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10.07.16 Friday

抽象と具現・均質と非均質

■今日は祇園祭の宵山。そして明日はいよいよ待ちに待った巡行

 が開催されます。一年に一度の山鉾巡行。今年は3連休の初日
 
 でもありますので、人手が多いことが予想されます。

 天候はきっと晴れ。そして梅雨明けもきっと間近。

 お時間のある方は、是非ご観覧を!新町通りがお勧めです。

 いや、祇園祭の回し者でもない上に、今回のコラムとは全く

 関係のない前フリですが・・。

 それではどうぞおたのしみください。
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■抽象と具現・均質と非均質

 とある本を読んでいて、少し気になった言葉/文章について少
 し。

 とある本とは、建築関係の本であるとだけ述べておく。

 その中で、次のような内容が書かれていた。

 「いまどきの建築家は、抽象を抽象として建築を成り立たせよ
 うとしている。しかし、実際はどうしようもなく具体化される。
 であれば、具現を前提とした設計手法を考えるべきではないか?」

 上記は概略である。これを読まれた方には、なんのこっちゃ?
 という内容だと思うので、私なりの解説を加える。

 近頃は建築を出来るだけ、コンセプトメインの手垢に汚されな
 い「抽象的」な存在として、成立させたい流れがある。例えば
 床や壁・天井といった概念さえも取り払った、ピュアな「空間」
 としてこの世に出現させたい意図が感じられる。どちらかと言
 えば、使う空間というよりも見せる空間。若しくは、どう使う
 かというよりも、どう見せるかに重きを置いた空間。しかし、
 実際は建築とは「使ってナンボ」であり、図面が3次元化され
 た瞬間に、重量や質感を伴った実体として具現化/具象化され
 てしまう。その途端、抽象化をどれだけ叫んだところで、現物
 の前には無力となる。であれば、最初から抽象化などという半
 ば無意味な思考を止めて、具現化ありきでの姿を追究していっ
 た方が良いのではないか?というような内容/意味だと解釈し
 ている。

 何(どの建築)をもって、そのように説かれているのかは、知
 らない。が、なんとなく当たりはつく。でも違っていたらイヤ
 なので、書かない。

 実際の建築には大なり小なり「機能(部屋の用途)」をどう繋
 げるか、若しくはどのように配列/配置するかといったプログ
 ラム的要素がつきまとう。大なり小なりとは、公共建築物にし
 ろ、住宅にしろ、規模に関わらずという意味である。時にその
 プログラムが、全体の計画に影響を及ぼし、時にそのプログラ
 ムによって新しい試みが成される。それが人間の身体的/活動
 的な事象に合致した時は、具現化されても尚説得力のある空間
 となる(と思う)。が、プログラムの組み方が危うく、設計思
 想というか社会批判的なものが前面に押し出された時、具現化
 に伴い、実体と思想(抽象)が乖離した「使いにくい」空間に
 なるのではないか?と思うのである。

 これはあくまで、私個人の見解/解釈であるので、筆者がその
 ような想いで語ったのかどうかは全く別モノの恐れが大である。

 翻って、日常の設計を鑑みる。抽象的な空間が嫌いか?と言え
 ばそうでもない。何か理念を貫く確固たる空間のあり方を表現
 するための抽象化は、やってみたいと単純に思う。しかし。一
 方で、「重力には逆らえない」という強い思いが脳裏をよぎる。
 建築は絵画や彫刻ではない。そこで生活なり仕事なり鑑賞なり
 商売をする以上、床が壁にはなり得ないし、見上げれば地面が
 見える筈もない。訳の分からない文章だが、重力とはそういう
 ことである。とするならば、フワフワとした感じや「実体のな
 い」といったイメージなどは、この世に存在し始めた途端に重
 力に絡め取られるのがオチである。薄く見せる。細く見せる。
 重力を感じさせない。天地を無に帰す。無いものを有るように
 見せる。或いは、有るものを無いように見せる。ということに
 意味があるか?と自問した時、そこに必然性があるかないかが
 問題/ポイントだと思う。それによって得られる効果が必要不
 可欠なのであれば、必然性はあると言える。が、単に薄いでし
 ょ。細いでしょ。では、単なる表現手法/表層操作に過ぎない
 のではないかと思うのである。

 そしてもう一つ。

 「均質な空間を追究するより、どれでけ非均質に出来るかを求
 めたい。」という内容も書かれていた。

 これまた「?」かと思われるので、独断の解釈を加える。

 均質な空間とは、ニュートラルな状態。右でも左でもなくど真
 ん中。フラット。地球が丸かろうと、フラット。積層空間(超
 高層のような)では、床や天井はほぼフラットにならざるを得
 ないだろうが、言ってみればそんな感じ。そういう方向性の無
 い空間よりも非均質を求めたい。という内容かと思う。

 言わば、キャラクターを持つ空間=非均質と置き換えられるの
 かもしれない。いや、知らないが。

 均質とは、若干「抽象」ともダブる気もする。が、似て非なる
 ものである。なぜなら、非均質であっても抽象化は可能だから。

 話を飛ばす。飛ばして見る。(うわっ!唐突!)

 事務所には観葉植物がある。眺めるとあることに気付く。一つ
 の枝から出る葉っぱの数はどれも同じ。幹から出る枝の間隔も
 ほぼ同じ。そして上部の枝は下部の枝に重ならないようになっ
 ている。でも全体に見える姿は「無秩序」。一定の法則に従っ
 て伸びている/成長しているようでも、多分同じ樹種を見比べ
 ると、出来上がった様はまるで別物になる筈である。

 何が言いたいか?無秩序の中に実は秩序(法則)が隠されてい
 る。これは、均質なのか非均質なのか?全体を見れば明らかに
 非均質である。しかし、部分を見るとあくまでも均質なのであ
 る。

 均質の集合体がおしなべて均質になるわけではなく、非均質に
 もなり得るという例である。非均質の集合体が均質にはならな
 い。

 最近、アルゴリズムによる無秩序の秩序を設計に応用/援用す
 る建築手法が見掛けられる。一昔前のファジー的な考えに似て
 いるような気もするが、直感的に違いを述べるとすれば「無秩
 序の中の秩序を創造する」か「秩序から無秩序を創造するか」
 の違いだと思っている。ただ、私自身の認識/解釈はまだ完全
 ではないので、あしからず。

 話を戻す。

 均質と非均質。自然界を見れば、決して直線で構成されたもの
 などはない。恐らく、これは何年も前から、建築に関わらず言
 われてきた言葉である。建築が均質さを求めるのは何故か。そ
 れは、施工性が良いためとか、効率的だとか、床が水平じゃな
 いと座りにくいとか、といった長年の既成概念の上に成り立っ
 ている。しかし、自然界に水平・垂直を伴った形態はほぼ皆無
 である。山にせよ、川にせよ、海岸線にせよ、樹木、草花、昆
 虫、動物、雪の結晶からアメーバーに至るまで、色々な曲線を
 伴って形成されている。

 自然界に倣って、非均質な空間が良いのか。はたまた、人間に
 しか無し得ない均質な空間が良いのか。それは各個人の価値観
 の違いであり、正解などはない問題でもある。しかし、筆者が
 言うように、均質な空間が良くない若しくは非均質な空間が優
 れているとするならば、それはどの点に於いてなのだろうか?

 極端に言えば、居心地の良い空間は「小屋」か「洞窟」かとい
 う感じ。

 そう考えると、確かに「洞窟」の方が面白そうで、可能性の広
 がりはありそうである。が、「居心地が良い」という切り口で
 捉えた場合、なんとも言えない。洞窟のような空間体験は、あ
 まりしたことがないから判断がつかない。

 ガウディ的かミース的か。多分、建築家はそれらに分類されな
 い方向を目指す。新たな空間表現を目指す。設計手法を考える。
 そして、それに対する批判を繰り返して、また新たな手法を考
 え出す/考え始める。

 私は思う。建築の単体は均質にせよ、非均質にせよ、出来上が
 った都市は非均質じゃないか。と。単体を考える前に全体を考
 える必要があるのではないか。と。ほぼそれは徒労に終わるこ
 とだろう。一個人が都市を論じたところで、何も変わらないの
 は自覚している。が、細かいところに入り込む前に、全体を俯
 瞰出来る眼を持っていたい。と最近思うのである。
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■編集後記

 長い。その上結論のない内容で失礼しました。

 最近の内容。住宅の設計とはなんだか距離のあるコラムに

 なってきている気がしますので、もう少し基のスタンスに

 戻す必要がありそうだと反省しております。

 次回からはもう少し身近な話題を書くようにするつもりです

 ので、よろしくおねがいします。

コラム | by muranishi | comments(2)

コメント / トラックバック2件

  1. taku より:

    初めてコメントさせて頂きます。
    某大学院で建築を学んでいるものです。
    こちらのコラムでお話しされていた内容についてとても興味があるのですが、この「とある本」について教えて頂けないでしょうか。

  2. muranishi より:

    コメントありがとうございます。
    拙い文章をお読みいただき恐縮です。。
    「とある本」とは「日本の建築家:伊東豊雄・観察記」/瀧口範子著/筑摩書房若しくは
    「伊東豊雄読本2010」/エーディーエー・エディタ・トーキョーだったと思います。
    ご参考までに・・。

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