■世の中にはデザインが溢れています。建築に限らず、服や車
食器や家電。はたまた缶コーヒーのパッケージにまで。
恐らく、日頃生活をしていて目につく製品には全てデザイン
が施されていて、その一つ一つの裏にはデザイナーが存在し
ているのだと思います。
世の中からデザインを取ったら、自然しか残らないのではな
いでしょうか?
今回はそんなデザインのお話し。と言いたいところですが、
ほぼ関係のないお話しになりそうです。
それではどうぞおたのしみください。
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■デザインするな
「デザインするな」
いきなり何を言い出すのか?と思われた方へ。
決して私の言葉ではありません。
藤崎圭一郎著のデザイナー宮田識(みやた・さとる)氏に関す
る本のタイトルである。
前にも書いたかもしれないが、私の行きつけの本屋さん。建築
コーナーの隣にはデザイン関連のコーナーがある。なので、建
築の本を物色しつつ、デザイン関連の本も気になって仕方がな
い。
で、先日もその本屋さんに行ってきた。
建築の専門書を物色していると、小学一年生若しくは小学校に
あがる前位の幼い男の子がスタスタとやってきた。建築専門コ
ーナーなので、いつ行ってもあまり人はいない。いても大概は
大人(同業者)である。
「まあ、親を探してうろついているんだろう」位に思いながら、
私は「何を買おうか」と立ち読みしていた。
するとすぐ隣に来て、その小学生が一冊の本をフト手にした。
手にした本は、写真の多い建築雑誌。であれば特に気にも留め
ない。眺めるだけでもそれなりに楽しいから。しかし、実際に
手にしたのは、「西沢立衛のディテール」という本。余程建築
に興味がない限り手に取らない。専門中の専門書である。一般
の方なら、見ても何も面白くない。たぶん。
が、その子は「サラっと」流しめくるという読み方ではなく、
「じっくりと」内容を見ている。絶対分かってはいない。と思
いたい。もし分かってみているとしたら、絶句である。流石に
「見て分かる?」とは声を掛けなかった。「分かるよ」と言わ
れても、二の句が継げないし、「分からない」と言われれば、
そうだろうなと思うだけなので。
一体、建築って何歳位から始めても良いものなんだろう?など
とその子を見ていて思った。知識だけで建築が出来るか?と問
われれば、「恐らく出来ない」と応えるだろう。でも、知識が
なければそれはそれで困る。なので、年齢に関係なく勉強する
のは特に問題はないと思う。著名なスポーツ選手やピアニスト
などの音楽関係者などは、3歳位から教わり始めることを考え
れば、別に建築だって、そのイロハを幼少期から教わっても支
障はないとも思う。しかし、普通はいきなり「建築」に興味を
覚える子供はいない。まあ、ブロックなどで「お家」を造った
りはするのだけれど。
かと言って自分の子供に3歳から「建築」を教えるかと言えば、
全くそんな気はない。私が興味のある建築の見学に付き合わす
のが、せいぜいである。
と、話はいきなり逸れまくったのだが、「デザインするな」と
いう本。その出来事があったときに買った本である。まだ読み
始めたばかり。
宮田氏は主に広告デザイナーである。皆さんも恐らく一度は目
にしている。CMは勿論、商品のポスターなどもデザインされ
ている。
その本の序章とも言うべきところに、こう書いてある。
「デザイナーには2種類の人種がいる。一つは天性で上手い人。
もう一つは、幼い頃から絵を描き続けた結果上手くなった人。」
そしてこう続ける。
「前者は一握りしかいない。いわゆる天才。後者は掃いて捨て
る程いる。後者が前者に追いつくには、自分が培ってきたもの
/経験に目を向けて、独自性/個性を出さなければいけない。
決して技巧に走っては勝てない。」
そう。小手先の技巧だけでは人は感動も感心もしない。「その
程度の」デザインはするな。ということである。いや、まだ読
んでいないので、分からないが、多分そのようなことだと思う。
多分。
これは別に広告デザインに限らず、いつもの通り建築にも通ず
る。
そして、こう思うのである。「あの、本屋で見た少年は、天才
なのか?努力家なのか?」と。
実は「天才」なんてこの世に存在しないんじゃないか。とも思
う。あの少年がこれから同じような行動を続け、大人になった
ら、ひょっとすると、建築界では「天才」と呼ばれる日が来る
のかもしれない。
しかし、実はその普段の不断の行いが(オヤジギャグ。いや単
なる駄洒落。)天才を生み出しているとも言える。かもしれな
い。
普通、建築の設計を学ぶといえば、早くても高校生位だろう。
普通は大学生からといっても良い。大学生が社会人になるまで
に掛かる年数は高々4年である。その間に、設計のセンスがあ
るとかないとか言われるのである。
でも、先ほどの小学生らしき少年が、社会人になるまでに有す
る年数は、ザッと15年。普通の大学生の約4倍。天才になる
可能性は高い。
などとつまらない想像をしてみたりして。
私も小学生の時に「建築家になりたい」と思った部類である。
それはいつかのコラムにも書いた気がする。そして、そんな思
いを知った親が、私に買い与えてくれたのは、安藤忠雄氏の雑
誌であり、パースの描き方という本であった。
しかし、誠に残念なことに、私は天才ではなく、天災である。
(いや、訳がわからない。)
折角買い与えて貰ったが、パラッと目を通しただけで本棚に仕
舞いこんだ記憶がある。天才になる機会を自ら閉ざしてしまっ
た。と、今思った。
まあ、そんな下らない冗談はさておき、「デザインするな」。
読み進めるのが、楽しみである。異業種ではあるが、共通項も
多いような気がしている。
また機会があれば、読後の感想なども書いてみたい。
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■編集後記
ほぼデザインとは無関係な展開になりました。ただ、建築は
単なるデザインではありません。と言うと他のデザイナーか
ら怒られそうですが・・。
建築の設計とデザインの違いを説明せよ。と言われればなん
と答えるでしょうか?
答えは色々あるでしょうが、私なら「重力」と答えます。
建築のデザインは重量には逆らえません。車が空気力学に逆
らえないように。
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