空間工房 一級建築事務所

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10.07.05 Monday

建築に何が出来るか?(1)

■何事も一つの観念/モノの見方だけで全てを解決する。という

 のは無理っぽい気がします。まあ、解決できればそれに越した

 ことはないのですが。

 ただ、色々な観念といいますか、様々な異業種が入り乱れる/

 協力しあうことで、一つのモノの見方だけでは生まれ得ない

 「何か」が創出出来るような気がしています。

 言ってみれば「個」の力ではなく「集」の力。

 一人より二人。二人より三人が知恵を絞れば、1+1=2以上

 に発展していくのではないでしょうか。

 えらく曖昧/ザックリな言い回しですが、今回は新しいシリー

 ズ化を試みる1回目のコラムです。

 それではどうぞおたのしみください。
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■建築に何が出来るか?(1)

 またの機会に書いてみたいと思います。・・・そんな終わり方
 をしているコラムが結構ある。

 で、いつ書くの?と自分に問うてみた。

 まあ、この場合の「機会」なんてのは自分でいくらでも操作出
 来る類のものなので、「気が向いたら」。としか言いようがな
 いのだが、恐らくそれではいつまで経っても書かない自分が居
 るような気もするので、「ちょっとづつ」書くことにする。誰
 からセッツカレル訳でもないので、自分で重い腰を上げなけれ
 ばならないと思った次第である。

 今回は(も)、2ヶ月ほど前に書いた「バカンス制度VS持ち家
 制度」の終わりの方で書いていた事柄について少し。

 1回で書ききることは不可能。というか考えはアチラコチラへ
 飛びそうな「お題」なので、これまたシリーズ化を試みること
 にする。

 シリーズ化というほど大したものではないが、このコラムの他
 のシリーズを挙げておく。

 「ある建築家の言葉」シリーズ。これは、著名な建築家が発し
 た言葉に対する個人的感想・見解を述べるもの。

 「ある住宅の思考過程」シリーズ。これは、その時々で取組ん
 でいたり、過去に取組んだ住宅が出来上がる思考過程を述べた
 もの。

 「都市を解体する」シリーズ。これは、「都市」という広域な
 視点に立って、都市を論考するもの。

 そして今回新たに加えようとしているのが、「建築に何が出来
 るか?」シリーズ。何が出来るかを様々な視点から考察してい
 くもの。(の予定)

 他にもカッコ付きで(1)とか(2)とか何回かに分けて書い
 ているものもあるが、それらは単純に1回では長すぎるので、
 分割したものに過ぎない。なので、確信的にシリーズ化してい
 るのは/するのは、今のところ上の4つである。今後も増やし
 ていきたいと密かに目論んでいる。

 などと、読み手にはどうでも良いことで行数を割いたが、自分
 としては「あ~、スッキリした」。という感じである。

 さて、先に進める。

 「建築に何が出来るか」。その前フリは2つコラムに記載して
 いる。

 一つは前述の「バカンス制度VS持ち家制度」。建築にコミュニ
 ティが必要という内容。

 もう一つは「祇園祭りとエレクトリカルパレード」。建築に祭
 りのような非日常を、飽きの来ないカタチで挿入できないか?
 という主旨のもの。である。

 それらを通して、建築を建築単体で捉えるのではなく、ソフト
 面なども加味して、何か出来ないものか?を考えていきたい。

 今、京都市では「歩いて楽しい街」的な考えを創出していくた
 めに、一般市民や団体から推進協議会委員を公募している。応
 募しようかとも思ったが、会議は平日に開催されるようなので、
 やめた。

 代わりといっては何だが、ここで少し建築的アプローチから「
 歩いて楽しい街」的なもの(正確には、「歩いて楽しいまちづ
 くり~歩くまち・京都~」である)への私見を書いてみたい。

 そもそも歩いて楽しい街を目指す根拠は、こうである。

 一、生活するための機能がコンパクトに集まった街
 一、安全・快適でバリアフリーの街
 一、街中に誰もが住める街
 一、住民同士が支えあい、永続的に住める街

 このような街にしていく/目指す。とある。

 後ろの2つは歩くことと直接関係してないような気もするが、
 まあ良しとする。話が先に進まないので。

 歩くも歩かないも個人の自由である。が、「歩きたく」なるか
 どうかは、外部環境の刺激/仕掛けによって左右される。と思
 う。

 では、どうすれば「歩きたくなる」のか。

 自動車はCO2を排出するので、歩きましょう。なんてのは話
 にならない。そんなのほっといてくれ。である。ましてや、道
 をクネクネさせたり、道幅を狭くしたりなんてのは、防災の観
 点から言って危険。消防車や救急車が通れない街は危険だ。

 まあ、そんなこと/道を操作することは誰も言ってないので、
 そんなに一人で興奮する話でもないのだが。

 言いたいのは、強制的に「歩くしかない」街。なんてのは誰も
 求めていない。ということをまずハッキリさせておきたかった
 だけである。なので歩行者天国の実施なんていう類も私の中で
 は却下。

 話しは20年ほど前に遡る。

 大学3年の頃、製図の課題だったかコンペだったかは忘れたが、
 一つの提案をした。あ、コンペだ。当選の「と」の字もなく落
 選した覚えがあるので。

 その提案。四条界隈や河原町界隈の交通渋滞を帰省する度に見
 ていて思ったことを、カタチにしてみた。街が車に侵食されす
 ぎてはいないか?人が追いやられてはいないか?と単純に思っ
 たのである。

 京都の四条通りに限らず、恐らく政令指定都市レベルであれば、
 どこも同じ状況かと思う。人は歩道・車は車道を通る。全国的
 に決まっている。が、明らかに窮屈な歩道を大勢の人が歩かさ
 れている。時に肩をぶつけたり、時にかわしたりしながら。か
 と言って、車が悠々と広い車道を通り抜けている訳ではない。
 車は車で、大渋滞の中、遅々として進まない感じ。バスも時刻
 表通りには到底動かない。遅れることが当たり前の世界である。

 そこで考えた/提案したプラン。完全に歩車分離とする。車は
 地上レベル。人は2階レベル。ペデストリアンデッキのような
 ものを、道路上に覆ってしまうというもの。それも緑で。かと
 いって雨に濡れるのも嫌なので、竹編みのようなもので天空を
 覆う。光を通す。自然を感じる。各店舗へは、2階レベルから
 ダイレクトに入る。上は人。下は車。そして各所に「歩きたく
 なる」仕掛けを施す。

 色々な「庭」的な空間を配置する。竜安寺の庭的なものだった
 り、銀閣寺の庭的なものだったり、苔寺の庭的なものだったり、
 京都の庭達を随所に散りばめる。でも一度訪れると飽きるので、
 「マイガーデン」的なものも創る。公共の場所に、皆に見て貰
 える「庭」を、つくる。手入れは、訪れた人が互いにすれば良
 い。その「マイガーデン」というか「アワーガーデン」という
 か、それが竜安寺の庭を超えるものが創出できれば、それは皆
 の力である。力を併せて創造する。

 さらに何か参加出来る仕掛けを創る。受身的な場所ではなく、
 参加型の場所を増やす。何もなくても、そこに行けば色々な店
 舗があるので、大人は退屈はしないのだろうが、買物に付き合
 わされる子供は退屈である。私が子供だった頃、デパートへ行
 くのが苦痛だった。何も面白くないのである。楽しいのはおも
 ちゃ売り場位なもの。でも実はストレスが溜まるだけ。買って
 欲しいものがあっても、大抵買ってなど貰えない。見るだけ。
 なのである。

 なので、安心して子供達が「無料で」遊べる空間を創る。公園
 と言ってしまえばそれまでなので、ここにも「仕掛け」が必要
 である。例えばドッジボール大会やゴム飛び大会、フットサル
 など、そこに来た誰もが参加出来る「状態」を創る。ブランコ
 や滑り台などの個人競技ではなく、団体競技。ケンカや怪我も
 付きまとう。でも、コミュニティや思いやりも生まれる。と思
 う。

 建築的に大仰なモノを創るわけでも何でもない。「仕掛け」や
 「空間」を創るだけである。「歩いて周りたい」と思える仕掛
 け。用事がなくても「そこに行きたい」と思える仕掛け。

 歩行者天国とは全く違う。と思っている。

 そんなことを随分前に考えたりもしていた。ただ、建築的な回
 答ではないので、コンペに対する回答としては如何なものか?
 とも思うが。因みにどんな課題のコンペだったかは覚えていな
 い。

 では建築に何が出来るのか。「歩くまち」のために何が出来る
 か。

 長くなってきたので、またしても次の機会に譲りたい。シリー
 ズ化したので、心置きなく次の機会に廻したい。

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■編集後記

 果たして、「歩くまち・京都」推進委員にどんな方々が参加

 されるかは興味のあるところですが、色々な業種の方が参加

 されることで、面白い方向性が打ち出されることを期待して

 います。

 私は私で考えたいと思いますが・・。

 このシリーズでは「歩いて楽しい街」だけを考えるわけでは

 ありませんので、ご安心/ご注意ください。(何を?/何に?)

 さて、いつの間にか、もう祇園祭りの月に突入です。鉾町の

 住人でも何でもありませんが、血が騒ぎ心踊ります。

 すでに四条界隈ではお囃子のテープが流され、祭りムードが

 漂い始めています。

 鉾が動き出す頃、京都の夏がはじまります。
 

コラム | by muranishi | comments(0)

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