空間工房 一級建築事務所

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10.01.25 Monday

カーボン・ニュートラル

■100年後の地球の温度は1.4~5℃位上昇するらしいです。

 最近の天気。大寒だというのに、春のような気温だったり

 夏場のゲリラ雷雨だったり、じわりじわりと温暖化の影響を

 肌身で感じる位にまでなってきました。

 最近、「カーボンほにゃらら」という言葉をよく耳にします。

 地球温暖化防止には、この「カーボン」という言葉が一つの

 キーワードになっている気がします。響きは「バカボン」と

 非常に似ていますが、全くの別物です。(そんな説明はいり

 ません)

 さて、今回はそんな「バカボン」いや、「カーボン」について

 少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■カーボン・ニュートラル

 「カーボンニュートラル」という言葉/概念をご存知だろうか?

 地球温暖化防止に貢献するという意味合いで、最近耳にする方
 も多いかもしれない。

 用語の定義はWikipediaによると、こうである。

 「カーボンニュートラル (Carbon Neutral) は環境化学の用語
 で、直訳すればカーボンは炭素、ニュートラルは中立なので「
 環境中の炭素循環量に対して中立」となる。何かを生産したり、
 一連の人為的活動を行った際に、排出される二酸化炭素と吸収
 される二酸化炭素が同じ量である、という概念。」

 わかりにくい・・。なんのこっちゃ?である。

 わかりやすくするために、一例を取って説明をする。

 「薪ストーブ」という言葉/概念をご存知だろうか?

 Wikipediaによると・・・。いや、Wikipediaに頼りすぎるのは
 よくない。というか、ご存知だと思う。薪をくべて暖をとる器
 である。私達も何度か設計した住宅に取り入れたことがある。
 ので、私達はよくご存知である!(なにもビックリマークをつ
 ける程のことではない)

 この薪ストーブが、カーボンニュートラルである。以上説明終
 了。・・・だめ?ですよね。

 暖を取るために薪を使う。燃やす。これだけを見ると、二酸化
 炭素が発生し放題なので、何が地球温暖化防止だ?!と思って
 しまう。しかし、本題はここからである。その薪、即ち材木や
 そのかけらであるが、要するに植物が原料である。植物を育て
 る時、光合成をする。小学校で習ったアレである。この光合成、
 ご存知の通り、二酸化炭素を吸収して行なわれる。そして酸素
 を放出する。つまり、育てる際に吸収した分を、燃やす時に排
 出しているだけだから、トータルの二酸化炭素量は増えも減り
 もしていない。これが「カーボン・ニュートラル」の概念であ
 る。

 さらに、次の薪を用意するために、植物を育てる→二酸化炭素
 を吸収して成長する→薪にする。という永遠の連鎖がこの後に
 続くことを前提としていることを付け加えておきたい。そして
 さらに、木は放っておくと朽ちるが、その際にも二酸化炭素を
 放出してしまうということも書き加えておく。

 実際には、薪を輸送する時、人力で運べば問題ないが、自分の
 家に裏山を持っている人でない限り、トラックなどで運ぶ。外
 国の木だと、船や飛行機で運ぶ。これらの輸送時にガソリンを
 使っていると、それだけで「カーボン・ニュートラル」ではな
 く「「カーボン・ネガティブ」に陥ってしまうので、完全なニ
 ュートラル状態を実行することは困難である。

 さて、それでは一体何が言いたいのか?

 建築のお話しである。木造住宅。いわずもがなだが、木を大量
 に使う。そして、何十年か後にその使命を遂げ、解体される。
 この十年ほど前に、建設リサイクル法というものが施行され、
 実施されている。解体時に材料分別し、再利用・再活用できる
 ものはするという法律である。施行から10年も経っているの
 だから、一定の効果・実績はあると思う。(調べていないので、
 実際のところはわからないが)。

 ただ、これはどちらかというと「川下」の対処策にすぎない。
 建築時から最終の姿を考える「川上」的な法律は特に制定され
 ていない。(と思う)。最近話題の「長期優良住宅」などは、
 ストック型社会への第一歩として重要な政策であると思うが、
 「長期」と言えどもその住宅が「永遠に」建ち続けることは想
 像し難い。法隆寺レベルでない限り難しいと思う。

 なので、「川上」とは、建物トータルのライフサイクルを言わ
 んとしている。

 カーボン・ニュートラル的な視点に立って考える必要が、そろ
 そろあるのではないか。と最近になって漸く思い始めている。

 100年後の地球。それが存在しない限り、建築など存在し得
 ないのだから。

 では何が出来るのか?何が出来ないのか?

 出来そうなこと。国産材を使う。自然の素材を使う。土に帰る
 材料を使う。なるべく石油製品を使わない。バイオ製品を使う。
 再利用可能な工夫をする。LED照明を使う。長持ちする構造・
 デザインとする。ライフスタイルの変化に対応出来ることを前
 提とする。太陽光発電を取り入れる。太陽の恩恵を受けるプラ
 ンとする。昼間は照明を使わなくても自然光で生活できる空間
 とする。夏場の暑さ、冬場の寒さを和らげる工夫を施す。既存
 建物に手を加える。などなど。

 出来なさそうなこと。法律を制定する。国家レベルでカーボン
 ・ニュートラルに取組む。(ノルウェーやコスタリカでは取組
 まれているようだが・・)

 誰かが意識改革しなければ、この問題は解決し得ない。少なか
 らず、設計者としての立場から出来ることもあると思う。

 出来ることを少しずつでも増やして行きたい。「千里の道も一
 歩から」である。
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■編集後記

 夏場に、「エアコンつけてますか?」と、とあるお施主様から

 聞かれました。

 事務所は築80年の京町屋ですので、つけずにいたら熱中症に

 なる位暑さの厳しい(寒さも厳しい)状況ですので、「つけて

 ます」と答えたところ「温暖化に貢献していませんね」と冗談

 混じりに言われたことがあります。

 確かに、その通りです・・。

 事務所の改修時に断熱材をケチったのが響いています。

 温暖化防止とコストの問題も大きく関係しているのは事実です。

 その辺も踏まえた設計提案をしていく必要があることも、また

 事実としてあります。

 出来ること、すべきこと、した方が良いこと。それらをキチン

 と説明しつつ、設計という行為を進めて行きたいと思います。

コラム | by muranishi | comments(0)

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