空間工房 一級建築事務所

HOME > MESSAGE コラム > ある住宅の思考過程(3)
10.05.14 Friday

ある住宅の思考過程(3)

■エスキスという言葉をご存知でしょうか?

 設計者であれば誰もが知っている言葉だとは思いますが、一般

 の方には馴染みが薄い言葉かもしれません。

 エスキスとはフランス語。英語で言えばスケッチのことです。

 何故フランスでいうのかは知りませんが、エスキスをするとは

 設計を進めていく上で、ぼんやりと頭に浮かぶイメージを描い

 ていくことで、あるカタチにしていく作業だと言えます。

 大概は「絵」を描くことでエスキスを進めていくのですが、中

 には「文字」でエスキスを進める設計者も居るかと思います。

 今回はそんなエスキスをライブでお届けいたします。

 勿論、「文字」の方で。

 それではどうぞおたのしみください。
_____________________________

■ある住宅の思考過程(3)

 今回は新たな試みをひとつ。

 「ある住宅の思考過程」は不定期の連載で書いているのだが、
 (といってもまだ2回しか書いていないのだが)今回はコラム
 を書きながら、ある住宅の一部分を検討していきたいと思う。

 その住宅とは、現在進行形(工事中)の住宅。

 敷地の一角の設えをどうするか?というものである。

 当初は盛土+芝生の予定だった。ただ、盛土をする高さは少な
 くとも道路面より3m程度あり、少なからず威圧的な構えとな
 る。そこで、建物側は3m・道路面は2m程度になるよう盛土
 自体を道路に向かって斜めに傾斜させ、緑(芝)を道路から目
 に付きやすくすることで、擁壁の威圧感を和らげると共に街並
 みに緑の潤いをもたらせるようにした。

 ひとまずは上記のようなカタチで落着いたのだが、隣地新築住
 宅の駐車場がそのすぐ脇に配されることが判明した。

 お施主様としては、隣地駐車場の出入りに当該敷地の盛土擁壁
 が視覚的に邪魔となり、出会い頭の事故を避けたいとの想いが
 湧いてこられた。

 道路面から建物本体までの距離は、最短で3m程度。最長で5
 m程度。今回の課題は、その台形をした敷地の一角の設えの話
 しである。

 当初案も残しつつ、他に良い設えはないものか?

 それが課された課題である。

 一つには、盛土を止めて道路面とレベルを揃え、空地状態とし
 てシンボルツリーを植えるというシンプルな設え。

 もう一つには、ひな壇状にして、隣地駐車場からの死角を解消
 すると共に、ひな壇に植栽を施すことで潤いを確保しつつ、設
 えを整えるというもの。

 いずれもCGパースを起こしてみて検討した。

 シンボルツリー案は非常にシンプルである。ただ、メインアプ
 ローチとなる階段が(道路から玄関ポーチまで登っていくのだ
 が)、今度は凄く目立ってくることになる。階段手摺を壁では
 なく、透けた素材にするなどした方が良い気もする。ただ、防
 犯面で少し貧弱になる気がしないでもない。

 ひな壇案は見た目は良いと思う。ただ、道路からひな壇を伝っ
 て登っていけなくもない。こちらも、やはり防犯面で難有りと
 いった感じがする。

 第三の案をここで考えて行きたい。

 課題と目的を羅列する。

 ・道路面からの高さ約3m→威圧感を和らげる
 ・隣地駐車場からの死角→死角をなくす
 ・緑を施す→街並みに潤いと建物本体からの目隠しを兼ねる
 ・防犯→防犯面をケアする
 ・全体像のバランス→建物本体と乖離しない
 ・メインアプローチの階段との取合い→階段を突出させない

 ざっとではあるが、以上のような課題と目的がある。

 死角をなくすためには、隅切りを施すことも考えられるのだが、
 恐らく完成形は美しくない。と思う。なので、高さを抑える方
 向若しくはセットバックさせる方向か。高さを極端に低くする
 と防犯面が心配となる。登っていけない高さ。若しくは登ろう
 とすると明らかに不審者とみなされる高さ。1.5m程度か。
 植栽は高めの木が理想である。地盤が斜めでも木の成長には影
 響ないだろうが、メンテナンスが少しきつくなるかもしれない。
 足場が斜めだと剪定作業も厄介かと思われる。全体像・アプロ
 ーチとの取合いを考えると、そんなに目立って欲しくない気が
 する。余計なことはしない方がスッキリとする。なのでひな壇
 案はその意味でも却下か。全体のバランスからすると唐突に過
 ぎる気がしてきた。

 考えを総括すると。

 道路面から1.5m程度の地盤を道路から少しセットバックさ
 せて造る。死角を抑えつつ、防犯に配慮が出来る。地盤はフラ
 ットに。玉砂利+シンボルツリーで、枯山水的な設えとする。
 芝生のメンテナンスを回避し、樹木のメンテナンスのみ行なう。
 玉砂利は白。白と緑のコントラストを目指す。爽やかで潤いの
 ある感じ。1.5m程度の高さであれば、それほど威圧感も出
 ないだろうし、盛土面から建物本体までの高さも1.5m程度
 となるので、頃合いは良いかもしれない。極端に高過ぎず、低
 すぎず。アプローチ階段もさほど突出してこないと思われる。
 シンプルに。バランス良く。

 さて、これで一度CGパースを起こしてみようと思う。

 イメージ通りか否か。確認をしてみる。

 CGを見て、当初案の方が優れているなら再度検討をするまで
 である。

 仕事に戻る。
_____________________________

■編集後記

 大学学部生時代の卒業論文テーマは「エスキス段階における設

 計方法に関する研究・思考プロセスの分析」というながーいタ

 イトルでした。スケッチによるエスキスを「言葉を発し」なが

 ら描いてもらうことで、思考が収斂していく様子を客観的に分

 析し、思考のプロセスパターンを探るというもの。

 当時の講師だった難波和彦さんや新居千秋さんにも参加して頂

 いて、思考を探った記憶があります。

 非常に懐かしい想い出ですが、結論は複雑怪奇でした。

 ただ、学生にも参加してもらっての実験だったのですが、やは

 りプロとアマには歴然とした違いがあったことを覚えています。

 どんな違いか?・・・・・

 詳しくはまたの機会に。(決して、忘れたわけではありません。

 決して・・・)

コラム | by muranishi | comments(0)

コメントをどうぞ

空間工房 用舎行蔵 一級建築士事務所
住所:〒602-0914京都市上京区室町通り中立売下がる花立町486
TEL:075-432-3883
FAX:075-334-8051
ALL CONTENT COPYRIGHT 2012(C) KUKANKOBO YOSYAKOZO ARCHITECYS OFFICE ALL RIGHTS RESERVED