空間工房 一級建築事務所

HOME > MESSAGE
10.06.07 Monday

曖昧な空間

■自分が経験したり、体験してきたこと。これは、設計を進める

 上でも、少なからず脳裏を横切ります。

 自分の体験は凄く狭い。ということは承知しているつもりです。

 ですので、出来るだけそこに想像を加えて、色々なシチュエー

 ションをシミュレートしながら設計に取組んでいます。

 それでも追いつかないことが起きるのが常ですが・・。

 今回は、とある住宅を考えつつ、その住宅だけではない事象を

 記述していきたいと思います。

 それではどうぞおたのしみください。
_____________________________

■曖昧な空間

 今、一つの住宅のプランを練っている。

 ある住宅の思考過程シリーズでも良いのだが、今回は特にこの
 住宅に限った話しでもないので、タイトルを付けて書くことに
 する。

 今考えている住宅。ご夫婦+子供が3人の5人家族である。普
 通に考えれば、子供部屋が3部屋必要なのかもしれない。

 面積的には充分3部屋を確保することは可能である。

 ただ、一つ考えなければいけないことがある。ご要望でもあっ
 たのだが、子供が小さい内は3人一緒に寝る習慣があるとのこ
 と。まあ、これだけなら、最初は大きな空間にしておいて、子
 供の成長に合わせて間仕切れるようにすれば済む話しではある。
 
 ただ、3人の距離感は2人の距離感と微妙に異なる。もっと言
 えば、3人兄弟と2人兄弟では違う。と思う。

 私自身が3人兄弟なので、その微妙な距離感は心得ているつも
 りである。

 2人兄弟の場合、A+B=2である。各個人で別々の場所に居
 るか、2人で一緒になって遊ぶかのどちらか。つまり2通りの
 シチュエーションしかない。

 それが3人兄弟だと、A+B+C=3。なのだが、A+BとC。
 A+CとB。AとB+C。AとBとC。なので、合計5通りの
 シチュエーションが存在する。

 1人増えただけで、生活におけるシチュエーションは格段に増
 える。格段とまではいかないかもだが。

 そんな3人兄弟。ただ、今回は真ん中の子が女の子。同性3人
 よりも複雑なのである。

 年頃になれば、3人一緒に寝ることなんてあるのだろうか?そ
 こからして疑問である。同性であれば、そんなことは考える必
 要もない。

 受験勉強だって、迎える時期はバラバラ。集中しなければなら
 ない時期に、隣で騒がれていればたまったものではない。年頃
 になれば、着替えるのだって見られたくないだろう。多分。

 何がそんなに問題か?3部屋確保すれば済む話しではないか?
 と思われる方が殆どかもしれない。確かにそれで良いのかもし
 れない。

 ただ、もっと成長した時のことを考えてしまうのである。細切
 れに区切った部屋が3つ。兄弟はやがて成人する。いつまでも、
 この家に居続けることは、可能性としてはあるが、低い。とす
 れば、誰かは独立して家を出て行く。独立しないまでも、大学
 生になれば、遠くの地で下宿を始めるかもしれない。すると、
 部屋は余る。特に使い道のない部屋が増える。

 それで良いと言われればそれまでである。

 が、確実にホンの10年程度先にそうなる可能性があるとする
 ならば、今から考えておくべき事項だと個人的には思っている。

 なので、ただ区切りました。仕切りました。では何か納得行か
 ないのである。

 そこで考えているのは、凄く曖昧な区切り方。曖昧なつなぎ方。

 先々のことも上述のように大切である。しかしもっと大切なの
 は、今たちまちのことでもある。将来を優先して、今をないが
 しろにしたのでは、本末転等。そうならないための工夫や仕掛
 けが、今回の住宅には絶対に必要だと考えている。

 曖昧な空間が何を生み出すか?何を意図して曖昧な空間とする
 か?それが今回の肝。

 一人になりたい時になれる。皆で一緒にいたい時に居られる。

 これが、普通なら、一人になりたい時に子供部屋に行き、皆で
 一緒に居たい時にリビングに集まる。というカタチになるのだ
 ろう。

 それでも良い。が、両親の居ない「自由さ」。これも結構大事
 だったりする。兄弟同士の絆は、両親の目の届かないところで
 育まれたりもする。子供だけの世界が必要だったりもする。

 まあ、各家庭で教育方針はバラバラなので、何が良いとされる
 かは一定ではない。だから、両親の目が届かないなんてもって
 のほか!とされる時もあるだろう。しかし、兄弟だけのエリア
 /コモンスペースというものは、「子供部屋」というプライベ
 ートスペースよりも、親にとっては格段に足を踏み入れやすい。
 そういう意味でも、「プライベート」か「パブリック」かよく
 分からない曖昧な空間というのは、有効であると考える。

 さて、そんなこんなを考えつつ、曖昧な空間に収斂させていく
 方向で、プランは出来上がりつつある。

 将来的に間仕切ろうと思えば間仕切れるが、多分そんな必要も
 ないような空間だと思っている。

 結果はどうなるか分からない。しかし、ステレオタイプ的な提
 案をするよりは、はるかに意義があることだと思っている。提
 案しなければ、先はない。であれば、提案するのみである。

 今はまだ私も2人の子持ちである。でも3人となるかもしれな
 い。自分が3人兄弟であること。そんな子供だった頃の目線と、
 自分に3人の子供がいたら?という親目線を、行きつ戻りつし
 ながら、考えをまとめている最中である。

 想像も創造も似ている。

 どちらも、未だ見ぬ何かと向かい合っている気がする。
_____________________________

■編集後記

 今回のプランには、多分構造家の力が大きく必要な気がして

 います。特殊な構造をするわけでは決してありません。

 どちらかと言うと、凄く昔ながらの手法だと思っています。

 面剛性で考えるというよりは、軸力で解いていく感じ。

 一般の方にはよく分からない単語かもしれませんので、分かり

 やすく言い換えます。

 (耐力)壁で持たすというよりは、柱と梁だけで持たすという

 感じ。です。

 実現できれば良いのですが、こればかりは進めていかないと

 分かりません。

コラム | by muranishi | comments(0)

コメントをどうぞ

空間工房 用舎行蔵 一級建築士事務所
住所:〒602-0914京都市上京区室町通り中立売下がる花立町486
TEL:075-432-3883
FAX:075-334-8051
ALL CONTENT COPYRIGHT 2012(C) KUKANKOBO YOSYAKOZO ARCHITECYS OFFICE ALL RIGHTS RESERVED