空間工房 一級建築事務所

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10.01.18 Monday

ある建築家の言葉(5)

■ふとした瞬間に、凄く前に読んだり聞いたりした言葉を思い出

 すことはないでしょうか?

 記憶の片隅にかろうじて引っ掛かっていた言葉や文字。

 その当時は全く気にしていなかったものが、何故か浮かんで

 くる瞬間。

 何故浮かんでくるのかは分かりませんが、今回はそんな記憶の

 片隅から浮かんで来た言葉について少し。

 どんな展開になるかは、読んでのおたのしみ。

 それではどうぞおたのしみください。
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■ある建築家の言葉(5)

 今回は「建築家の言葉」シリーズの第5回目。

 京都に事務所を構える有名建築家は結構多い。今回はその中の
 一人。岸和郎氏の言葉から。

 といっても10年以上前に読んだ本なので、今現在考えられて
 いる内容とは違うかもしれないが・・。

 曰く「この雑然とした日本の都市景観。私はそれさえも、美し
 いものと捉えている。」

 一見、天邪鬼的発言である。「それさえも」と敢えて言ってい
 るところに「実は美しくない」という本心が隠されている気が
 するのは私だけだろうか?

 本心はともかく、現実社会を真っ向から受け止めることから、
 建築を進める思考回路はあまり真似出来ない。普通なら(私な
 ら)、「日本の都市景観はあまり美しくない」という批判的態
 度から入っていく。そして建築は、景観はどうあるべきかを探
 ろうとする。しかし、岸氏は間逆のアプローチの仕方であると
 ころが興味深い。

 実際の岸氏の設計事例を見ると、美しい。しかし一時期は「中
 庭」的空間を多様し、どちらかと言えば都市に背中を向ける格
 好で、その建築のみで確立されているような印象があった。

 都市に対して開くというよりも、閉じるイメージ。

 都市が美しいとするならば、積極的に開くべきだと考えるのだ
 が、どうだろうか。

 日本の都市は、一言で言えば「カオス」である。混沌とした印
 象。その混沌さの中に美しさを見出すことは、ぼんやりとした
 イメージ、「混沌」という言葉のイメージからは難しい。

 しかし、実際に街並みにあった速度。ゆっくりとした速度。歩
 く速度で眺めて見ると、各家々は花を飾ったり、掃除をしたり
 してキレイにすることに努めているのが分かる。一見雑然とし
 ているのは事実としてあるけれども、イコール汚いというわけ
 では決してない。

 そういった小さなことに目を向けることで、都市は美しいもの
 と捉えることも出来なくはない。

 そこから発想することで、即ち在るがままを受入れた上で設計
 を進めることで、見つかる答えもあるような気がする。

 具体的に「これ」というものは断言できないが、都市において
 は設計する住宅「のみ」で街並みが形成されるものでは決して
 なく、既存の街並みに身をおくことで、街並みの一員となる。

 街並みに同調することだけが正解ではないと思うが、突出しす
 ぎることは避けないといけない。異分子になってはいけない。
 良きランドマークとならなければいけないと思う。

 美しさを左右するのは、一体何なのか。

 統一感?カタチ?色?植栽?それとも見る人の主観?(それを
 言ってはお終いだが)

 こうして考えていくと、都市に対して開くも閉じるもあまり重
 要な問題ではないような気がしてきた。

 重要なのは、どのような都市を形成していきたいか。それに尽
 きる。

 一つの住宅、一つの建築物が都市の発露である。その集合体が
 都市であり、都市景観を形成していく。大は小を兼ねるけれど
 も、小は大を形成する。たかが住宅。ではないのである。

 そのことを肝に銘じつつ、住宅に、そして都市に向かい合って
 いきたいと思う。

 どのような都市を形成していきたいか。一つの住宅もおろそか
 にできない。その延長上に都市は確かに存在しているのだから。

 「この雑然とした日本の都市景観。それさえも美しいものと捉
 える。」・・・都市を意識しているが故の言葉だと思う。
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■編集後記

 現在、都市計画の依頼があるわけでもなんでもないです。
 (あったらビックリします!)

 なので、何故浮かんできたのかは不明です。

 都市計画。昔「シムシティ」というゲームがありました。

 仮想都市を作り上げていくというゲーム。

 大学時代の都市計画科の教授もお勧めのゲームで、一時期研究

 そっちのけで、皆ハマッテいた記憶があります。

 今もあるのかは不明ですが・・。

 建物を置いたり、道路を作ったり、線路を引いたり、住民税を

 決めたりして、住民が多くなればなるほど良いというルールの

 ものでした。

 都市計画と聞いてゲームを思い出すようでは、まだまだだなと

 思っています。

コラム | by muranishi | comments(0)

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