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10.06.30 Wednesday

坪単価

■ 設計には融通の利かない要素が3つほど存在します。

  一つは法的な制約。一つは敷地の大きさや形・向き。

  そしてもう一つは予算。です。

  それら3つの要素/条件のうち、最も関心が高いのは、

  やはり予算ではないでしょうか?どんな建物がいくらで出来

  るのか?その判断基準は何なのか?何を手掛りにすればよい

  のか?

  建築を進める上で、大概はまず最初に気になるところであり

  最後まで気になる点でもあると思います。

  今回はそんなお話しを少し。

  それではどうぞおたのしみください。
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■坪単価

 先日、とある建築相談会に建築家の立場として参加してきた。

 その中で、来訪者から質問が多かった事項について書いておき
 たいと思い、今回のコラムである。

 住宅を建てよう!と思った時、何が一番気掛かりになるのか?
 それは人によるのだが、多くの方は「一体、工事費はいくらか
 かるのか?」というところからスタートする。

 間取りや外観が、いくら自分の好みでも、予算がオーバーして
 いれば、それは「絵に描いた餅」でしかない。全ては「予算」
 という枠/条件に納めて初めて現実味を帯びてくる。

 世間一般に言われる「坪単価」。一坪はだいたい畳2帖分の広
 さである。なので、この「坪単価」は、総工費を延べ床面積で
 割った金額として表される。

 ここで言う「延べ床面積」。計算根拠の大きなファクター/要
 素である。一般的に延べ床面積とは、法的な面積をいう。

 では、法的な面積とは一体何か?

 例えば2階建てを例に取る。1階の床面積と2階の床面積の合
 計である。と言ってしまえば、非常に簡単。実際そうなのだが。

 法的には上述の通りである。しかし、吹抜けがあったり、バル
 コニーがあったりすると、「施工床面積」は微妙に変化してく
 る。

 なぜなら、吹抜けやバルコニーは「法的」な延べ床面積には算
 入されないからである。しかし、実際には吹抜けは「床」がな
 いだけで、壁も天井も存在する。バルコニーはほぼ床と手摺だ
 けではあるが、実際にバルコニーを施工しようとすれば、それ
 だけの手間や材料費がかかる。

 それらの面積が小さければ、そんなに大勢に影響はしない。し
 かし、大きな吹抜けや広いバルコニーがついていると、影響し
 ないとは言ってられない。見た目/数字上の延べ床面積が同じ
 でも、吹抜けやバルコニーが大きければ、必然的に坪単価は上
 がる。

 何をもって「坪単価」と称するのか。そこが重要である。

 さらに、住宅設備機器や照明器具・エアコンの有無・外構工事
 の有無/広さなどによっても大きく変わる。

 例えば延べ床面積が30坪の住宅を考える。キッチンが90万
 なのか、150万なのかで、どれ位坪単価に影響するかを見て
 みる。

 90万円なら、90万円/30坪=3万円/坪。150万円な
 ら150万円/30坪=5万円。そう、それだけで坪単価は2
 万円UPする。

 しかし、それが50坪の住宅ならどうなるか?90万円/50
 坪=1.8万円/坪。150万円/50坪=3万円/坪。UP
 額は1万2千円である。

 設備機器自体のUP額は面積によらず、60万円。でも坪単価
 に換算した途端、UP額に差異が生じるのである。

 なので、同じ個数をつけるとした場合、面積が小さくなる程、
 坪単価はUPする。狭小住宅の坪単価がUP傾向になる一つの
 要因であると言える。

 さらに。照明器具を含むのか否か。エアコンを含むのか否か。
 お風呂の仕様はユニットバスなのか否か。外構工事の範囲が広
 いのか狭いのか。サッシは多いのか。建具は多いのか。造作家
 具の多さは?

 そんなことを挙げ出すとキリがない上、それらの有無によって
 坪単価はいくらでも上がる/下がる。のである。

 そこに「坪単価」比較の落とし穴がある。

 A社では全て込みで、坪単価60万円。B社では全て別途で、
 坪単価40万円。

 さて、貴方ならどちらを選びますか?

 全て込み。全て別途。という重要な情報が伏せられていたとす
 れば、答えは聞くまでもなく「B社」。と答える人が大半だと
 思う。

 全く同じ仕様とした場合、この「坪単価」表現には注意が必要
 である。なぜなら、「別途」金額により、最終金額はB社の方
 が高くなる恐れが隠されているからである。

 このように「坪単価」とは、非常に曖昧な基準で表現されてい
 る。面積の大きさ・面積の取り方・別途の有無・設備機器の高
 い安いなど、非常に多くのファクターがあるにも関わらず、一
 律に「坪単価」として表現されてしまうのである。

 確かに、何か基準/目安がないと判断のしようがない。その意
 味で「坪単価」はその目安としては非常に分かりやすい。あく
 までも見た目は。であるが。

 でも実際は、一つ一つの材料や手間の積み重ねで、工事費は決
 定する。というか算出される。その材料単価が高ければ、それ
 は単にボッタクリであるし、手間が高ければ、それ相応の職人
 さんが現場で働いていただかなければ、ウソである。

 なので、「坪単価はいくらですか?」と問われても、正直困る。
 私達が設計するのは、工場生産品ではなく、現場での一品生産
 品なのである。高くも出来れば、ある程度安くも出来る。それ
 が正直なところである。

 建築工事費とは、一般の方には非常にブラックボックス的な感
 じで、分かりにくい/不安。と思われている方が殆どだと思う。

 世間一般の材料費の単価からして分からない。なので、いくら
 明細の見積りを出されても、それが高いのか安いのかが分から
 ない。窓の数量位は数えれば分かるが、壁の数量など明記され
 ていても、それが実際と比べて正しいのか間違っているのかな
 どは余程時間を掛けない限り分からない。

 車のようにパッケージされた価格であれば、日本全国同じ定価
 がついているので、それが高いか安いかは別として、安心出来
 る。エンジンの部品一つ一つの値段が高いのか安いのかなどを
 考える人はまずいない。一台いくら。これで、話が通る。建築
 と同じで、数え切れないパーツ/部品や手間・輸送コストなど
 がかかっているにも関わらず。

 しかし住宅に定価はない。ハウスメーカーや建売りは別として。

 そこに不安と分かり難さがつきまとうのだと思う。

 そういった不安や分かり難さを解消する立場として、設計者を
 利用すれば良いと思う。その設計者が信用出来ないなら話は別
 だが。設計者は材料単価を把握している。数量もCADで算出
 できる。手間の相場も知っている。なので、出てきた詳細見積
 りさえあれば、それが正当か否かは判断できるのである。

 最終的に重要なのは「坪単価」ではない。トータルコストであ
 ると思っている。そして、トータルの性能であり、質であると
 思っている。

 「坪単価は50万円ですよ」というのは、たやすい。多分やれ
 ば出来る値段である。しかし、それで出来上がった空間に果た
 して満足して貰えるのかどうか。そこはまた別問題である。

 多くの方が望まれているのは、安くても質の高いもの。だと思
 う。それは重々承知である。が、良いものは高い。というのが
 住宅に限らず、モノの値段/価値ではないだろうか。そこを理
 解いただければ、打つ手は持っている。つもりである。
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■編集後記

 それでは、お宅が実際にやられた住宅の坪単価はいくらですか

 ?という質問の答えをこのコラムでは一切書いていません。

 その「坪単価」が独り歩きするのが、危険だからです。

 今までの実例では、50万円代の住宅もあれば200万円代の

 ものもあります。というのが正確です。これは全て込みの価格

 です。詳細はHPに掲載しております。

 50万円代が安い。200万円代が高い。これは子供でも解り

 ます。数字はわかりやすいので。でも50万円代が悪い。20

 0万円台が良い。という結論にはなりません。どちらもそれ相

 応の良さがあると思っています。

 空間に何を求めるか?で坪単価も変動します。

コラム | by muranishi | comments(0)

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