空間工房 一級建築事務所

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10.07.07 Wednesday

ディテール

■サッカーW杯。日本は惜しくも敗退してしまいましたが

 楽しい6月を過ごすことができました。

 そんな日本代表の岡田監督のある言葉を受けて、今回のコラム

 を書いてみたいと思います。

 どんな世界/業界でも共通する事柄はあるものです。

 それではどうぞおたのしみください。
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■ディテール

 ディテール=詳細。

 建築でも良く使う言葉である。「建築の神様はディテールに宿
 る」などということも良く言われる。

 ディテールは、面と面との取合い部分や窓廻りや水仕舞いなど、
 あらゆるところに顔を出す。ディテールが上手く納まっていな
 いと現場は混乱する。なぜなら、納まらないから。

 ディテールの集大成は「矩計図(かなばかりず)」であり、「
 部分詳細図」である。どう見せたいか?どんな納まりにしたい
 か?を表現する図面であり、恐らく一般の方が見ても、構造図
 の次に面白くない図面に挙げられる。かもしれない。

 しかし、実際は最も重要な図面だったりする。建築の施工順序
 や材料の仕上げ方などが分かっていないと描けない図面でもあ
 る。なので、「正しい」矩計図が描ければ一人前と言われる。

 恐らく、設計を始めたばかりの人間に「矩計図を描いて」と頼
 んだら、一日で一本の線も描けずに固まってしまうかもしれな
 い。・・・極端だが。

 そんなディテール。実はその重要性は、建築の世界だけではな
 かった。

 先日、日本代表の4度目のW杯が幕を閉じた。

 前評判を覆し、日本中が興奮した。そんな戦いぶりだった。そ
 して凱旋帰国。予選を通過しただけと言ってしまえばそれまで
 だが、予選を突破することがどれほど困難なことか。イタリア
 やフランスですら今回は予選突破を果たせなかったのだから、
 凄いことなのである。

 そして記者会見などで、岡田監督が選手に伝えていた言葉を知
 った。

 「勝負の行方は細部に宿る」

 そう。勝負の神様もディテールに宿っているのである。サッカ
 ーであれば、敵より1cm早くボールに触る。敵より0.1秒
 早く走る。長く走る。そんな積み重ねが勝負を左右するという
 意味なのだと思う。練習で出来ないことは、試合では出来ない。
 だから、練習での時間の使い方・充実のさせ方の重要性を知っ
 た。と、とある選手が言っていた。出場機会の無かった選手の
 言葉である。

 今回の負け方は、恐らくベストな負け方だと個人的には思って
 いる。PKを外した駒野選手は、中学以来「初めて」PKを外
 したそうである。それほどにPKの名手であった。だから、と
 いうわけではないが、他の選手も「俺が蹴っても外していた」
 と励ましていた。サッカーは団体競技だが、PK戦になった途
 端に個人競技となってしまう。残酷な勝者の決め方である。蹴
 る選手の誰かが外す。個人的には「じゃんけん」と一緒だと思
 う。時の運。それ以外のなにものでもない。特に代表選手レベ
 ルになれば「入れる」のが当たり前の世界だから、技術云々な
 どは関係ない気がする。時の運。

 次に繋がる負け方だと思う。なので是非次回は、更なる高みを
 目指して欲しい。と傍観者は思うばかりである。次回の開催国
 はブラジル。まだ南アフリカ大会は続いているが、次が楽しみ
 である。

 ・・・あれ?サッカーの話しを書くコラムだったっけ?と思わ
 れた方。鋭い!

 このまま脱線し続けるのも一つの手だが、今回は踏みとどまる。

 建築におけるディテール。個人的に最も重要なディテールは「
 開口廻り」だと最近は思っている。

 開口とは「外部と内部」「内部と内部」を繋ぐ場所である。そ
 こに開けられた開口は、色々な意図がある。光を入れる。風を
 抜く。風景を切取る。気配を感じさせる。繋がりを持たせる。
 仕切る。区切る。出入りする。などなど。

 その開口意図を明確にした上で、目立たせて良いのか悪いのか。
 目立たせない場合は、どのように納めるのか。額縁を付けるの
 か付けないのか。付けるのであれば、見付けの寸法は何ミリに
 するのか。ロールスクリーンやブラインドやカーテンの納まり
 をどう考えるのか。額縁の色をどうするのか。網戸をどう見せ
 るか。見せないか。

 開口は空間を左右する。見せ方次第でスッキリした印象にもな
 るし、堅固な感じにもなる。

 その空間が有して欲しいキャラクターによって、開口部の納め
 方も変化するものと思う。空間にマッチした開口部であるため
 に、施すディテールは変えて行く必要があるのである。

 空間に勝ち負けはない。かもしれない。しかし、サッカーの勝
 負が細部に宿るように、建築の神様はディテールに宿る。ディ
 テールが緊張感を持ったとき、空間は引き締まる。どうでも良
 いと投げ出した瞬間、空間はどうでも良いものになる。言って
 みれば、「負け」である。

 開口部だけがディテールではない。が、開口部は重要な一つの
 要素だと思っている。

 そしてもう一つ。開口部と言うと、サッシを連想しがちだが、
 「内部と内部」を繋ぐ開口部も同様に重要なのである。その存
 在感が限りなく失せた時、空間から雑音がなくなる気がしてい
 る。

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■編集後記

 パラグアイ戦前の本田選手。いつも頼んでいる美容師を南アフ

 リカまで呼んで、髪を切り、染めて貰ったそうです。

 中田ヒデをリスペクトしている本田選手。その美容師は中田

 ヒデの紹介でもあるそうです。それほどに意気込んで臨んだ

 パラグアイ戦。交通費を含めると、一体散発代にいくら掛かっ

 てるんだ?という下世話な思いがよぎらなくもないですが、

 意気込みは充分だったような気がします。

 今回は、編集後記もサッカーの小ネタでした。

 失礼しました。

コラム | by muranishi | comments(0)

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