■「誰がために鐘はなる」というヘミングウェイの小説がありま
す。映画にもなっているので、耳にした方も多いはずです。
結論的には「鐘」は結局自分のためにも鳴っている。という物
語です。(滅茶苦茶はしょってますが・・)
そして概要は「人は一人では生きていない。生きていけない」
というものです。(こんなに端折っていいのか?)
では、設計は誰のために?という観点から今回のコラムです。
思うがままに書いてます。
それでは、どうぞおたのしみください。
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■誰がために
設計という行為は、お施主様のために進められる。これは、疑
いようのない事実である。私達は自分の「作品」を創るという
ためには設計していない。お施主様のために設計したものが、
結果的に「作品」になれば、それに越したことはない。
が、「作品」ありきで設計することだけは避けたいと思いなが
ら、日々設計・監理活動に勤しんでいるつもりである。
では、お施主様は誰のために家/建物/建築を建てるのだろう?
例えば、マンションなどはデベロッパーがお施主様となる。デ
ベロッパーはエンドユーザーではなく、事業主である。だから、
土地を仕入れて、その土地代は勿論のこと建設コストをも回収
できる価格でエンドユーザーに売る。そして利益を生み出しつ
つ、住戸確保という意味で社会貢献する。
エンドユーザーが何を求めているかを市場調査し、絶対に売れ
残りが生じない計画を立てる。エンドユーザーの年齢層・家族
層・収入額を想定して計画を立てる。仕入れた土地の法的条件
をクリアするギリギリまで、容積率を確保した計画を立てる。
でも、本当のエンドユーザーの顔は、売れるまで分からないし、
そのエンドユーザーが本当に望んでいるものになっているかど
うかは一生分からない。
例えば、公共施設。最近でこそ地元住民の意見を取り入れ、住
民とディスカッションしながら、要望をまとめて空間に落とし
込んでいくという手法が一部で取られているが、まだまだメジ
ャーではない。
お施主様は住民ではなく、主に役所の方々である。役所の方々
が想定する使用内容・住民要望を調査し、計画を進める。設計
者はそれに従って、設計を進める。出来上がってから、住民の
声を聞く。出来上がってからしか、住民の声は届かない。
その声も利用者のごく一部のものであると思う。果たして、そ
れでは誰のための建物なのか?と無責任にも思ってしまう。せ
めて、利用対象者の声を集めるやり方の方がマシではないかと
思ってしまう。
でも、それはそれで不特定多数の意見を統合するという、想像
しただけで「まとまらない」建物になりそうな気もする。
さて、住宅。その人・その家族が住まうことが明確であるから、
意見や要望を聞く相手はお施主様、その人である。設計者はお
施主様の意見・要望を基に空間を図面化していく。シンプルで
ある。
では、お施主様は誰の意見を取り入れ、誰のために建てるのだ
ろう?とフト考えた。
お施主様ご自身の要望は勿論、家族(伴侶や子供)や両親の要
望も恐らく取り入れられる。そして、当たり前かもしれないが、
来客のことまで考える。そしてご近所との不要な諍いも避ける
ため、近隣のことも考える。住宅を一つ建てるだけでも、登場
人物(無言の要望も含めて)は多岐に渡る。
よく考えれば大変である。逆に言えば、それだけ「建物/建築」
が社会的影響の大きいものだと言うことであることを、肝に銘
じて設計に取組まなければならないということかもしれない。
設計はお施主様のためにする、ということは冒頭に書いたとお
りである。それを大前提として、私個人的にはこのように考え、
設計という仕事に取組んでいる。
20代は、育ててくれた親のために。
30代は、人生を共に歩んでくれる妻のために。
40代は、自分を支えてくれる家族・子供のために。
50代は、自分を生かしてくれる社会のために。
60代は、設計を続けてきた自分のために。
70代は、未来のために。
誰かのために。と、なれることは幸せである。と思いつつ、目
の前のお施主様のために、まずは取組んでいるところである。
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■編集後記
15にして学志し、30にして立つ。40にして惑わず。
50にして天命を知り、60にして耳従う。70にして
心の欲するところに従い、矩をこえず。
論語の一節です。
なかなか孔子ちゃんの言うようには、いかないのが人生ですが
何か目標とするところを持つことは大事だと思いつつ、それを
実行に移すのは大変だな~とも思っております。
家創りも然り。
実行に移すのは大変ですが、目標なしに闇雲に動くのは危険な
一大事業です。
でも、明確な目標があれば、状況は一変します。
まずは、夢という名の目標を持たれることをお勧めします。
私達は、その夢を全力でサポートしますから。
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