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10.06.11 Friday

重心の位置

■プランを考える時、平面的な重心(バランス)を考慮する

 必要が、構造的にもあります。

 窓の配置も、バランスよく配置されていないと、強い建物

 にはならないという、建築基準法なルールもあります。

 まあ、設計実務レベルの話しを書いても面白くもなんとも

 ありませんので、そのような意味での「重心」のお話しは

 このあたりにしておきます。

 今回は、もう少し直感的にも理解できる「重心」のお話し
 
 を少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■重心の位置

 「重心」といっても決して数学や物理の話しではない。

 建築の話しである。

 平面的な重心の位置の話でもない。

 あくまでも見た目の重心の話しをしたい。

 京都市内の現場は、自転車で監理に廻る。健康的で経済的で環
 境にも優しい。自転車で移動するだけで一石三鳥である。・・
 ・しんどいけど。

 そんな京都の現場。往復に目が行くのは、職業柄、建物である。 
 最近、街中に工事現場が増えてきたな~と思っていたら、先日
 の新聞に新築着工件数が約1年半振りに増加したと書いてあっ
 た。まあ、気のせいでもなかったようである。

 話がいきなり他所へ飛んだので、早めに戻す。

 で、目が行く建物。中でも京町屋について、思うところを少し。

 2階の窓には、京町屋特有の虫篭窓(むしこまど)が設けられ
 ているものがある。1階には格子。デザイン的には縦のライン
 が一つのモチーフになっている。この2階に相当する高さが、
 最近気になっている。おしなべて低いのである。低い軒の街並
 みを形成している。少し背が高い人ならば、手が届きそうな高
 さである。なぜ、そんなに低いのか?玄関も低い。

 これは個人的な解釈だが、単純に昔の標準身長は低かったのだ
 と思う。昔の和室の襖や障子などは、概ね1.8m程度しかな
 かった。これも日本人が小柄だったがゆえのことだと思う。

 現代で、そのような高さにすると、低くて頭を打つ。せめて2
 m以上の建具高さは必要である。それでも見た目は随分低いが。

 それが、外観にも現れている。一体、あの低い2階には何があ
 るのだろう?と思ってしまう。小さい頃に住んでいた町屋を思
 い出すと、そこは単純に屋根裏的な納戸になっていた記憶があ
 る。まあ、部屋にしても軒先付近は低いので、座ってしか使え
 ない。

 そしてもう一つの理由が考えられる。低い理由。京都の町屋は、
 平入りが基本である。平入りとは、道路に対して軒が下りてく
 る感じ。そして瓦は一文字葺き。道路面の瓦の先端が、ピシッ
 と真っ直ぐに揃いつつ、スパッと瓦が切断されたような形状に
 なっている。これには、実は瓦の技術が必要なので、最近の新
 築ではあまり見かけない。饅頭瓦という、鼻先に丸っこい意匠
 がついたものが使われる。いわば、荒隠し。多少がたついてい
 ても、丸っこい部分で吸収してくれるわけである。

 知らないうちに、話が逸れていたので、再び戻す。

 もう一つの理由。京都の敷地区画は、間口が狭く奥に長い。い
 わゆる鰻の寝床というヤツである。昔の納税(固定資産税)が、
 間口の広さによって決められていたから、町衆の知恵で、鰻の
 寝床になったとされる説もある。・・・だめだ、理由を書きた
 いのにことごとく邪魔をされる。(誰に?)

 今度こそ。

 もう一つの理由。平入り且つ奥行きが長いということは、奥に
 行くほど、滅茶苦茶屋根の高さが高くなるのである。(やっと
 書けた)だから、軒は低く抑えて、出来るだけ天井裏の空間/
 容量を小さくするためなのだと思う。

 まあ、本当のところは知らないが、兎に角低い。重心が低いの
 である。

 そうかと思うと、重心の高い町屋も存在する。軒先付近の2階
 でも、充分に人が立って生活出来るほどの高さが確保されてい
 る。まあ、現代の住宅と変わらない。

 この二つが同時に存在する地域もある。すると、軒先の連なり
 は必然的に凸凹になる。景観が揃わない状態になっている。多
 分、重心の高い建物は、大正頃のものかと思われる。より近代
 に近い建物である。近代に近いといっても築年数は結構経って
 いるのだが。

 なぜ、このような状態に陥ったのか、想像はつく。建替え時に、
 近代建築の様式が入ってきたりして、住み安さや合理性を考え
 ると、重心が高い方が良いことに気付いたのだと思う。平入り
 というデザインコードも、重心の高い建物では踏襲されていな
 い。入母屋だったり、寄せ棟だったりする。なので、奥に行く
 ほど、無闇に建物が高くなることは回避出来ている。

 さて、何故このような話しを書いたのか?

 単純に気になったということもある。
 軒並みの足並みが街並みに影響を与えているということもある。

 軒を揃え続ければ良かったのに。などと勝手なことを思う。街
 並みが揃わないのは、スカイライン(屋根や軒の高さ)がピシ
 ッといってないからだとも思う。かつては揃っていたであろう
 スカイラインが一度崩れ出すと、そこにはもう「基準となるス
 カイライン」は存在しなくなる。街並み崩壊の一途である。

 まあ、そういうことも言いたいこととしてはあるのだが、一番
 言いたいのは、重心の低い建物は落着くということである。

 「重心」というのが、ポイント。階数が高くても重心の低い建
 物は数多く存在する。

 今、重心の低さが、どうやれば表現できるのかを考え中である。
 窓を低い位置に設けたり、軒を低く見せてみたり、色使いを考
 えてみたり。

 なので、自転車で移動中は、やたら重心の低い建物に目が行く
 のである。

 はい。そんなお話しでした。

 重心の高い低いはそれぞれ好みの問題になるとは思うが、街並
 みとのバランスも大切だと思っている。
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■編集後記

 重心の位置は、何も外観に限った話ではありません。

 部屋の中でも同じことを考える必要があります。

 重心を低くすべきか、高くすべきかは、その部屋の使い方や

 過ごし方によっても変わってきます。

 そして、光(照明・窓)の位置によっても重心が高くなったり

 低くなったりします。

 昔は畳に座る生活でしたので、椅子に座る生活よりも必然的に

 重心は低くしておきたいという意図もありました。

 重心の高さを徹底的に考えるだけでも、他にはない空間が創出

 できたりもします。

 そんなお話しは、また次の機会に覚えていれば書いてみたいと

 思います。

コラム | by muranishi | comments(0)

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