■インターネットを見ていますと、色々な人の名言集みたいな
ものがあります。
その中にダウンタウンの松本人志の名言というのがありました。
「100点は無理かもしれんど、MAXやったら出せるやろ」
確かに。
まあその他にもいろいろありましたが。
今回は、ある建築家の言葉シリーズ。こちらは本を読んでいて
印象に残った言葉を書いております。
それではどうぞおたのしみください。
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■ある建築家の言葉(12)
今回の建築家は、ルイス・カーン氏。
まあ、建築を学ぶ学生や設計を生業とする人でなければ、あま
り知っている人はいないかもしれない。
カーン氏が手掛けた最も有名な建築は?と問われれば、私の場
合「キンベル美術館」と答えるだろう。
アメリカのテキサス州にある美術館である。通常、美術館とい
えば、収蔵物・展示物を日光(紫外線)から守るため、極力展
示場には窓を設けないことが半ば常識とされている。
しかし、このキンベル美術館。展示場には天窓が設けられ、自
然光が柔らかく降り注ぐ空間となっている。なぜなら「画家は
自然光の中で絵を描いたはず」だからだそうだ。
その他にも、かまぼこ型をした特徴ある屋根。それがいくつも
連続した形状。中庭とのコラボ。およそ美術館らしくないとで
も言おうか、自然の中に自然を取り込みつつ建っているイメー
ジである。
因みに、このキンベル美術館の増築工事が進んでいる。増築の
設計を手掛けたのは、レンゾ・ピアノ氏(関空を設計した建築
家)。凄いコラボである。と個人的には思っている。今年着工
で、2012年完了予定。とのこと。かつてカーン氏の事務所
で働いていた経歴がある。なので、師匠の建築に弟子が手を加
えるというカタチ。素晴らしい師弟関係。
このカーン氏。遅咲きとして知られている。というか、世界的
な大恐慌時代を生きた人なので、若い頃は仕事がなく、結果的
に遅咲きとなってしまっただけなのだと思うが。
キンベルの前。自身初の公共建築「イエール大学アートギャラ
リー」を手掛けたのが、50歳の時。これを境に世間に名を知
られる。メディアから「これまで何をやっていたんですか?」
と聞かれると「スタディしていた」と必ず答えていたそうであ
る。洒落なのか、事実なのか、そういう思いなのかは分からな
い。
そして私がカーン氏の言葉として印象に残っているのは2つ。
一つは「創造とは、逆境の中でこそ見出されるもの」。
何を持って「逆境」とするかは、人それぞれである。が、誰し
も経験する状況/状態であると思う。その人が置かれている環
境や状況によって「逆境」は異なる。が、建築に限って言えば、
逆境は日常茶飯事である。コストが納まらない。法規が厳しい。
工期が厳しい。などという外的要因から、コンペに敗れる。要
望が納まらない。カタチが収斂しない。といった内的要因に至
るまで、挙げればキリがない。しかし、どのような状態(逆境)
に於いても、創造が起死回生の手段となる。
創造とは、新たなアイデアであり、解決策であり、挑戦である。
目論みが外れることもある。思っていた効果が得られないとき
もある。しかし、救ってくれるのは創造という作業であり、そ
こに掛ける情熱なのだと思う。
まあ、青い考えだとも思う。しかし、設計者とは創造無くして
は成り立たないのも事実である。私達は常に逆境の中にいる。
だから、創造を見出さなければいけない。と思っている。
そしてもう一つの言葉。「問題はどうあろうと、いつも正方形
から始める」
単純に凄い。本当にそうしていたかどうかは知らない。エスキ
スやスタディを始める際の言葉であるかどうかも知らない。
しかし、この言葉が事実だとすると、「いつも」正方形から始
まるわけである。普通はしない。
今度やってみよう。と単純に思う。さてそこから何かが見えて
くるのか、こないのか。
一つの流儀。それは真似すれば良いというレベルではないのだ
が。
そしてフト思う。私は何から始めているのか?と。
設計に身を置いて、かれこれ15年。何か確固たるスタート地
点というか、スタンスというか、流儀があるか。と考えた時、
敢えて挙げるとするならば、「正方形に近付く」ことを考えて
いる。うわっ!真逆!
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■編集後記
因みに大学の設計製図の授業では、講師の一人に新居千秋さん
という建築家がおられました。カーン氏の事務所出身の方です。
今思えば、もっと色んな話しを聞いておけば良かった。と後悔
しています。
「本当に正方形から始めていたのですか?」と聞けば、答えは
分かったかもしれません。
一瞬の出会いに何が隠れているか分かりません。まあ授業では
一瞬どころか、嫌というほどレクチャーを受けていたのですが。
振り返れば「チャンス」がそこかしこにあるものです。
振り返るまでに掴む必要がありそうです。
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