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10.02.17 Wednesday

ずっと居たい場所

■誰しも、お気に入りの場所や土地・風景といったものがある

 と思います。

 京都にも四季折々に、桜が見事な場所や紅葉の素晴らしい場所

 お寺や神社といった、誰かのお気に入りの場所がそこかしこに

 存在しています。

 今回は京都に在る「住宅」で、私のお気に入りとでもいうべき

 場所をご紹介します。

 そこから見えてくるものは・・・?

 それではどうぞおたのしみください。
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■ずっと居たい場所

 住宅を設計をする上で、そこが「ずっと居たい場所」に出来る
 かどうかは非常に重要なポイントとなる。

 帰りたくなる家。などというキャッチコピーもあるが、それで
 はどんな家が「ずっと居たくなる」のか。言葉で書くと「居心
 地が良い」「落着く」「寛ぐ」「安らぐ」「和む」などの単語
 が浮かび上がる。いわば、設計を進める上ではキーワードとも
 なる言葉である。

 そういった空間には、一体何が宿っているのか。

 自分基準ではあるが、書いてみたい。

 今まで設計をした住宅以外で、居心地が良いと思っている場所
 が2つある。それは誰でも訪れることが出来る。いずれも京都
 に存在する。

 一つは、河井寛次郎記念館。陶芸家の河井寛次郎が、製作の場
 として実際に生活していた住宅である。設計は河井寛次郎ご本
 人。

 もう一つは、哲学の道沿いにある、よーじやカフェ。昔の宝石
 商が住んでいた住宅を、油取り紙で有名な「よーじや」がカフ
 ェとしてコンバージョンさせた空間である。恐らく原型そのま
 まに、少し手を加えた状態である。設計者は不明。

 いずれも古い。築年数は知らないが、昭和初期頃の古さである。

 単に懐古的な空間なので居心地が良いとも言えない。懐古的空
 間は上記以外にも数多くある。

 では、何が「ずっと居たく」させるのか。

 できるだけ客観的に書いてみたい。(自分基準だが)

 両者に共通点はあまりない。前者は薄暗く・後者は明るい。前
 者は吹抜けがあったり、部屋が入り組んでいる印象があるが、
 後者はシンプルで、特に設計上工夫らしい工夫はない。敢えて
 共通点を挙げるならば、木造2階建てであるということ位かも
 しれない。

 不思議である。自分が何に惹かれているのか。

 シチュエーションも前者は史跡名称の地ではなく、後者は哲学
 の道という観光スポット。かといって、哲学の道が建物の中か
 ら見れるわけでもない。が、置かれている状況すら相違点があ
 る。

 そしてもう少し掘り下げて考えてみた。

 何が魅力なのか。

 今、思うのは、どちらも「生活/生活のシーン」が想像出来る
 という点。実際に住宅として機能していたのだから至極当然の
 ことなのだが、「生活」していたのは、少なくとも最近ではな
 い。昔である。

 昔と今では生活様式も住宅設備も違うはずである。昔は不便な
 ことが、現代では便利になっているし、それが故に空間も変わ
 ってくるはずである。が、両者とも現代でも充分に「生活」す
 ることを容易に想像させてくれるのである。

 生活感が滲み出るのではない。滲み出る生活感。即ち、生活し
 やすそうだな~。という印象・感覚。恐らくそこに惹かれてい
 るのかなと思う。

 古い建物は、一概には言えないかもしれないが、生活しにくそ
 うだな~。とか、古臭いな~。とか、暗くていやだな~。とか
 思ったりする。

 その感覚が両者にはないのである。

 考えてみると、それは非常に重要なポイントかもしれない。

 何年経っても古びない空間。何十年経っても、その時代の生活
 に合わせることが出来る空間。何百年経っても、嫌味というか
 個性の強すぎない空間。

 そんな空間を創っていくことが、実は居心地良く、落着き、寛
 げ、安らぎ、和む空間に繋がるのだと思う。そして「ずっと居
 たい」と思わせるのだと思う。

 今一度、自分自身に問い掛けながら、数十年・数百年先でも皆
 の心に響く空間。生活出来る空間を設計して行きたいと思う。

 その「芯」や「核」となる本質の部分がしっかりしていれば、
 どのような住宅でも、長期優良住宅を凌ぐことができるのでは
 ないか。と考えている。
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■編集後記

 住む場所を決めるとき、駅から徒歩何分とか、近くに買物を

 する場所があるかとか、学区はどこかなどといった条件が

 生活をしていく上では非常に重要なポイントになったりします。

 そして、住む場所・土地が決まったら、どんな住宅にするか

 が次の焦点となってきます。

 何十年も先のことを考えて、住宅を建てる人は稀かもしれませ

 んが、住宅や建物は何十年も先まで建ち続けます。

 その先に何があるか。それは誰にも分かりません。でも、変わ

 らない本質を大事することで、何十年先であっても、建物は応

 えてくれる気がします。

 その場しのぎではない本質。その部分を見極めることが設計者

 の大事な役割でもあると思います。

コラム | by muranishi | comments(0)

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