空間工房 一級建築事務所

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10.04.07 Wednesday

■春真っ盛り。ようやく寒さも次第に和らぎ、桜も咲き始めまし

 た。京都の鴨川沿いは日夜花見の人達で溢れています。

 恐らく日本全国同じような光景が広がっていることと思います。

 かくいう私も、桜は大好きです。

 何がそれほど人を惹きつけるのかは分かりませんが、ひとつの

 要因?を私なりに見出しました。

 まあ、お気づきの方も大勢居られるかとは思いますが、少し

 お付き合いください。

 それではどうぞおたのしみください。
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■桜
 
 花見の季節である。

 京都市内はどこもかしこも桜が満開を迎えている。

 先日、お弁当を持って近くの黒谷・真如堂へ家族でお花見に出
 掛けた。

 今まで、「桜はきれいだなー」と思いながら毎年見ていた。で
 も何故きれいなのか/きれいと感じるのかは、特に考えていな
 かった。まあ、深く考えるほどのことでもなく、きれいなもの
 はきれい。以上。で良いのだが。

 道中、小さなお寺や神社にも桜が花盛り。

 すぐ目の前で観れる高さに咲くものから、天高くそびえるよう
 に咲く桜まで、その咲き方は様々であった。

 で、よくよく観てみると、樹齢に関わらずどの桜の花もやや下
 を向いて咲いていることに気付いた。上を向くのではなく、下。
 その重さからか、もともとそういうものなのかは知らないが、
 それに気付いてから、どの桜の木を見ても、花は下向き加減に
 咲いていることが判明。

 まさか人がよく見れるように、わざわざ下を向いてくれている
 わけではない。たまたま人目線でいくと、見上げれば花達がこ
 ちらを向いてくれているというシチュエーションだと思う。

 そこに「美しさ」を感じる一つの要因があるように思った。

 例えば、全ての花が上を向いて咲いていたならば、そこまでキ
 レイだとは思わないかもしれない。全ての花が背を向けている
 状態。見上げれば花は上を向いている状態。考えると、何か味
 気ない。

 桜がキレイだと感じる理由は他にもいくつもあるとは思う。咲
 いている期間が短いから。とか。小さな花の集合体だから。と
 か。そもそも色がキレイ。とか。

 確かに、一年中咲いていて、やたら大きくて、色がグロテスク
 だったら嫌だ。しかも上を向いていたら、なんのこっちゃであ
 る。

 桜のキレイさは色々な小さな要因が合わさって、キレイだと感
 じるのかもしれない。

 今、東京スカイツリーが建設中である。超高層ビルも東京やそ
 の他大都市では花盛りである。

 え?まさか、桜から建築の話しに突入するの?と思われた貴方。
 なかなか鋭い。

 日本だけではなく、世界的にも超高層建築は進行中である。世
 界不況の煽りを受けているものも中にはあるが、今もどこかで
 進行中である。

 そのプロポーションというか外観は、どうも上から見た感じの
 プレゼン資料が多い。いわゆる鳥瞰図/俯瞰図というやつであ
 る。鳥目線。その方が全体像を把握しやすいし、都市的/マク
 ロ的な視点ともなるので、相対的に大きさ/高さも把握しやす
 いのは確かである。

 が、私達は飛べない。鳥ではない。

 人間である限り、自分の身長より高いものは下から見上げる格
 好になるのである。これは、別に超高層建築に限ったことでは
 なく、普通の2階建て住宅ですら見上げざるを得ないのが、現
 実である。

 図面を描く時、慣例として立面図は正面から見た絵を描く。そ
 れはどんなに建物が大きくなっても変わらない。すごく遠くか
 ら見ると、正面全体を一覧できる場合もある。しかし、全面の
 道路巾が狭ければ、それも叶わなくなる。

 桜は下を向いて咲いていた。

 下から目線。と言うか、人目線/アイレベルを意識することは、
 結構重要なのだと思った次第である。

 我関せず。と皆が真っ直ぐ正面を見て建っている建築群よりも、
 人に寄り添った感じ、人の目の高さを意識した建築群の方が、
 街は安らぐように思う。

 その辺り、もう少し考えつつ、設計にフィードバックして行き
 たいと思った、そんな春である。

 言うは易く、行なうは難し。なのだが。
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■編集後記

 小さな花の集合体。というのも人を惹きつける大きな要素かな

 とも思っております。所狭しと小さな花びら「だけ」を、その

 枝のいたるところに纏った姿は、なかなか他の樹種では見るこ

 とが出来ないかもしれません。

 雑音を全て排して、花びらだけをシンプルに纏う。

 これ以上の贅沢はないでしょう。

 自然界に学ぶべき点も多くあると思っている今日このごろです。

コラム | by muranishi | comments(0)

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