■建築には流行り廃りがあります。
ゴシック建築・アールヌーボー・機能主義・モダニズム・ポス
トモダン・・・歴史を紐解けば時代により主流となった様式は
様々です。
日本に於いても然り。寝殿造り・書院造り・神社仏閣・町屋等。
しかし、各々の時代をくぐり抜けて今も人々に愛される建築と
いうのは確かに存在します。
えらく大風呂敷を広げましたが、今回もそんな話しと関係ある
ようなないようなコラムではあります。
それではどうぞおたのしみください。
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■今さらですが・・
今さらですが、TOTO出版より出されている本「建築をつく
ることは未来をつくることである」という本を読み始めたとこ
ろである。
まだ読み始めたばかりなので、今回はその内容というよりも、
一般論的な観点から少し書いてみたいと思う。
本屋さんに行くと、世の中には読みきれないほどの本が出回っ
ていることを毎回実感する。
自分が興味のあるジャンルだけでも制覇するのは、ほぼ不可能
に近い気がする。なので、本を選ぶときは時に慎重になるし、
時間も掛かる。しかし時には直感で、タイトルだけを見て購入
する場合もある。
上述の本は、どちらかと言うと直感での選定。そのタイトルは
前から知っていたので、中身を吟味/立ち読みすることもなく、
手に取ってレジに向かった。
副題に「世の中は建築で変えられる」と書いてあるのにも興味
をソソッタ。著者は4人の建築家による共著。触りの部分だけ
みれば、座談会のような形式で書き進められている。
素朴な疑問がフト頭をヨギッタ。「建築家の発言力とは、どの
程度のものなのか?」と。
言われていることには共感できる部分も多いし、検証はしてい
ないけれども概ね正しい意見交換がなされていると思う。
しかし、恐らく建築業界外の人はまず手に取らない類の本であ
るような気もしている。そもそも置かれているのは「建築コー
ナー」なので、専門書的なジャンル分けがされている。
もっと一般の人に向けて発信していくべき内容であると思われ
るのだが、その辺りに歯痒さを覚える。
建築をつくるということは、意識するしないに関わらず、未来
の人に、その空間を手渡す/引き継ぐことに他ならない。とい
った内容の序章である。だから、特に公共建築や小さな住宅に
関わらず、全ての建築は未来と繋がっている。とも書かれてい
る。
要約すると以上のような観点に立って、今後の論議展開/理論
展開がなされるのだと思う。そこには一般市民を巻き込んだ展
開が待っているのかもしれないが、まだ最後まで読んでいない
ので分からない。
しかし、建築家は何も発注者である特定行政や法人に向いて設
計しているのではなく、最終の利用者さらには未来の利用者や
住人に向かって設計という行為を通して、社会に貢献しようと
しているのだという観点であることは確かだと思う。
これは建築界に留めておくことではないと思う。広く一般の方
々に発信していくべき事柄であると思う。
そこで「建築家の発言力」が気になった。発言力とは、発する
言葉が持つ力であり、どこまで遠くまでその声が届くかだと思
っている。
少し昔、東京都知事選で、今は亡き建築家・黒川記章氏が立候
補した。発言力という意味では、政治家の発言力は公的意味を
持つので、少なからず大きいと思う。言っている内容の良し悪
しに関わらず。ではあるが。結局はご存知の通り落選されたの
であるが。その際黒川氏が言わんとするは、結局民意ではなか
ったということなのかも知れない。
何も政治家が正しいわけではないだろうとも思うし、政治が変
われば建築の見方が変わるわけでもないかもしれない。制度の
問題は別として。
恐らくではあるが、私論を書かせて貰えれば、世の中の人々が
抱いている建築像と建築家/建築業界が抱いている建築像には
乖離があるような気がしている。
建築業界の中ですら、設計事務所・ハウスメーカー・ハウスビ
ルダー・ゼネコン・工務店などの其々の立場で描いている建築
像には隔たりがあるような気もする。
どれが正しく、どれが間違いなんて言うのは、其々の視点や観
点によって変化する。文化的・芸術的・機能的・経済的など、
その観点/判断基準はマチマチなので当然ではある。
なので、多分建築家の発言力は小さい。
それは、いかに総合的観点からの発言であろうと、小さい気が
する。
分かりやすい言葉。分かりやすい内容。そうじゃなきゃ、声は
遠くまで届かない。伝聞するうちに内容が変化する。そんな気
がしている。
だから、発言はナンセンスかと言えば、それは全く違う。やは
り発言は必要だし、発信も必要だと思う。
建築家の最も大きな発言力は「建築」そのものである。誰もが
目にすることができ、公共建築であれば、誰もが体感すること
ができるのだから。
4人の共著と書いたが、いずれも建築業界では超有名な方々で
ある。なので、恐らく設計業界や建築教育に対する発言力は「
大」といっても過言ではない。
ほんの4人が集まるだけでも一冊の本が出来上がる。ならば、
建築家が束になって、社会に発言していけば、少しは現状より
も多くの一般の方々に「想い」が伝わりそうな気もするのだが
・・。
建築は社会と深く関わっている。街を歩けば、必ず眼にする。
その大きさの大小に関わらず、眼に入ってくる。
もう少し、一般の方々にも伝わる「言葉」を模索していく必要
があるのかな。と思いつつ、もう少し読み進めたいと思ってい
る。
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■編集後記
建築家の設計する建築には、人それぞれの思想や物の考え方が
必ずといって良いほどあります。
それは時代を映し出したものから、新しい思考/技術に基づく
ものまで様々です。
何が残るのか。誰に残すのか。そのメッセージを届ける先は
どこなのか。それも人それぞれです。
建築にできること。そこを考えながら、設計者は設計に取組ん
でいるのだと思います。
大それたことはできない。と思ってしまえば、そこまでです。
なので、できるだけ大それたことをしていければと思ってい
ます。それは、自己満足のためではなく、それを利用する人の
ために。
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