっては、住民主導で

 文化財登録100を目指す運動をしている地域も存在します。

 ひとつの町興しの例と言えるかもしれません。

 過疎化が進む地方地域によっては、無から有を生み出す一つ

 の策でもあります。

 そう。住民が本気にならない限り、ムーブメントは起こりませ

 ん。本気になるキッカケは、やはり「経済活動」と大きく関わ

 っているという事実もあるようですが・・。

コラム | by muranishi | comments(0)

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