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10.05.07 Friday

ある建築家の言葉(10)

■歴史を塗り替えることはできます。

 新たな歴史の一ページをつくることもできます。

 でも、歴史を変えることって出来ると思われますか?

 なんだか怪しい話しだな~と思われた貴方。普通の感覚だと

 思います。

 でも世の中には凡人では考えられない/発想できないことを
 
 サラリと言ってのける人がいることも事実です。

 決して怪しいマジシャンなんかではありません。

 さて今回は目からウロコのお話し(私にとってですが)を少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■ある建築家の言葉(10)

 シリーズ化でお送りしているコラム。今回は、記念すべき2桁
 目である。(単に10回目というだけなのだが。まあ、取りあ
 えず自分に弾みをつけるという意味で、2桁突入!といってみ
 た。)

 突然ですが、皆さんは「歴史」と聞いて何を思い浮かべられま
 すか?

 今、流行りの幕末。という方もおられれば、ローマ時代などの
 世界史。三国志が活躍した中国史。はたまた卑弥呼の時代まで
 ・・。それこそ人それぞれにイメージされる時代があることと
 思います。

 建築の世界にも「建築史」という分野が存在します。世界の建
 築を時系列的に並べたり、日本の建築様式を見比べたり、はた
 また日本と世界の同時代の建築を比較したりしながら、過去の
 設計事例を勉強/研究するというもの。

 私達の大学時代にも建築史の授業がありました。主にスライド
 を見ての学習。過去から近代まで順を追って建築様式や建築に
 対する思想の生い立ち/流れを学ぶというものでした。学校に
 よって建築史に力を入れるところと入れないところがあるかも
 しれません。しかし、どんなに力を入れないとしても、近代以
 降で最も強調される建築家「ル・コルビジェ」や「ミース」に
 触れない学校/先生はいないかと思われます。

 コルビジェは近代建築5原則を発案したことでも有名ですし、
 安藤忠雄事務所で飼っている犬の名前になっていることでも有
 名です。(あまり有名じゃないかもですが)

 5原則とは「自由な平面」「自由な立面」「ピロティ」「横長
 窓」「屋上庭園」の5つ。建築学科の学生なら嫌でも耳にする
 内容です。そしてその5つを体現しているのが、フランスにあ
 る「サヴォア邸」。建築学科の学生なら誰もが一度は訪れたい
 と思う建築かと思います。

 私も大学院時代に研究室の仲間3人とフランスを訪れた記憶が
 あります。(仲間3人の内1人は、今の設計事務所の共同代表
 でもある河野ですが・・。腐れ縁ってやつですか?って誰に聞
 いているのかは自分でも不明ですが)
 残念ながら、その時はサヴォア邸まで足を伸ばす余裕が、時間
 的にも金銭的にもありませんでした。今思えば、行っておけば
 良かったと臍を噛む思いです。

 さて、今回の建築家の言葉は、そのコルビジェ氏から少し。

 とあるインタビューで「あなたにとって歴史とは何ですか?」
 と聴かれた際に答えられた内容。

 曰く「歴史とは新しいことを成すことである。」

 このたった数文字のやり取りだけでも、コルビジェが凡人でな
 いことがお分かりいただけるかと思う。

 少なくとも私には、そのような答えは思いつかないし、考えが
 及びもしない。

 私(=凡人)が「歴史」と聞いて思いつくのは「過去」の出来
 事にすぎない。

 しかしコルビジェは「歴史」を自分の懐に手繰り寄せた上で、
 「未来」を見ているのである。若しくは、自分も「歴史」の一
 員であることを自覚しているのである。

 歴史とは決して過去の出来事なんかではなく、脈々と受け継が
 れていく時間の蓄積の繰り返しであって、自分も数年後・数十
 年後・数百年後には、その歴史に取り込まれる。だから「新し
 いことを成す」ことで歴史を刻む必要があり、決して過去の模
 倣や真似をしていてはいけない。という意味だと思う。

 脱帽である。

 歴史なんぞは変えられない。と思うのが普通であると思う。
 しかし、未来にとっての現在は確かに過去であり、歴史である。
 であれば、「歴史は変えられる」とも言えるのではないだろう
 か。

 歴史を替えることがイコール偉業。であるかどうかは、別の話
 しではある。戦争なんて偉業でもなんでもない。と思う。

 しかし、新たな価値創造や新たなパラダイム(モノの見方や捉
 え方)を発案/発見していくことは、間違いなく偉業であると
 思う。

 コルビジェが発案したのは近代建築5原則だけではない。モデ
 ュロール(人間が片手を挙げた絵=人体の寸法と黄金比から作
 った建造物の基準寸法の数列)然り、集合住宅然り。(正式に
 は違うかもしれませんが)である。

 確かに「新しいことを成した」と言える。少なくとも、建築/
 設計業界への影響は多大であることは間違いない。

 新しいことを成せるか成せないかは別としても、歴史は決して
 過去のものではないことを意識する必要があるように思った。

 今という時代は未来に繋がっている。特に建築は、その射程距
 離が長い。一度建つと商業建築でもない限り、数十年先まで建
 ち続ける。ということは、数十年先の街並みを担うことに他な
 らない。それは望もうが、望むまいが、建築の持っている使命
 /運命でもある。

 設計をする以上、その辺りに目を背けてはいけない。と思わさ
 れた一言でもある。
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■編集後記

 建築物/建造物の寿命が長いことは概念では分かっています。

 でもそれを自分が設計した建築で実感することは、なかなか出

 来ません。

 なぜなら、設計を生業とし始めて僅か15年そこそこですので。

 でもそんな無責任なことを言うつもりもありません。

 上のコラムで、数十年先の未来に、設計した建築物は繋がって

 いるのだという事実を再認識した次第です。

 変わらない信念を持つこと。自分も歴史の一員であり、設計し

 た建築物も長い歴史/風景の一員であるということ。そんな

 当たり前のことを、これからも忘れずに設計活動をし続けてい

 きたいと思います。

コラム | by muranishi | comments(0)

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