空間工房 一級建築事務所

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10.01.20 Wednesday

これが最後。これが最初。

■設計という行為は「創造」する行為であると認識しています。

 時間やコスト、法規制など様々な縛りは勿論存在しますが、

 そういった縛りを潜り抜けて若しくは対峙して・受け止めて

 なお「創造」することが大前提だと考えています。

 次から次へと浮かぶアイデア。それは理想ですし、そういった

 時もあります。

 でも実際は「創造」の裏には「ひねり出す」感じが存在して

 います。

 「浮かぶアイデア」と「ひねり出す」感じ。

 いわば、それらがDNAのように二重螺旋的に織り成されて

 「創造」されるイメージかもしれません。

 それではどうぞおたのしみください。
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■これが最後。これが最初。

 建築の設計。壁にぶち当たる時が幾度となくある。

 多分それは、どのような仕事をしていても同じだと思うが、設
 計以外の仕事はアルバイト程度でしか経験したことがないので、
 あくまでも「設計」という目線から話しを進める。

 設計が進み、概ねそのカタチが図面となって、最終局面を迎え
 る時が必ずある。そしてそんな局面には、其々の部位の詳細
 (ディテール)を思考する作業を同時に進める。

 例えば玄関のディテールを考えている時、街中を歩いていても、
 お店で食事や買物をしていても、雑誌を見ていても、殊更「玄
 関」の造りに目がいく。多分傍から見れば「何をこの人は玄関
 ばかりジロジロ見ているんだろう?」と不審に思うと思う。そ
 れぐらい見る。時に触る。叩く。舐める。・・・いや舐めない
 舐めない。

 TVを見ていても、例えばドラマのセットに目が行く。時に話
 しの内容が頭から抜け落ちるほど気を取られる。映画にしても
 然り。

 そんなに落着かないのなら、仕事すりゃいいのに。と思われる
 だろうが、パソコンの前で熟考しているよりも、外部からの刺
 激を受けた方が良い時もあるので、俳諧する。何かを見る。

 「幽霊の正体見たり枯れ尾花」とは芭蕉の句である(らしい)。
 話しが飛躍しているが・・。ちゃんと話しは繋がる予定なので、
 ご安心を。
 (えっ?芭蕉の俳句だったの?!というところに食いつかない
 ように!)

 この俳句。恐らく、闇夜に「怖い怖い」と思っていると、枯れ
 た尾花さえも幽霊に見えてしまう。といった意味だと独断的解
 釈をしている。違っていたらゴメンなさいであるが。

 つまり、玄関ばかり考えている時は、玄関じゃないものまで玄
 関に見えてくる。末期症状である。遠目で何かの写真を見た時
 などその症状は顕著に現れる。近付いてよく見ると、食べ物が
 写っている写真だったりする。極端な例ではあるが。

 その建築にはどんな表情が似合うのか。色は?素材感は?カタ
 チは?・・・。誰も答えなど教えてくれない。だって答えなん
 て無いのだから。

 そして、その建築はこの世に一つである。既製品を使う場合は
 ともかくとして、だいたい造るので全てのディテールは考え出
 さなければいけない。産み出さねばならない。

 壁にぶち当たった時、いつの頃からか、こう思うようになって
 いた。

 「これが、設計する最後の建築だと思おう。」

 だから決してないがしろには出来ない。適当には済ませられな
 い。妥協はできない。してはいけない。と。

 そうして更に。

 「これが、最初の建築だと思おう。」

 出来上がった建築は、どこにもない、見たことがない「最初」
 の建築を目指そう。と。

 出来上がった時は、迷いのない建築が建ち上がっていれば良い
 と思う。その過程が、どんな迷いや壁にぶち当たっていようと
 も。

 一直線にゴールに辿りつくのが、多分誰しも理想である。でも、
 色々と思考錯誤の繰り返しをすることは、遠回りであっても決
 して無駄ではないと考えている。

 「これが最後。これが最初。」と思いつつ。

 これからも待ち受けているであろう、様々な壁と対峙していき
 たい。
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■編集後記

 一直線にゴールに辿りつく人を見るときがあります。

 それは、たまに一緒に仕事をさせていただく構造家です。

 凄い!と傍からみていて思います。要するに頭が切れる方です。

 多分あらゆる事象を同時に解析・分析する能力がズバ抜けて

 いるのだと思います。

 またの機会にそんな構造家のお話もできればと思います。

 それでは、今回はこの辺で・・。

コラム | by muranishi | comments(0)

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