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10.05.19 Wednesday

ある建築家の言葉(11)

■建築家の講演会と言えば、何か堅苦しい話しを聴く印象を持た

 れる方も居られるかもしれません。

 私も色々な建築家の講演会を聴きに行きますが、おしなべて

 持つ印象は、決して堅苦しくはなく、面白いものです。

 そんな講演会の中でも、先日行った講演会は特に面白いもの

 でした。

 そんなお話しを今回は少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■ある建築家の言葉(11)

 先日、手塚夫妻の講演会に行ってきた。「屋根の家」や「ふじ
 幼稚園」などで数々の賞を受賞したことでも有名だし、情熱大
 陸などのTV番組でも紹介されていたこともあるので、ご存知
 の方も多いかと思う。青い服を着まわしているのが手塚貴晴氏。
 赤い服を着まわしているのが手塚由比氏である。

 講演の感想は「面白かった」。

 「興味深い」を越えて「面白い」。漫談を聴いているような感
 じであった。(多少語弊のある言い方かもしれないが)

 苦労話し(と感じた内容)を苦労話しとして聴かせない軽快な
 口調。全体を通して、軽い。設計されている建築物も軽い印象
 があるが、語り口も軽い。ソフトではなく軽やか。

 でも言われている内容は深い。

 そう感じた講演の中で、印象に残った言葉を書きとめておきた
 いと思って、今回のコラムである。

 一連の設計の裏話/エピソードから技術的解析の話しまで、内
 容は多岐に亘っていた。その中でも印象に残ったのは「建築を、
 より人に近づける。」「人が建築に染み込む感じ。」という内
 容である。

 SF映画などで描写される未来都市。それは、いかにテクノロ
 ジカルに現実離れして見せるか。に焦点が当てられてきたかも
 しれない。しかし、実際に目指すべき方向は、いかにテクノロ
 ジーを見せないか。いかに人間に焦点を当てるか。そこが大切
 だという話しだったと感じている。

 コンピューターの進化は凄い。コンピューターが無ければ今で
 は出来ないこともある。しかし、そのコンピュータという装置
 に人間が近付くのではなく、人間側に引き寄せる。それがこれ
 からは(も)大切なことなんだ。と。

 建築も同じ。如何に人間に近づけるか。如何に建築と人間を渾
 然一体としていくか。建築が生活を変えることも、意識を変え
 ることも、人の繋がりを変えることも、人の考えを変えること
 もありえるのだということ。建築にはまだまだ未知なる可能性
 が存在しているのだということ。そんなことを感じた講演だっ
 た。

 勿論そのような建築を創り出すには、人知れない努力や脳みそ
 が汗をかくほどの思考があるのだと思うし、そう簡単に実現出
 来ることでもないことは容易に想像がつく。

 でもそれを感じさせない建築。努力が滲み出ない建築。数々の
 テクノロジーに裏打ちされていることを感じさせないさりげな
 さ。途方もない苦労を見せることのない語り口調。そのどれも
 が魅力的に思えた。

 例えば壁がないスウスウした空間。あまりにも開放的な空間。
 手塚夫妻が良く使われる手法である。普通に考えれば、端から
 「あり得ない」と思うようなことを「実現するためには、どう
 すれば出来るか?」を徹底的に検証する姿勢が伺えた。単純だ
 が、多分地道でひたむきな「諦めない心」を持っていないと実
 現に漕ぎ着けることは出来ない。単純だが、その努力が出来る
 か出来ないか。そこにも岐路はあると思う。

 JIA新人賞を取られた「屋根の家」。今までで最も予算のな
 い住宅であるとのこと。コストを掛ければよい建築が出来るわ
 けではないことを教えられた。コストが少なくても出来ること
 があるということを教えられた。

 以前にも書いた話だが、面白いプロジェクトは舞い込んでくる
 のではなく、自らの手で面白いプロジェクトにしていく。レン
 ゾ・ピアノ氏の言葉。それを再び知らされた思いである。
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■編集後記

 だいたい、毎日「青い服・赤い服。子供も娘は黄色・息子は緑」

 なんてありえませんから!

 そこからして面白い。自ら「家族が集まれば信号機のようです」

 と仰っているから、少なくとも自覚はされているようです。

 そこまで徹底はできません。現場で被る自前のヘルメットまで

 青と赤。・・・そこまで拘る理由を単純に知りたい気がします。

 まあ、余談ですが。

コラム | by muranishi | comments(0)

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