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10.07.30 Friday

建物の価値

■建物とは、何であれ、ある明確な目的を持ってこの世に

 誕生するものだと思います。

 その目的は、価値という言葉にも置き換えられるかもしれ

 ません。ただ、常に目的と価値はリンクするわけではない

 と考えています。

 なんのこっちゃサッパリ分からん。という声も聞こえてき

 そうですが、これを読めば「すこーし」分かって頂けるか

 もしれません。余計分からなくなるかもしれませんが・・。

 それではどうぞおたのしみください。
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■建物の価値

 今回も思いつくままに書いていく。

 建物の「価値」とはなんぞや?という視点から少し。

 価値は人によって変わる。人によって物差しが変わるからであ
 る。

 そんな中で、敢えて分類を試みる。個人的な分類なので、なん
 の根拠もない。

 まず、文化的・歴史的価値。これは分かりやすいかもしれない。
 古くても価値がないものもあるかもしれないが、数百年の歴史
 をくぐり抜けてきた建物は、それだけ手入れがなされ、頑丈で、
 その界隈のドンというか、シンボル的な存在感を持っている。
 お寺や神社は言うまでもなく、その時々の職人の技が集結され
 た建物は、それだけで文化的価値を持つ。最近出来た京都の迎
 賓館などは、決して古くないが、日本のトップ職人が腕を掛け
 て創り上げたという意味では、技術の継承・伝統の保存にも重
 要な役割を担っているように思う。国賓を迎える施設だからこ
 そ成し得たのかもしれないが、平成の技を後世に伝えるには、
 このような機会がなければなかなか出来ないプロジェクトであ
 る。そういった「時代の象徴」には文化的価値もあり、受け継
 がれていくことで歴史的価値も付加されていくのだと思う。

 次に資産的価値。商業施設や賃貸マンションなどはこの部類に
 入るだろう。いわゆる収益物件。単純に新しければ人が集まる。
 築15年よりも新築に人気があり、同じ価格設定であれば、多
 くの人は新築を選ぶ。しかし、建物が常に新しくあり続けるこ
 とは物理的に不可能である。時間が1年経過すれば、築年数も
 1年増える。そこで家主さんは、資産価値(集客)をあげるた
 めに、改装を施す。古くなった壁紙を新品に取替え、見た目の
 新しさを保つ。若しくは間取りを変えたり、設備機器を入替え
 ることで、時代のニーズに合せようとする。しかし、これは「
 更新し続ける」という作業が欠かせない。仮に更新を途絶えさ
 せると、やはり年々集客が現象する状態に戻る。即ち資産価値
 が減る。追いかけっこである。

 次に存在価値・必要価値。そこになければならないもの。住宅
 がこれにあてはまる。生活をしていく上での各個人や家族にと
 ってのベースであり、自然環境から身を守り、他人から身を守
 り、安全・安心に暮らしていく基本の場所としての価値。勿論
 資産価値的側面も持ち合わせるが、あくまでも生活が主体であ
 ることは間違いない。そこに存在することが必要という意味で
 は、病院や診療所・福祉施設もあてはまるかもしれない。

 更に公的価値。図書館や美術館・博物館や映画館も入るかもし
 れない。商業施設でもあるが。住民が利用し、知識や教養を深
 めたり、娯楽として楽しんだり、趣味として通ったりする。不
 特定多数の人が利用出来る公的な建物。大学や小学校などの教
 育機関もここに入るかもしれない。

 価値の分類は上記に限らないとは思う。また、一つの建物が複
 数の価値を有することも多々あるだろう。他にも考えれば色々
 出てくることと思う。

 さて、何が言いたいか。

 建物にはその性格や用途によって、なんらかの多様な価値基準
 が存在しているのだと思う。そして、その価値が失われたとき、
 悲しいことに壊される運命も持っている。

 カタチあるものいずれはなくなる。これは世の常である。価値
 が失われずとも、老朽化による取り壊しが避けて通れないのも
 事実としてある。が、中には老朽化を待たずして、価値の喪失
 による消失が街中を見ていると少なからず存在する。

 しかしまた一方で、価値の入替えによって存続を続ける建物も
 ある。廃校がミュージアム化したり、町屋がレストラン化した
 り、ホテルが大学寮化したり、ショッピングセンターの一部が
 個人の倉庫化したり。

 では、その境目は何なのか?壊される建物と価値の入替えが図
 られる建物の差は何か?

 それは住民の声だったり、資本家の目の付け所だったり、経営
 者の頭の切り替えだったりするのだと思う。

 設計者は何故そこに入っていけないのか?

 入っていこうとしていないのか。ノウハウがないのか。はたま
 た設計者の仕事ではないためか。

 いかに優れた(と思える)建物も、活かせる道があるのに活か
 されないまま、世の中のサイクルに取り込まれて姿を消すのは、
 本来「無駄」なことだと思う。もっといえば、勿体無いことだ
 と思う。

 その建物の価値は、その建物の所有者が決める。当たり前のこ
 とである。そこに他人が入る余地などない。というか、入って
 貰っては困る。私が所有者の立場なら、そう思う。

 でも。もし、視点を変えるキッカケだけでもあれば、多少は耳
 を貸すかもしれない。それが本当に価値があると判断すれば、
 の話しだが。

 そして設計者として、こう思う。新築であれば、その建物の寿
 命が尽きるまで残る設計をしたい。リノベであれば、その建物
 の価値が見直される設計をしたい。そして「隙」があるなら、
 頼まれなくても価値の見方を変えるキッカケを提供したい。そ
 れが設計者の役割でないのなら、その意識ごと変えてしまいた
 い。
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■編集後記

 建物の価値と同様に、設計者も何らかの価値を求められて

 いると思います。それに応えるのが、絶対条件でもあります。

 その価値は依頼者によっても変わります。建物の価値が変化

 するように。

 私達が注意しなければいけないのは、設計する建物の価値を

 最大限上げることです。どんな指標で上げるか?それが重要

 だと思っています。どんな指標を持っているか?それも大切
 
 かもしれません。

コラム | by muranishi | comments(0)

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