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10.05.17 Monday

ビジョン

■家を建替え若しくは新築された経験はありますか?

 前の住宅/住居と比べて良くなりましたか?

 「良くなった」という方が大半だと思います。

 それでは、前の街並みと比べて良くなりましたか?

 これは難しい問題です。街並みが良くなったか否かには主観

 による部分が多いと思いますので。

 でも「新しく」なったことには間違いないと思います。

 その「新しさ」が街並みにどのような影響を与えているのか。

 今回はそんなことも考えながらのコラムです。

 それではどうぞおたのしみください。
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■ビジョン

 今回は地方新聞の記事を読んでいて思ったことを少し。

 地方新聞とは、京都新聞のことである。特性としては、京都の
 情報が多いことが挙げられる。全国紙に比べると、言葉は悪い
 が「どうでもよいこと」が大々的に紹介されたりしている。地
 方新聞ならではと言えばならではである。

 でも今回は「どうでもよいこと」ではない(と思われる)京都
 の情報に関して記述したいと思う。

 「100年後の京都の街並み」という記事である。日頃から少
 なからず未来の街並みを考えている設計者にとっては、興味を
 そそるタイトルである。

 概要は以下の通り。

 数年前から施行された、いわゆる京都の景観条例。賛否両論で
 始まったこの条例も今ではある程度の落着きを見せてきている
 と感じている。施行当初は「遅きに失した」とか「設計の自由
 が奪われる」とか「けらばの出まで制限されては、土地が有効
 に使えない」とか「いちいち駐車場に門構えをしてはコストが
 かかる」とか「色の選定幅が少ない」とか、まあ色んな意見が
 出た。「経済に与える影響が大きい」という意見もあった。建
 築基準法が大幅に改正されたのが、2007年6月20日。そ
 の数ヶ月後の9月に景観条例施行。基準法の改正だけでも住宅
 の着工件数は大幅にダウンしたのに、景観法まで施行されたら
 たまったもんではない。というのが業界の声だった。確かに経
 済的な打撃は大きかった。泣きっ面に蜂状態。

 ・・・あ!概要が書けてない。

 100年後の京都の街並みの概要は今度こそ以下の通り。

 景観条例の施行により、100年後の京都の街並みをシミュレ
 ートし公開する。高さや色の規制に従って、現在ある建物全て
 が入れ替わった場合、どのような街並みが展開されるのかを視
 覚化する。京都タワー・京都駅ビル・ホテルオークラの3大高
 層建築物が存続する場合としない場合もシミュレートする。こ
 れによって、景観条例が有する有効力をビジョン化し、京都市
 民が一定の目標に向かって街並み形成に協力していくことを目
 指す。といったもの。

 無事、概要が書けた。

 この取組み。京都市の取組みである。素晴らしい。

 ただ気になるのは、100年後の人口減少問題に一切触れてい
 ないということ。今の人口のまま、今の街並みを景観条例の規
 制に従って建物を入替えるだけ。「だけ」と言っては失礼極ま
 りないが。100年後の街並みを見せるより、100年前の街
 並みを見せた方が手っ取り早いのではないか?とすら思ってし
 まった。まあ、そんなことを言っては発展性がない/元も子も
 ないのでこの辺にしておくが。

 将来のビジョンを考える時、そこには今ではあり得ない技術な
 り手法/工法なりが存在すること、そして環境(人口も含め)
 が変わっていることを念頭に置く必要があると思う。あくまで
 それらは推測の域を出ることはないのだが、少なくとも想像を
 する努力を怠ってはいけない。と思う。

 100年後を考える時、100年前を考察することは決して無
 意味なことだとは思わない。そこには100年という確かな足
 跡が残されているからである。

 いつぞやのコラムにも書いたが、この100年の人口増加率と
 今後100年の人口減少率は見逃せない「問題」であると思う。
 現在の街並みは、現在の人口密度によって形成されているに過
 ぎない。

 そっくり今の建物が入れ替わったとする。そのビジョンが正し
 いのかを検証する必要もある。「こうなります」だけではなく、
 「こうなることによって」「落着いた感じになるでしょ?」な
 のか「今よりマシでしょ?」なのか「観光向きでしょ?」なの
 か。などなど。

 何故景観条例が必要なのか。それは、京都の昔あった姿。瓦屋
 根が軒を連ねる美しい風景がビル郡やマンション郡によって破
 壊されてきた。だから昔の姿を取り戻そう。空を取り戻そう。
 といった流れである。と思っている。しかも京都市内には歴史
 的建造物や文化遺産/世界遺産がそこかしこに点在している。
 大文字山を始めとした五山もある。鴨川も流れている。そうし
 た風景の邪魔をすることなく、建物は存在すべきだという主旨
 もあると思う。

 なので京都の住人はそれらを守る義務があるし、ある程度の犠
 牲を払う必要もあるのだろう。

 景観を維持保全するとは、そういうことなのだと思う。その中
 で建築を設計していくとは、新しい技術を取り入れつつ風景を
 守る一役を担うということなのだと思う。

 ビジョンは大切である。解読困難な条例文で言わんとするとこ
 ろが、一目瞭然となる。目指す方向の周知がしやすい。

 しかし、そのビジョンが正しいのかは常にチェックしていく必
 要もある。状況の変化に合わせた見直しも必要だと思う。仮に
 人口が減少して空き家が増加した時にはどうするのか。それを
 買い取るにも住人が減少すれば住民税による収入も減少し、買
 取りすらままなくなった場合どうするのか。郊外へ移転した大
 学/キャンパスを市内に呼び戻すのか。企業を市内に誘致する
 のか。観光ホテルだらけになった場合どうするのか。空洞化し
 た街を誰が面倒を見ていくのか。

 悲観的推測ではあるが、それもまた対応すべき事柄だと思う。
 誰のための街並みか。そこが一番重要だと思う。

 私が生まれてから約40年。(40年?!)昔の京都の面影/
 街並みはすっかり更新されているように思う。未来に引き継ぐ
 建築を設計する者として、成すべきことを改めて考えさせられ
 た記事であった。
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■編集後記

 街並みを良くするためには協調性/個人の犠牲も時には必要

 なのかもしれません。

 ただ「良い街並み」が誰にとって「良い」のかは難しいところ

 です。住む人・訪れる人双方にとって「良い」のが一番だと思

 います。

 法的にクリア出来ていればそれで「良い」とはならない筈です。

 ただ「年月を経るごとに、良くなる」のが理想であると思って

 います。それは、「個」にとっても、「都市」にとっても。

コラム | by muranishi | comments(0)

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