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09.12.30 Wednesday

ある建築家の言葉(3)

■大学の建築学科の学生は、結構忙しい。と思います。

いわゆる「大学生=自由だ~っ!」という概念はあまりない。

と思います。たぶんですが。

学校の課題以外に、アルバイトがあって忙しいのです。

なーんだ。アルバイトかぁ。と思われるかもしれませんが。

独立系を目指す学生は、だいたい設計事務所やゼネコンの

設計部などでバイトをしています。そう、バイトも勉強です。

というか、バイトの方が勉強になるときもあったりします。

そんなこんなで、今回はバイト絡みのお話しを。ひとつ。

それではどうぞおたのしみください。
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■ある建築家の言葉(3)

今回は、数回前の「ある建築家の言葉」シリーズの続き。

といっても、今回は本媒体から感じたことではなく、直に聞い
た言葉から、お伝えしようと思う。

日本で最も有名な建築家として、皆さんは誰を思い浮かべるだ
ろう?今回は多分その上位3位内には入ると思われる人物。
安藤忠雄氏の言葉から。

前置きを少し。

大学の頃、長期休暇を利用して安藤氏の事務所でバイトをした
ことがある。最初は電話で「アルバイトしたいんですけど」と
応募して断られること数回。

「現在、募集してませんから」という事務員さんの連れないお
返事。(募集しているから応募したわけでも何でもなく、純粋
に勉強させて欲しいだけだったのだが・・)

電話ではラチが開かないので、直接アポイントも取らずに事務
所のドアを叩いてみた。

なんかTVドラマとかでよく見かける光景だな。と他人ごとの
ように自分を俯瞰して見ていた記憶がある。「雇ってくれるま
で、ここを動きませんから!」などと言い出すんじゃないだろ
うな?自分。と思いながら。そして、そんなこと言われたら鬱
陶しいだろうな。相手の人は。忙しいのに。とも思いながら。
で、ドアを叩いてみた。

いや、実はそんなにすぐドアを叩く勇気は出なかった。雑誌で
住所を調べて近くまで行き、事務所に「安藤忠雄建築研究所」
という小さな看板を見つけてしまった自分。そう、そんな簡単
に見つからないだろうし、見つからなかったら諦めよう。と考
えていたのも事実。だってアポイントなしだもの。あり得ませ
んから。逆の立場だったら、絶対怪しむ。

だから見つけて「しまった」という気分。今思い出しただけで
もドキドキする。

さぁ、どうしよう。目の前にいとも簡単にその存在を見つけた。
住所は正確だったのである。事務所前を行ったり来たり。たま
に中からスタッフの方が急に出てこられて、ササっと身を隠し
たり。おいおい、急に出てくるなよ。と無茶な感想を抱きなが
ら。

相当怪しい人物だったと思う。不審者である。

そうして何分が経ったか、いよいよ決断した。そしてドアを叩
く。

「あの~。何回か電話で、アルバイトの応募をしたものですが」
と事務員さんにお伝えする。勿論安藤氏ご本人は出てこない。
というか、恐らくその時は外出中だったと思う。というか、殆
ど外出中の忙しい身であった。

「駄目なものは駄目!」と追い返されるものとばかり思ってい
たが、「少々お待ち下さい」と言われ、奥へ行かれた。年長の
スタッフの方に事情を説明に行かれたのだと思う。そして結果
は「じゃあ、来てもらってもいいですよ」との温かいお返事。
正直、腰がクダケタ。

そんなこんなで、アルバイトとして安藤事務所にもぐりこんだ。

前置きが長くてスミマセン・・。

そう、こんな話しをするつもりではなく、安藤氏の言葉。

アルバイト中に、とある現場に連れて行ってもらった時の話し。
安藤氏ご本人が現場監理を兼ねてスタッフ全員を連れての場で
の言葉だった。まだ仕上げ段階には至っていない状況だった。

安藤氏:「お施主さんは満足されてるのか?」
所 員:「ハイ。されてます。」
安藤氏:「お施主さんが満足していることに満足するな。
仕上がるまで、もっといい空間になるように、
(空間を)追求しろ。」

これだけのやりとり。いや実際には前後にもっと色々あった。
が、印象に残っているのは、このやりとり。

現場を見る(監理する)だけでも大変そうなのに、お施主さん
の満足を得ることを最低ラインとし、さらにその上を目指せと
いうアドバイス。教え。言葉。

常に現状に満足せず、さらなる上の質を求める真摯さ。態度。

非常に勉強になりました。

いつか自分も独立した時に、自分に対して、スタッフに対して、
そういう言葉を掛けられるか?と考えた記憶がある。その時は
まったくもって想像がつかなかったと思う。

独立して来年で10年目。常に安藤氏の言葉が去来する。もっ
と大切なことを言われていたとも思う。でも上の言葉が強く印
象に残っている。

お施主様の満足以上の満足を、果たして自分は得られているだ
ろうか?

お施主様の満足以上の満足を、果たしてお施主様は得られてい
るだろうか?

自分に厳しく。他人にも厳しい感のある、安藤氏。でも全ては
より良い空間のためなのだと、今は分かる。

そして、もっともっと頑張らねば。と思う、年末。である。
_____________________________

■編集後記

思えば、他にもアトリエ系のバイトを2つ。ゼネコン設計部系

のバイトを2つほどしておりました。

その中で得られたものは、多分大きかった気がします。

昨今の不況下では、バイトすらもままならないかもしれません。

そう考えると、私達の学生時代は幸せでした。

今は「インターンシップ」という名の無償バイトが盛んです。

無償はどうかとも思いつつ、私達も夏や春の長期休暇中には

インターンシップを受入れております。

それは、自分達が経験できて良かったと思っているからに他

なりません。

決して「こき使ってやろう」などとは思っております。いや

思っておりません。

逆に学生から刺激を受けることもたまにありますので。。

そんなこんなで、今年も残り一日。

今年のメルマガはこれで終了です。

ここまでお読みいただきました皆様。ありがとうございます。

来年が皆様にとりまして、良い年でありますように!

コラム | by muranishi | comments(4)

コメント / トラックバック4件

  1. 匿名 より:

    ありがとうございます。

  2. 匿名 より:

    私は福岡の高校2年生です。将来建築家になりたいと強く思っています。とても安藤忠雄さんの建築物に惹かれて、私も安藤忠雄建築研究所を訪ねます。そこで質問なのですが、アルバイトから正社員として働いて、安藤さんの元で働くことは、可能なのでしょうか?

  3. muranishi より:

    こんにちは。コメントありがとうございます。
    ご質問の内容は、当方ではお答えしかねますので、直接お尋ね頂いた方が良いかと思います。
    私から言えることは、夢は叶うまで持ち続けてください。そしてそれに向かって行動してください。ということです。私もまだ、夢の途中です。

  4. キクチ より:

    来年度から建築学科に進学する者です。まだ将来の自分の像がはっきりとしていませんが、意匠系に携わりたいと考えています。独立も考えています。大学生の間に経験しておいてよかった、もしくは経験しておけばよかった、とお思いになることの例を教えていただけないでしょうか。初対面で図々しいとは思いますが、教えていただければありがたいです。

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