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10.07.26 Monday

厚み

■何気ない言葉に癒されたり、傷ついたりするのが人間だと

 思います。・・・いきなりですが。

 普段使っている物の中にも、何気ない部分が使い易かったり

 気になったりする時があります。

 そして建築に於いても、何気ない部分がどうなっているかで

 受ける印象が変わったりすると思います。

 今回は、そんな何気ないお話し。

 何気なく、さりげなく、というのは中々難しいものですが。

 それではどうぞおたのしみください。
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■厚み

 今回は凄くミクロな視点でのお話し。

 物の厚みについて少し書いてみたい。

 建築における物の厚み。物と言っても色々ある。壁・床など半
 ば構造的な物から建具・家具など意匠的な物に至るまで、建物
 を構成する物/材料は多岐に渡る。数えたことはないが、軽く
 数千点を超えるのではないだろうか。

 そんな数ある材料の中で、私達が最も気になるというか、気に
 するのは「見えてくる部分」だったり「直接触れる部分」だっ
 たりする。

 分かりやすくするために一例を挙げる。何度もこのコラムで取
 り上げている「窓廻り」。そして内部の木製建具廻りについて。

 通常、窓や建具の廻りには「額縁」や「枠」と呼ばれる物があ
 る。壁と開口部が取り合う箇所なので、何らかの「見切り」と
 呼ばれる、仕切り/区切りを入れる必要が、通常はある。通常
 はと書いたのは、それらを入れないこともあるためである。例
 えば、壁に開口が開くだけの場合、壁の表裏と小口を同じ材料
 で仕上げれば、特段見切りは必要なくなる。引戸が設けられる
 場合も、壁から完全にオフセットさせれば、同様の原理で見切
 りは必要がなくなる。但し、壁と引戸の間に隙間(クリアラン
 ス)が必要なため、場合によっては何らかの隙間埋めを施す必
 要が生じる。

 では、開き戸(ドア)の場合はどうか?

 壁の小口に直接兆番などを付けて、ドアを吊込むという方法も
 無くはないが、これも「戸当り」的なものがないと、閉めたと
 きに隙間が生じるので、普通はあまりしない。余程気をつけな
 いと、下地の枠(木)と壁のボードとの間にクラックが生じる
 ので、枠無しの納まりはあまりしない。全て(壁の仕上げ)を
 木で行なうとかといった特殊な場合を除き、通常は、扉枠を付
 けて、そこに建具を吊りこむ。戸当りも付ける。

 設計事務所の場合、というか私達の場合、既製品の建具を使う
 ことは、まずしない。なので、既製品の場合は今回は横におい
 ておく。あくまで造る前提の話しとして進める。

 さて、この枠材。単純に薄くすると、後々反ってくる。なので
 少なくとも25mm程度の厚みが必要となる。当初は、その枠
 の厚みをそのまま見せていた。それはそれで問題なく納まるの
 で、良いのだが、その枠の存在を限りなく無くしていきたい場
 合、25mmという厚みが気になり始める。

 それぞれの設計者にはそれぞれの考え方があるので、正解は無
 い。が、私の場合、見える厚みを10mmとする工夫をしてい
 る。見える部分だけなので、実際の材料の厚みは25mmだっ
 たり30mmだったりする。企業秘密でもなんでもないので、
 方法を述べるのはやぶさかではないのだが、文章では書けない
 ので、書かない。見える厚みを5mmとすることも可能である。
 しかし、5mm見えるのなら見せない方が良い気もするので、
 10mm。見せないとなると、余計な手間の方が多くなるので、
 10mm。結構、存在を消せる厚みである。ただ、そこを気に
 する人は一般の方の中には存在しないかもしれない。言ってし
 まえば、設計者の自己満足の世界なのかもしれない。しかし、
 一度その納まりを見てしまうと、25mmの厚みの存在感が厚
 く感じるのも事実としてある。

 この枠の存在意義。例えるなら、コップと水の関係である。コ
 ップが枠。水が扉。水を飲むだけなら、別にコップは要らない。
 蛇口に直接口を持っていって飲めば済む話しである。しかし、
 水を保持したい場合、なんらかの器があった方が便利である。
 その器がコップ。コップにも色々ある。素焼きの存在感のある
 厚みを持ったものから、薄いガラスで出来たもの、プラスチッ
 クのもの、金属製のものなど様々。それらの厚みも様々。扉を
 支えたり、壁との見切りとなったりするのが、枠。厚みも様々。

 本来、扉だけあれば事足りるのだが、それだけでは成り立たな
 い理由がある。水が空中に浮かんでいてくれないように。なの
 で、枠が必要となる。水を支えるコップのように。

 コップを目立たせる必要がない場合、その存在を消したいと思
 うのが、枠を薄く見せる理由である。コップは扉の数だけ存在
 する。コップだらけの空間になるのはなるべく避けたい。と思
 うのである。

 次に家具。分かりやすい例が、洗面台。これまた、造作を前提
 としての話しなので、既製品を使う場合は別である。洗面台の
 天板を正面から見たときの巾。即ち厚み。これをどう見せるか
 ?通常であれば、30mm~35mmもあれば強度的には問題
 ない。では、それで良いのか?というところを私達は考える。
 もっと薄く見せる方が良いのでは?とか。逆にもっと厚く見せ
 た方が空間的にはシックリ来るのでは?とか。

 これまた正解などはなく、出来上がった空間にマッチしつつ、
 使い勝手が良ければ、それでOKだと思う。そして、これも気
 にする人は少ないかもしれない。

 物理的に必要な厚みというのは、特に強度面で存在する。しか
 し、強度面で必要な厚み=見えてくる厚みではないと思ってい
 る。必然的に見えてくる厚みをどのように「見せたい厚み」に
 置き換えていくか?いけるか?が重要な作業だと思っている。
 単に薄く見せたいというだけなら、あまり意味はない。薄く見
 せること若しくは厚く見せることで、得られる/得たい効果が
 何なのかが実は大切なのだと思っている。

 だ~れも気にしない。のかもしれない。でもそんな、誰も気に
 しない細かな部分が集合した時、受ける印象が変わってくる。
 と信じて、設計に取組んでいる。厚みは重要なのである。
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■編集後記

 現在、とある住宅の家具図や建具図の施工図をチェック中。

 ですので、今回のコラムとなりました。

 「普通」の厚みは存在しません。「常識的」な厚みは存在

 しますが。「普通に納めて下さい」というのは禁句だと思って

 ます。なぜなら、Aさんの普通がBさんの普通と異なることが

 多々あるからです。意図した厚み。意味のある厚み。それを

 指示するのも私達の仕事です。

 まあ、厚み以外にも納まりは一杯あるのですが。

コラム | by muranishi | comments(0)

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