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10.06.14 Monday

インスパイア

■たまに、お施主様と車の話しになったりします。
 
 「建築家はオシャレな車に乗っていて欲しいですね~。」と勝

 手なイメージを要求されたりもします。

 「かと言って、クラウンとか乗られていたら興ざめですね~。」

 と判断基準の難しいことを言われたりもします。

 オシャレな車に乗りたいですよ。わたしも。

 まあ、あまり車に詳しい方ではないので、オシャレな車がどこ

 で手に入るのか知りませんが・・。

 今回はそんなお話しとは全く関係ありませんが、書いてみたい

 と思います。

 それではどうぞおたのしみください。
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■インスパイア

 インスパイア。

 意味は、示唆する・喚起する・感激する・鼓舞するなどという
 意味がある。

 設計者は誰しも、何かにインスパイアされる瞬間がある。イン
 スピレーションとも似ている。

 今回は、非常に手前味噌な話しになるので、予め断っておく。

 一つの住宅を考えはじめる時、常に意識のどこかにその住宅の
 ことがへばりついている。紙に向かっている時は勿論、食事を
 していても、本を読んでいても、歯を磨いていても、お風呂に
 入っていても、家族と会話をしていても、TVを観ていても、
 寝ていても。

 考えてみれば、失礼な話しかもしれない。極端な話し、他のお
 客さんと話しをしていても、なので。

 有名な話しだが、建築家安藤忠雄氏も意識が思考に集中し過ぎ
 て、今まで何度も交通事故に遭っているそうである。スペイン
 のサグラダファミリアの設計で有名なガウディも、最後は交通
 事故で亡くなっている。思考に集中していた為かどうかは定か
 ではないが。

 まあそんな大御所・巨匠建築家から比べれば、私などはまだま
 だ足元にも及ばないので、交通事故に遭ったことはないが。
 (遭いたくもないが)

 そして最近も、とある住宅について考え続けていた。プランと
 同時にファサード(立面)や断面も同時に試行錯誤するのだが、
 当初思い描いていたファサードではイマイチしっくり来ない日
 々が続いていた。ファサードに合わせてプランを変えるという
 手もあるのだが、今回のプランはいじりたくない。という思い
 が強いため、必然的にファサードを変える必要があった。

 当初からの軸がブレることなく、どうやってプランとファサー
 ドに折り合いをつけるか。軸がブレると、ろくなことがないの
 は百も承知である。何がやりたいのか、焦点がぼやけるので、
 選ぶ方=お施主様にも意図が明確に伝わらなくなってしまうの
 である。

 かといって、力技で強引に案をねじ伏せてもダメ。どこかに矛
 盾が生じ出す。その矛盾は、直感的に「気持ち悪さ」を醸し出
 す。よって、いくらプランが良くても全体の印象は悪くなる。
 あくまでも今までの経験だけの話しであるが。

 そんな悶々とした日々を過ごしながら、現場の監理にも行かな
 ければならない。その案だけを椅子に座って考えているほど、
 私達は優雅ではないのである。

 とある現場で朝から夕方まで外で立ち続け、監理にあたる日が
 あった。外は猛暑。炎天下である。自慢じゃないが、私は暑さ
 にも寒さにも人一倍「弱い」。軟弱者なのである。

 相変わらず、頭の片隅にその住宅のことが、へばりついている。

 昼食のひと時、現場を離れて食事に現場監督などと一緒に車で
 移動する際も、車窓を通り過ぎる住宅のファサードに目が行く。
 言っちゃ悪いが、どれからもインスパイアされない。いたって
 普通の外観が建ち並んでいる。

 そして夕方近くになり、その日は現場監理終了。事務所まで約
 2時間掛けて車で帰る。

 流石にその日は暑さにやられた。なので、高速に乗ると最初の
 サービスエリアで水分補給。

 疲れたなぁ。などと思い。携帯のカメラで撮った家族の写真で
 も見て疲れを癒そう。とおもむろに携帯を取り出す。5ヶ月に
 なる我が子の写真に笑みがこぼれる。親ばかである。4歳にな
 る我が子の写真に、成長したなーと思う。○○歳になる我が妻
 の写真に元気を貰う。

 まあ、傍から見れば疲れたオヤジが携帯をいじっているように
 しか見えない光景である。

 で、少し前に提案した「模型写真」が目に飛び込んでく来た。

 「コレだ!!」

 ずっと考えあぐねていた外観。ファサード。これこそが、求め
 ていたカタチではないか!

 冒頭にも書かせていただいたとおり、手前味噌な話しで申し訳
 ない。自分が少し前に考えていた案にインスパイアされた瞬間
 である。

 勿論、その提案内容と全く同じカタチにするわけではない。そ
 の時考えていたコンセプト的なもの・思考的なものを抽出して、
 今回のファサードに落し込んでいくわけである。車を運転しな
 がら案をまとめる。カタチを形成していく。

 そして漸く辿りついたカタチ。

 で、漸く事務所に辿りつくと、スタッフが模型を造っていた。
 まあ、造るように指示していたから造っていたのだが。でも、
 それはインスパイアされる前のカタチ。なので、早速変更のス
 ケッチを描いて、創りなおしを指示する。スタッフの顔からは
 「え~!」という表情が見て取れる。ここまで造ったのに~。
 という感じだと思う。が、そんなことに構っているほどコチラ
 も残念ながらスタッフ想いではない。

 インスパイアされる瞬間。今回はたまたますごく身近なものか
 らインスパイアされたわけだが、毎回そんなことにはならない。
 もしそうなら、ただの記憶喪失である。

 何からインスパイアされるかは分からないが、考え続けること
 が、その瞬間を迎える条件だと思っている。

 そして、そういった案がお施主様をインスパイアしてくれれば、
 それ以上の喜びはないのである。
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■編集後記

 インスパイアされるまでもなく、スラスラと案が閃く時もあ
 
 ります。過去のエスキス帳を見ていて、「なぜいきなりこの

 カタチに辿りついたんだ?」と我ながら思うときもあります。

 でもきっと、それは日頃の思考の中から生まれてくる/きた

 カタチだと思っています。

 思考は大切だと改めて思っている日々です。

コラム | by muranishi | comments(0)

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