空間工房 一級建築事務所

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10.05.28 Friday

未来的なもの/古典的なもの

■結婚式の披露宴スピーチで大学の先輩/先生にあたる建築家
 
 から「頑固者」と言われた憶えがあります。

 「何を言い出すんだ、この人は?!」と思いましたが、続き

 があります。

 「建築は設計から竣工まで少なくとも1年以上掛かります。

 その長い期間の間に、自分が設計した内容/考えをコロコロ

 変えるようでは、誰もついて来ない。そもそも、その程度の

 考えで設計してはいけない。だから設計者は頑固者でなくて

 はいけないのです。村西君はその素質が備わっています。」

 褒められているのか、けなされているのか良く分からないス

 ピーチでしたが、当時はまだ独立したてでしたので、経験者

 が言われるのだから、多分そうなのだろうという程度に受け

 止めていました。

 そんな前置き。さて、関係あるものやらどうやらは定かでは

 ありませんが。

 それではとりあえずおたのしみください。
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■未来的なもの/古典的なもの

 前回のコラムでも触れたが、職業柄どんどん本が増えていく。

 本とは主に建築雑誌関係。毎月発行されるものから、月に2回
 発行されるもの、時々で気になったものに至るまで色々とある。

 専門色の強いものもあれば、素人の方が見ても楽しい内容のも
 のもある。

 その中でも毎月発行される住宅特集という雑誌。雑誌にしては
 少し値段が高いので、あまり一般の人は手に取らないかもしれ
 ない。独立前のものも含めると、だいたい20年前の住宅特集
 も置いている。毎号ではないが。

 あまり昔のものは見ることはないのだが、たまに何気なく見る
 ときがある。10年や20年という単位で昔に遡って見ると、
 それはそれで面白い。何か流行りがあるような、時代の潮流が
 あるような気がしないでもない。

 その時々で、最新の住宅・話題の住宅が紹介されている雑誌で
 ある。そのため、色々な建築家が色々な試みをしたり、様々な
 素材を取り入れたりしているのが解る。

 その当時は「最先端だったんだろうな」とか「未来的な住宅だ
 な」と思うものもあれば「オーソドックスだな」とか「何か落
 着くな」といったものもある。

 そして、こう思うのである。

 その当時に未来的なもの。未来的に感じさせるもの。そういっ
 たものは、あまり魅力的でない。と。勿論ごく個人的な感想だ
 が。
 
 何をもって「未来的」とするかも、主観でしかないのだが、何
 か自然素材ではないものを多用したり、街並みから突出しすぎ
 ていたりするものとでも言おうか。言葉にすればシャープな感
 じとか、クールな感じとか。

 未来的なものは、10年や20年経った今、既に過去的なもの
 にしか見えなかったりするのである。その当時の最先端が常に
 どの時代も最先端であり続けることは、まず不可能だと思う。
 技術は日進月歩だし、素材や建材も開発は日々進められている。

 だから古典的なものが良い。というつもりは毛頭ない。古典的
 なものが落着くのは確かだし、安心感/安定感があるのも確か
 である。良い部分はある。が、やはりそれだけでは、面白みに
 欠ける。進歩がない。といった負の側面も持ち合わせている。

 建築家がどこを狙うかと言えば、普遍的なラインを狙うのだと
 思う。目新しさや既製概念を覆すものは、恐らく世の中に数多
 くあるものと思う。が、誰も真似出来ない/したくない設計が
 最善かというと、少し疑問を感じる。単に既成概念が覆れば良
 い訳でもない。

 「新しい考えだね~」というものが、常に「新しくあり続ける」
 ことが出来るか否か。そこがポイントなのだと思っている。

 目新しいものを普遍的なものに出来るか否か。10年、20年
 経っても「新鮮さ」を失わないもの。そんな空間が理想である。

 言葉で言うのは簡単である。「言うだけ」なのだから、実態は
 伴わない。それを空間に置き換えていくのが、建築家の成せる
 技だと思う。

 新たな設計に取り掛かる時、「何か新しい発想はないか」「何
 か新しい試みは出来ないか」「世の中にないもの」「今まで誰
 も見たことがない空間」「あったら気持ち良い空間」・・・な
 どといったことを考えながら紙と向き合う。

 そこに「普遍的な魅力」「誰もが真似したくなるような仕掛け」
 といったものも埋め込んでいかなければならないと最近は感じ
 ている。

 それがやがて、古典的なものになるか普遍的なものになるか。

 それはどちらも設計者冥利に尽きる話しだし、辿りつこうと思
 って辿りつける領域ではないことも容易に想像出来る。が、ど
 ちらを目指したいかと問われれば、やはり「普遍的な魅力」を
 持つ空間を目指したい。時代に流されない魅力を。

 一種の妄想である。しかし、妄想がなければ実現もない。人は
 意思を持った方向にしか進めないのだから。と、言い訳をして
 みる。まだまだその領域には到達できないので・・。
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■編集後記

 設計してから約3年経とうとする住宅が、そろそろ/ようやく

 上棟を迎える一歩手前まできました。

 普通の住宅では考えられない時間の経過ではあります。まあ、

 実際に規模も大きいのですが。

 その間、出来上がったプランは勿論変わっていません。

 頑固者ですから。

 まさかスピーチの内容を身をもって体験するとは思ってもいま

 せんでしたが、これが頑固者の成せる技なのかどうかは不明で

 す。

 それにしても「頑固者」ってあまり良いイメージ/印象では

 ない気がするのですが・・・。

コラム | by muranishi | comments(0)

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