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01.07.14 Saturday

祇園祭と京町屋

 京の夏の風物詩、祇園祭。「日本三大祭り」の一つとして、全国にその名は知られていることと思います。毎年7月17日が山鉾巡行の日となっています。鉾町に保存されている、山鉾と呼ばれる様々な特徴ある山車が、町衆やボランティアの皆さんの手に引かれて祇園界隈を練り歩く姿は、一種荘厳な雰囲気を醸し出し、人々を魅了します。特に「辻回し」と呼ばれる、山車の独特な方向転換のやり方は必見です。江戸時代以来約300年間に渡って、女人禁制で女性は裏方にまわっていましたが、21世紀を迎えた今年からは、女性も山車に乗ってお囃子を演じる姿が復活する予定です。
 
‘コンコンチキチン…’という涼やかな鐘の音と共に鉾が巡行する本番前日や前々日は、宵山、宵々山と呼ばれています。そして今日は宵々山?。夕方頃からは京のメインストリートでもある河原町通りや四条通りなど、付近の道路は歩行者天国となり、浴衣姿となった近所の人々や観光客でごった返す光景が繰り広げられることでしょう。京都特有の路地空間の隅々にまで人々が溢れる光景は、さながら通勤ラッシュの朝の新宿駅にも勝ると言っても過言ではありません。なにしろ、人の流れも普段使われている「一方通行」の交通標識に従って進まなければならない程ですから!!

 
 そんな光景の中、祇園祭の開催に合わせて年に一度、中京(なかぎょう)界隈に今も姿を残す古い町屋の主人衆が、各家に古くから伝わる屏風や几帳といった品の数々を展示し、町屋を解放します。普段見ることができない、町屋の内部をギャラリー空間として直に体験できる貴重な数日間でもあります。町屋特有の縦格子越しに垣間見る風景。普段は外から中が伺えないよう、擦りガラス等が嵌められていますが、この時はハレの場とばかりに、取り払われます。町屋の中から、外を行き交う人々の流れを見るのもまた一興と言えます。ただ、縦格子があるだけなのに、何故か人々の喧騒が遠くに聞こえるような…。雑踏の気配が間接的に感じられるような…。なんとも不思議な感覚にとらわれます。さらに路地(通り土間と呼ばれる町屋内の通路)を、奥へと進めば水打ちされた坪庭が眼前に広がります。’鰻の寝床’と称されるように、間口に比べて奥行が極端に長い区画割の敷地に建てられた町屋に施された、通風や採光の装置が坪庭であるとも言えます。そんな空間にも昔の人の知恵が垣間見られます。京都は盆地であるため、夏は空気が鉛のように身体にまとわり付き、冬は身体の芯から凍えるように寒い土地柄です。そんな土地で生活して行く基盤としての住宅には、長い年月をかけて改良に改良が重ねられたことでしょう。エアコンが普及し、断熱性や密閉性が昔と比べて格段に良くなった現在では、哀しいことに町屋の姿が確実に減りつつあります。実際にそこで生活する人々に対して、周りの人間が「壊すな」などということは決して言えません。

 
 しかしここ数年、「町屋再生」ともいえるブームが京都のいたる所で見受けられます。古い町屋を住宅としてではなく、喫茶店やギャラリー等といった商業施設として再生・再利用しようというムーブメントです。うなぎの寝床という特徴を活かして、一つの町屋に数件のテナントが奥行方向に軒を並べる手法も、そのうちの一つです。前面道路からその全貌は把握出来ませんが、路地を入って行くと様々な顔を持った店舗が並ぶ、異空間です。町屋存続の方法が形として現れている好例だと思います。完全に取り壊してしまうよりは、断然良いと思うのですが。皆さんはどう思われますか?また京都にお越しになる際は、社寺仏閣のみならず、そんな町屋の再生された姿にも一度足をお運びください。心が和み、癒されますよ。

 参考までに、そんな町屋再生店舗の一例を以下に御紹介しておきます。

     堺町画廊 : http://www.h2.dion.ne.jp/~garow/

コラム | by muranishi | comments(0)

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