■とある大御所建築家が本に書いていました。
飛行機で海外に行くときに、いつも悩む事項がある。と。
搭乗後の記載用紙に「職業」記入欄があるけれども、果たして
「建築家」と書くべきか「経営者」か「自営業」か「教授」か
「一級建築士」いや「設計者」か「デザイナー」か・・・一体
私は何者なのか?と。
そして、結論としていつも「自由業」と書いている。と記され
ていました。
大御所には大御所の悩みがあるようです。悩みと呼ぶ程のこと
でもない気がしますが・・・。
いっそ職業は「社会人」でもいいんじゃないかと思ってしまい
ます。
まあ、深くは考えないことにします。
飛行機に乗らずとも、「職業」を記載する必要性に迫られる時
が、生活していると多々あります。
私ですか?それは編集後記にてお話ししましょう。
それでは、コラムに参ります。
どうぞおたのしみください。
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■5ドルで何が出来るか?
なんとも建築と全く関係のないタイトルで恐縮である。
ただ、最終的には建築と関係する話しに収斂する予定なので、
ご容赦願いたい。
今回は、ひょっとしたら既に読まれている方もおられるかもし
れないが、「20歳の時に知っておきたかったこと/スタンフ
ォード大学集中講義/ティナ・シーリング著/高遠裕子訳/阪
急コミュニケーションズ出版」という本を読んでいて思ったこ
とを書いてみたい。
因みにいつもの本屋ではない本屋さんで買った。建築専門書コ
ーナーがない本屋さんだったので、「何か新刊でも読もうかな
~?」と思って、たまたま目についた本である。まあ、どうで
もよい余談だが。
この本。主に物事の視点を変えて見るという内容で書かれてい
る。タイトルの通り、スタンフォード大学の講義で実際に行な
われたレクチャーなり課題なりを通して、いわば学生相手に説
かれたものではある。しかし、実際は学生よりも社会人が読む
に値する本だと思っている。個人的には。
その中に、5ドルを使って何が出来るか?を実践形式で行なっ
た講義内容が書かれていた。
課題は、こうである。
「与えられる時間は5日間。与えられる金額は封筒に入った5
ドル。時間の使い方は自由。但し、封筒を開けた瞬間からは、
使える時間は2時間のみ。5ドルを最も増やせたチームの勝ち」
さあ、貴方ならどうやって5ドルを増やしますか?
宝くじを買うとか、競馬に掛けるとか一発勝負に出る人もいる
でしょう。元手は5ドル。日本円で言えば約500円。
普通に考えれば、5ドルに目/思考がいって、それを使って何
かしなければいけない。と思ってしまう。
私が咄嗟に思ったのは、家庭教師をするとか、運転代行などの
ナンデモヤをするといったことだった。ただ、そんなに上手い
タイミングで確実に家庭教師の仕事を得られるとも思えないし、
2時間では増やせる/得られる金額も限界がある。
私の考えはさておき、最終的に最も成果を挙げたチームは、6
50ドル。日本円で約65,000円。元手の130倍だった。
数チームを除いて、元手に手をつけたチームは皆無。中にはナ
ンデモヤ的な発想のチームもいた。しかし得られたのは数百ド
ル。650ドルには届かない。
またあるチームは、学生会館の目の前で、自転車の空気入れを
一回1ドルで商売を始めた。客は集まるが、伸び代が少ない。
制限時間は2時間である。そこで、「無料」として、気持ちの
金額を貰う策に打って出た。すると、1回1ドルよりも多い報
酬を受けたのである。「無料」なのに。ただ、結果は数百ドル。
これまた650ドルには届かない。
650ドルを稼いだチームの発想。ここに書いてしまうと、出
版社から怒られそうなので、書かないが、かといって出版社の
回し者でもなんでもないことを付け加えておく。
つい5ドルに目がいきがちであるが、実はそこに落とし穴があ
るという話しである。極端な話し、これは5ドルだろうが、た
だのゴムバンドだろうが、大した違いはない。と述べられてい
る。そこに視点を向けてしまうか否かに運命の分かれ道がある
という。全ては発想/着眼点/アイデア次第で、価値を創造も
するし、大きくもすれば、小さくもするという内容だと思った。
まだ読み始めたばかりなので、この先に何が書いてあるかは知
らない。ただ、楽しみではある。
と、ここで終わるとただの本の紹介になってしまうので、この
コラムの意味/意義に欠ける。このコラムの意味/意義は何?
と問われると、それはそれで困るのだが、敢えて言えば、単純
に個人的思考の備忘録である。
先を続ける。というか、話しをまとめる。
ひょっとして、5ドルで都市は変わるんじゃないか?変えられ
るんじゃないか?と凄く大それたことを思うのである。
私達に与えられた時間は2時間ではない。5ドルを与えられて
いるわけでもない。ましてや、課題を誰かから出されているわ
けでも何でもない。
課題は自ら生み出す。というか、掘り起こす。それが、学生と
社会人の違いかもしれない。いや、違うかもしれないが。
今の都市の現状。過去のいくつかのコラムでも書いてきた通り、
私達なりに思うところがある。その思うところに対する対策な
り行動なりは、誰かがやってくれるのを待つという選択も勿論
ある。一設計事務所が対峙/格闘してなんとかなる問題でもな
いので、静観する若しくは見てみないフリをするというのもア
リかもしれない。若しくは、既に動いている団体なり組織があ
るので、そちらに任せるという選択もある。
私達が考える課題が、本当の課題かすら怪しいかもしれない。
しかし、実際に取組んでいる団体なり組織があることが分かっ
た。そこに参加させて貰うのも一つだと思う。
ただ、調べて分かったことだが、其々に其々の理念があり、お
互い相容れない部分もあるらしい。恐らく、大筋の理念が向い
ている方向は同じだと思うのだが、手を組まない。というか、
合併しない。
ある意味、企業と同じなのだろう。同じ液晶TVを色々な会社
が造っている感じに似ている。其々に独自性があることで、競
争原理が働き、技術革新が起こったり、価格競争が起こったり
して、消費者としては喜ぶべき仕組みである。
しかし、相手は都市である。その点を考えれば、相容れない思
いを横に置いておいて、大きなウネリを生み出すことの方が先
決なのではないか?と単純に思うのである。
そのあとで、技術革新的なものや競争原理的なものがいくら生
まれても構わない。のではないだろうか?
まあ、何について述べているのか、これを読んでいる方にはサ
ッパリ分からないと思うので、軽く触れておくと、都市の景観
をどう保存・再生していくか?という視点について述べている。
私達が最終的に目指す地点は、もう少し先にあるのだが、話し
がややこしくなるので、止めておく。
そんな課題。実情は、やはり資金面にあるらしい。そりゃそう
だ。まあ、考えるまでもない。資金をどう調達するか。そこに
皆の視点/思考が集中している。
個人的に考えるのは、冒頭で述べた5ドルからの発想。視点を
変える作業/工程が今は必要だと感じている。個人の力ではど
うしようもないので、人との繋がりが必要。地域との繋がりも
必要。行政との繋がりも、これまた必要。大きなウネリが生み
出せるか否か。それは着眼点と発想に掛かっているような気が
今はしている。
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■編集後記
私の場合、職業欄には「自営業」と書くようにしています。
最も当たり障りのない感じで。ま、職業に貴賎なしという言葉
もありますので、こだわっていません。
何かに限定されるのも窮屈なので。
そういう意味では「自由業」というのも、自由な感じで良い
のですが・・・。
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